新阿佐ヶ谷会のボケとツッコミ

9時半起き。どうも眠くて困る。午前中は『進学レーダー』の書評を書く。合間に、紀伊國屋書店の『ifeel』を眺める。山本善行さんの「すでに古本の匂いのする文庫」、おもしろし。『バーナード・リーチ日本絵日記』(講談社学術文庫)が読みたくなった。ほかに、11月にやった「SHINJUKU FEST 2005」のレポートが。たしかにいいイベントだったが、「一部の映画上映から多くの観客が集まり」はウソ。少なくとも三部までは、かなり空席が目立っていた。ところで、もう知られているコトだが、編集後記に、『ifeel』は次号で休刊とあった。100ページ以下の小冊子なのに、特集と単発記事、連載をあんばいよく配置した編集ぶりが気持ちいい雑誌だった。ぼくも古本特集で一度エッセイを書き、『ナンダロウアヤシゲな日々』が出たときに取材され、「タイムスリップグリコ」がらみでコラムを書くというように関わらせてもらった(ついでに云うと、新宿特集では旬公が1960年代の新宿のイラストマップを描いている)。編集のOさんの人柄もあり、たのしく仕事ができた。記憶に残る雑誌となるだろう。


昼飯は旬公がつくった卵かけうどん。ちょっとダシが濃かった。《噂の東京マガジン》を見て、出かける。荻窪から7、8分ほど歩き、杉並区中央図書館の手前にある〈かん芸館〉(かんは「行」の中央に「干」)というホール&ギャラリーへ。西荻にいたころ、自転車でしょっちゅう前を通っていたはずなのに、こんな施設あるとは知らなかった(と思ったら、今年で6年目だそうだ)。


今日はココで「新阿佐ヶ谷会」の集まりがある。青柳瑞穂のお孫さんのピアニスト・青柳いづみこさん、川本三郎さんをはじめとして、中央文士によるかつての阿佐ヶ谷会に関わったり、シンパシーをもつ人たちが集まっている。今年、幻戯書房(今年からG社をやめて正式名称で書きます)で、阿佐ヶ谷会に関する本を出すことになったので、ぼくも呼んでもらったのだ。まず、青柳さんによるドビュッシーの「前奏曲集」の演奏。作品の背景を語りながらの演奏だったので、感興も高まった気がする。そのあと立食パーティー上林暁の妹さんの徳広睦子さん、木山捷平の息子さんの木山萬里さんにご挨拶。二人ともとてもお元気だった。出席者は数人を除いては知らない方ばかりだったので、最初のうちは緊張したが、そのうち話せるようになった。「モクローくん通信」の読者で、メールをやり取りしてた白水社の小山英俊さんにも初めてお会いする。


7時ごろ、場所を阿佐ヶ谷の青柳邸に移して、いよいよ宴会の開始。20人近くが一部屋に集まって、がやがや話しながら飲む。名古屋から戻ってきた岡崎武志さんも参加。ぼくの隣には、もと新潮社のカメラマンの田村邦男さんが。豪快なおじさんだった。川本さんがいろんな失敗談を披露すると、ヨコにいたフランス文学者の野崎歓さんがすかさずツッコミを入れる。このタイミングが絶妙で、どんな小さいボケも丁寧に拾い上げるその反射神経は素晴らしい。川本さんだけでなく、ほかの人のボケも見逃さない。遠くにいても、ちゃんと聞こえるように突っ込む。このヒトがあの『谷崎潤一郎と異国の言語』〈人文書院〉の著者なのかというのが、今日いちばんのオドロキだった。


まだまだ宴は続くようだったが、岡崎さんに誘われて辞去する。日本酒の飲みすぎでギブアップ寸前だったのでありがたい。〈よるのひるね〉にまだ行ったことがないというので覗いてみるが、残念ながら貸し切り。ホームで岡崎さんと別れて、新宿経由で帰ってくる。知らない人が多い会ではいつも緊張してしまうのだが、今日の会はフランクな感じで居心地がよかった。