『さっぽろ喫茶店グラフィティー』で旅情を
9時半起き。昨夜遅かったので寝坊だ。メールチェックだけして、出かける。谷根千工房に行き、ある企画の打ち合わせ。ぜひ実現させたいもの。昨夜の会議に参加したサトコさんは、朝4時まで付き合ってしまって体調が悪く、白い顔をしていた。団子坂のイタリア料理屋〈ターボラ〉に入り、パスタ(ツナとクリームソース)とコーヒー。けっこうウマイ。
昨年の「一箱古本市」で場所を提供する大家さんになってくれた〈ルシェルシュ〉が、来月閉店してしまうので、店主のクメさんに挨拶。店を借りたとき、内装も直し、壁に棚などをつくり付けているので、あとに入る店が使えるのだけど、まだ決まってないそうだ。1月末までに決まれば、そのまま引き渡せるというコトだが。興味があれば紹介しますので、南陀楼までメールください。ちなみに、入居には家賃の10カ月分の保証金が必要だとのこと。
仕事場に行き、あれこれ。明後日、取材(インタビュー)で札幌に行くので、その準備をしなければならない。7時半、〈書誌アクセス〉で電話で取り置いてもらった、和田由美『さっぽろ喫茶店グラフィティー』(亜璃西社)を買う。札幌でお世話になる〈さっぽろ萌黄書店〉の坂口さんに、つい最近出たと教えてもらった。1970〜80年代にかけて、札幌にあった喫茶店を紹介。スデになくなった店も健在な店も。口絵には各店のマッチの図版も。あとがきにあるように、札幌の喫茶店に関しては、和田義雄『札幌喫茶界昭和史』(財界さっぽろ、1973)という名著がある(沼田元氣『一杯の珈琲を飲むためだけに行きたくなる 札幌・小樽カフェ喫茶店案内』ギャップ出版、に再録)のだが、本書はそれを継ぐもの。パラパラ眺めただけだが、ガイドとしても読み物としても優れた本だと思う。デザインもいい。それもそのハズ、この著者は、かつて札幌初のタウン誌『月刊ステージガイド札幌』を創刊し、『札幌青春街図』(亜璃西社)を編集・発行したヒトなのだ。なんか、札幌に行くのが愉しみになってきたなあ。
〈書泉グランデ〉で、『野性時代』2月号を買う。今朝、朝刊を読むヒマがなく、ネットのニュースで知ったのだが、今回の芥川賞は絲山秋子、直木賞は東野圭吾に決まったそうだ。いつもはあまり気にしないのだが、今回の芥川賞は候補が公表されたときから気になっていた。候補に西村賢太「どうで死ぬ身の一踊り」(『群像』九月号)が挙がっていたからだ。この作品については、以前に感想を書いた(http://d.hatena.ne.jp/kawasusu/20050901)。新しいタイプの私小説だと思ったので、受賞してほしかったのだが。文藝春秋のサイトで西村氏のプロフィールを見ていたら、『野性時代』に小説を書いているので、買った次第。この作品「潰走」は、16歳で一人暮らししたときのアパートの大家との抗争を描いた短いもので、帰りの電車で読んだ。大家の老夫婦が自己中心的なエグい存在として描かれるが、客観的に見ると、家賃を滞納して根拠なく「まだ大丈夫」と構えている主人公のほうがヘンである。それがかえって、ユーモアを生んでいる。芥川賞はどうでもイイけど、このヒトの小説集が早く出ないかなあ。
西日暮里に帰り、〈サミット〉で買い物。火事があったらしく、不忍通りに消防車が集結していた。豚肉と厚揚げ炒めをつくる。ショーガと出汁に肉をひたしてから焼いてみると、けっこうウマイ。そのあと、昨日の話し合いにもとづき、「一箱古本市」関係の文書に手を入れる。去年もそうだったが、これからしばらくはこの手の用事が増えることになる。