奈良では、大量買いと大騒ぎの祝宴

kawasusu2006-01-09

朝9時起き。今日もいい天気。扉野さんとバスに乗り、三条へ出る。〈六曜社〉でコーヒーとトースト(マーマレード付き)。地下はまだ営業していない。オクノ修さんのコーヒーが飲めるのは、いつの日か。よくネタが尽きないものだと自分でも呆れるが、ココでもしばらく話し、10時半ごろ、三条京阪の〈ブックオフ〉へ。新書2冊で100円というフェアをやってたので、中町信のミステリと浜村淳『星影の飛鳥』(羊書房)を買う。後者は浜村淳が、例の口調で飛鳥時代の出来事を解説してくれる。冒頭からして、「中大兄皇子は、いま花吹雪の飛鳥寺の庭に立っておりました。ただいま十九才」という名調子である。ほかに、乾信一郎『おかしなネコの物語』(ハヤカワ文庫)、十返千鶴子『夫恋記』(新潮社)を各105円で。


扉野さんと別れ、京阪で丹波橋まで行き、近鉄に乗り換えて奈良駅へ。今夜のバスがJR奈良駅発なので、とにかく荷物をそこまで運んでしまう。コインロッカーに放り込んで、移動開始。いつも奈良の古本屋情報を教えてくれる〈高畑文庫〉の関さんから、もちいどの通りに新しい古本屋ができたと聞いたので、そこに行ってみる。〈智林堂書店〉という店で、12月にオープンしたらしい。開店当初にはだいぶいい本があったようだが、いまはかなり抜かれてちょっと棚が寂しい。それでも文庫を中心にイイ本が安い。以下、買った本です。渋川驍『書庫のキャレル 文学者と図書館』(制作同人社)800円、谷田昌平『回想 戦後の文学』(筑摩書房)400円、枝川公一『上海読本』(西北社)600円、北川冬彦『現代映画論』(三笠書房)300円、依田義賢『スクリーンに夢を託して』(なにわ塾叢書)300円、ユーシェル・モリナーロ『盗作者』(角川文庫)200円、フィリップ・ロス『乳房になった男』(集英社文庫)100円、ジョージ・ミケシュ『スパイになりたかったスパイ』(講談社文庫)150円、カミ『エッフェル塔の潜水夫』(講談社文庫)300円、吉行淳之介(絵・米倉斉加年)『男と女をめぐる断章』(集英社文庫)100円、山本容朗編『今昔温泉物語』(福武文庫)300円、長谷川四郎『印度洋の常陸丸』(中公文庫)300円、野尻抱影『星三百六十五夜』上・下(中公文庫)500円、橘外男『ベイラの獅子像』(教養文庫)300円。いずれも思わず手が出てしまう値段だ。とくに、1970年代の海外文学の文庫が100円〜300円なので、つい買ってしまった。


そのあと、この通りの古本屋を見て、カレー屋でチキンカレーを食べる。そして、ならまちの〈酒仙堂〉へ。いつもの通り、ご主人が飲みたそうな顔をして出てきて、すぐに酒になった。奈良の地酒を何杯か飲ませてもらう。今日は2割引だというので、木山捷平長春五馬路』(旺文社文庫)500円、ほかを買う。ちょっといい気分になって、もちいどの商店街に戻る。奈良に行くと必ず寄るレコード屋〈ジャンゴ〉(http://blog.livedoor.jp/recordshopdjango/)が閉まるらしいと聞き、行ってみる。たしかに「ネットでのダウンロード配信などに押されてやっていけなくなった」旨の貼り紙がしてある。好きな店だったのに惜しい。ディスプレイしてあるCDの中から、《ダーティー・ハリー》のサントラ盤を選び、レジに持っていくと、「ラロ・シフリンだったら、こんなのもありますよ」と《ブリット》のサントラを見せられる。こういう風に店主が適度に親切で、マニアックなのがよかった。最後だからと両方買ってしまった。この店はしばらく借りておき、夏ごろまでには再開したいというハナシだった。


近鉄奈良駅の反対側に出て、4時ちょっと前に〈古書喫茶ちちろ〉に到着。川崎彰彦さんの『ぼくの早稲田時代』(右文書院)の刊行を祝う会。主宰は同人誌『黄色い潜水艦』だが、同時期に同人の三輪正道さんが『酒中記』(編集工房ノア)を出し、林田佐久良さんも自分史の本を出されたので、共同でお祝いの会となった。すでに30人以上が集まっていた。宇多さんとうらたじゅんさんは準備に忙しい。川崎さんと当銘さんに挨拶する。林哲夫さん、右文書院の三武社長、青柳さんもやってくる。ぼくの隣には、『虚無思想研究』の久保田一さんが。お会いするのははじめて。本業は金工さんで、最初に修行したのが谷中だったと話してくれる。その向かいに座っている、じつに陽気な女性は誰かと思えば、同誌の編集委員の山本薫さんだった。久保田さんの奥さんだ。青柳さんは山本さんに気に入られたらしく、「はやくそれアケて、こっち飲みなさいよ。美味しいんだから」などと世話を焼かれている。この女殺し(写真はその証拠)。山本さんは「南陀楼綾繁という名前の字面を見たときに感動した。あの文字の並びは素晴らしい」とたいそうホメてくださるが、「江戸時代の戯作者の名前を借りた」と云ったらガッカリしていた。「でも、この名前を選んだセンスを褒めてください」と云っておく。


川崎さんの本をずっと出してきた、編集工房ノアの涸沢純平さん(今回の本の「しおり」にも寄稿してくれている)はゴキゲンで、すっかり陽気になっていた。ノア=シブイ版元と刷り込まれているぼくなんかにしてみると、意外な面を見たような気がする。だって、編集工房ノアの社主が「ヒロシです……」と芸人の真似をするなんて、誰が想像するだろう! 涸沢さんとゆっくりハナシをできたのは、とても嬉しかった。『海鳴り』の次号に、『ぼくの早稲田時代』について書くよう云われたけど、まさか酔ったイキオイではなかったと思いたい。


6時に散会の予定が、すっかり盛り上がり、川崎さんは歌うは、うらたさんたちは「おてもやん」を踊るはの大騒ぎ。気取らずに楽しい会だった。林さんや青柳さんたちが辞去したあとも、ぼくはしばらく付き合い、7時半ごろ失礼する。まだ少し時間があるので、JRのほうに行き、蕎麦屋に入る。そして9時10分発の夜行バスに乗って、東京に向かうのだった。