天然の文才

朝7時に起きて、旬公のスチール製本棚をマンションの入口まで出す。粗大物回収に出すためなり。とにかく巨大で重いので、ドアの外に出すまでにかなりの時間が掛かってしまった。重いものを持ち上げたので、あとで腰が痛くなる。3時間ほどしか眠ってないので、もう一度布団を敷いて眠り、10時半に起きる。


朝飯を食べながら、毎日新聞朝刊の出版広告を見ていて噴き出す。東洋出版が出した『運命の狭間は台湾で』(山口鉄夫著)の広告文がスゴイ。

癒しの台湾で、僕は運命の小姐に出会ったと思った。しかし――台北車站から古亭へ。昆明、隆山寺、基隆、淡水を巡り、金山でテレサ・テンの墓参り、圓山、台電大楼を抜けて茶藝館で一休み、鼎泰豊では名店の小龍包を楽しめず。かわりに西門町で好吃阿宗麺線を存分堪能。そして僕たちは……。台湾純愛紀行。1600円


この本はたぶん小説だと思うが、たくさん字数を費やしているワリにはどんな内容なのか、さっぱり判らない。「テレサ・テンの墓参り」がどうして出てくるのか不明。「出会ったと思った」「小龍包を楽しめず」のようなクドイ文章も、広告やコピーは短く伝わりやすく書けと教え込まれている編集者にはまず書けないだろう。天然の文才だなあ、これは。興味を覚えたので版元のサイトを見ると、表紙の画像も載っていた。帯には大きく「チョット怖いデス」と……。なんだか、本屋で探してみたくなってきた。


12時に出て、旬公と京浜東北線で与野へ。駅までS先生が迎えに来てくださる。久しぶりの書斎イラストルポの取材だ。膨大な数の本棚と、きちんと整理されていることに驚く。6時前までかかって、取材と計測を終了。そのあと、Sさんご夫妻に近くの居酒屋に連れていっていただき、いろいろ食べながら、楽しく話す。奥様は元グラフィック・デザイナーで、マッチのデザインをされていたこともあるそうだ。ご馳走になってしまった。駅で別れて、ウチに帰ってくると10時前だった。早めに布団に入り、小川勝己『撓田村事件』(新潮文庫)の続きを読む。前半の、田舎の中学生の描写に、とても実感がある。横溝正史が探偵などの外部からの視線で、田舎を描写するのと違い、この小説の主人公は田舎の生活者として血なまぐさい殺人事件に立ち会うことになる。それがとても面白い。