先輩方のハナシを聞く

9時起き。仕事場に行き、資料まとめなど。こないだ、中野朗さんと「西村賢太の小説はオモシロイねえ」と話していたら、中野さんが今度単行本が出るコトを教えてくれる。取次の速報を見ていたら、たしかに2月1日に刊行されるようだ。『どうで死ぬ身の一踊り』(講談社)。コレは楽しみ。


午後、千代田区図書館へ。最近、ここで検索して、戦前の単行本を借り出している。いろいろ調べものをしていたら、夕方になった。〈ぶらじる〉に行くと、禁煙席に、海野弘さん、堀切直人さん、右文書院の青柳さん、アクセスの畠中さんが勢ぞろいしていた。ほかに客がいないと思ったら、この部屋を貸しきりにしてるとのこと。たしかに、こんなに賑やかな面々がいたら、ほかの客はたまらないだろう。海野さんと打ち合わせをしたあと、雑談。いつも独演会になる海野さんの喋りの要所要所に、堀切さんがツッコミを入れる。いやあ、いいモノを見せてもらいました。


お茶の水駅前の〈ディスクユニオン〉で、アーリー・タイムス・ストリングス・バンド[ライブ・アット・神戸1973]を買い、丸の内線で池袋へ。まだ時間があるので、モスバーガーに入り、ちょっとゲラを見る。7時に〈丸井〉の前で、オフノートの神谷一義さんと、渡辺勝さん、『ぐるり』の五十嵐さんと待ち合わせ。神谷さん、渡辺さんの行きつけだという沖縄料理屋〈赤い鼻〉へ。料理が安くてうまく(麩を使った「フーチャンプルー」がウマかった)、泡盛の種類も多い。それなのに、我々以外に客はいなかった。神谷さんが考えている新しい試みについて、ハナシを聞く。おもしろい。おもしろいけど、それにぼくがどう関わっていくかも含めて、タイヘンそうだ。さて、どうなるか。その話題にはさまれて、渡辺さんと神谷さんが交わす音楽についての会話を聴けてヨカッタ。それにしても、このところ、出版や音楽について、年上のヒトたちから直話を聴く機会が増えてきたのは、本当にウレシイ。ささやかながらこの10年間、書いたり調べたりしてきたことへのご褒美のような気がするからだ。


札幌(そういえば、来月には札幌の〈キコキコ商店〉と小樽文学館で渡辺さんのライブがある)から帰って以来、ちょっと疲れ気味なので、まだ飲み足りないお二人と別れ、五十嵐さんと辞去する。帰ってから、[ライブ・アット・神戸1973]のライナーを見る。渡辺さんが「1万2000字も書いちゃった」と云われたので。中村よおさんの文章に続き、たしかに「幻想のEarly Times Strings Band」という裏表に続く文章が載っていた。渡辺さんは、再結成後のアーリーの演奏が、フラフラ・ダラダラしてるコトを「タンポポの綿毛のようである。捕虫網で捕らえてみても、いつの間にかスルリと抜け落ちている」と書く。そして、とらえどころがなく、毎回新鮮な感覚をメンバーは楽しんでいるのだ。「アーリーのステージ上には、そんな真新しい、綺麗な、なるべく破りたくないような包装紙を慎重に剥いでいくときの匂いが、いつも流れている気がする」。そのあとも、だらだらと続く文章の中に、キラリと光るフレーズを見つけながら、22年前のライブを聴いていた。