元旦は読書三昧
元旦は朝寝して9時起き。雑煮とお屠蘇のあと、弟一家は出雲大社に出かけていったが、ぼくと旬公はパスして、相変わらず2階で本を読む。『男の隠れ家』2月号の特集は「愉悦の読書空間」。好きな本のアンケートを中心とした特集だが、この手のものとしては、たっぷりページ数があって、なかなか読ませる。城山三郎のインタビューで、学生時代、図書館が臨時休館だったのがきっかけで、のちの奥さんに出会ったという微笑ましいハナシが。また、書庫の整理をしていて見つけた梶山季之責任編集の雑誌『噂』をパラパラ見る。1973年3月号には「石川達三『流れゆく日々』で槍玉に上がった人々」という記事が。『新潮』に連載されていた日記で、石川が山本周五郎、川端康成、野坂昭如らをこきおろしたことについて、本人や関係者に話を聞いたもの。おもしろい。
大村彦次郎『時代小説盛衰史』(筑摩書房)を読了。520ページを一気に読んだ。作家の自伝やエッセイ、評伝などの資料を大村流にミックスして、通史としたもの。大日本雄弁会(のちの講談社)の野間清治のもとに、二人の青年が講談雑誌の企画を持ち込んだことからハナシがはじまる。そこから、時代小説を載せる雑誌の伸張、新しい作家の誕生、純文学と大衆文芸の相克などが語られていく。作家たちが全員といってもいいほど、食えるまでは新聞社に籍を置きながら小説を書いたのが興味深い。本書は昭和30年代の吉川英治、野村胡堂、長谷川伸らの死で終わるのだが、そこに冒頭に出てきた二人の青年の一人である、望月茂(紫峰)の死が出てくる。その記述を読んで、望月が、筑波四郎の筆名で時代読み物を手がけ、田中光顕への聞き書き『維新風雲回顧録』や『生野義挙と其同志』を書いたことを知る。前者は河出文庫に入ったし、後者は、山口のマツノ書店が復刻したので、どちらも見たコトがある。ちなみに、グーグルで検索してみると、三康図書館の蔵書目録で、筑波四郎『佐藤三吉翁(汁粉王)』(佐藤三吉翁表彰会、昭7)が見つかった。これも同じ人物なのだろうか?
天気がイイので、書庫を整理したあとで、近所の神社に初詣。弟に頼んで買ってきてもらった、『エル・ジャポン』2月号の「2005年を彩った名作・傑作」というベスト特集で、岡崎武志さんがぼくの『チェコのマッチラベル』を取り上げてくれている。ほかは近代ナリコ『インテリア・オブ・ミー』、高橋徹『月の輪書林それから』、橋爪節也『モダン道頓堀探検』、浅生ハルミン『私は猫ストーカー』で、「著者の趣味と生き方が結びついたユニークな5冊」。うれしい。そのあと、豊田有恒『日本SFアニメ創世記』(TBSブリタニカ)を読む。草創期のアニメ界にシナリオライターとして参加した体験を描いたものだが、うーん、文章が粗いなあ。
晩飯のあと、海野弘『日本遊歩記』(沖積舎)を読了。日本のさまざまな土地を旅して書いた文章を集めたもので、編集は堀切直人さん。あえて一枚の絵も使わずに、文章だけで構成している。海野さんがある場所、街に関連して取り出してくる本の引用のしかたは、じつにうまい。ささいな、見過ごされがちなエピソードを引くことで、その土地の性格が直にイメージできる。とくに、名古屋のモダニズムについての2つのエッセイがおもしろかった。
という具合に、本に没頭するうちに一日が終わった。残っている仕事のコトさえ気にしなければ、じつに幸福な元旦だった。