新築の実家にゲラ届く一年の暮れ

8時起き。荷物をまとめたり、住民税や奨学金の振込みに行ったりとバタバタして、部屋の掃除がなにヒトツできぬまま出かける。浜松町駅でチェックインし、モノレールで羽田空港へ。荷物検査は長蛇の列。搭乗口にたどりつくも、飛行機への連絡バスが遅れる。疲れたし腹減ったしで、二人とも食欲大魔神になって、機内に入るなりさっき買った弁当を食べる。離陸するなり眠り込み、着陸直前に目を覚ます。2時半に出雲空港に到着。快晴。


出雲市駅行きのバスに乗る。相変わらず殺風景なロードサイドを見ていた旬公が、「春に行ったテキサス州の田舎町そっくり」とのたまう。駅まで父親に迎えに来てもらい、実家へ。3月に帰ったときはまだ荷物を運び入れてなかったので、実質的には初めて。すべてが新しくなり、電化されている。暮らしやすくなっているが、一方で、昔の家の五右衛門風呂(釜で下から沸かす)が懐かしくもある。この家がホントに自分の実家に思えるまで、まだ何年かかかるだろう。


2階に荷物を置いて休憩。旬公がリクエストした通り、掘りごたつが設置されており、そこに入って本を読むのはなかなかイイ。しかし問題は寝転んだときで、ぼくの短い足が掘りごたつの下に着かず、宙に浮いてしまうのだ。適正な収まり場所を求めて、しばらくこたつの中をうろうろ。あと100ページのトコロまで来ていた、堀切直人『浅草 戦後篇』(右文書院)を読了。新しい知見を多く得られ、思うこともたくさんある本だが、いずれ感想を書くことにしよう。なにしろ、年末年始に読んでおこうと持ち帰った本が7、8冊あり、いずれも厚いのだ。一方では、まだ残っている雑誌原稿や書きおろしのまとめ、実家まで送られてきたゲラ数種のチェックと仕事が目白押しで、さらに書庫の整理まで予定に入っているのだ。あと、年賀状も。ゆっくりしてもいられない。


晩飯は、サバの煮付け、竹の子とコンニャクの煮物などで、妙に旨く感じられる。そのあと、旬公が買いたい雑誌があるからと、母親の車で出雲の北側にある〈今井書店〉出雲店まで。明日ココで打ち合わせがあるので、今日はざっと見ただけだが、これだけのレベルの本屋が地元にできたコトに感慨を感じた。自分の高校生の頃にこんな店があったら、東京に行きたいという気が起きなかったかもしれない。広島で出ている『がんぼ』(南々社)とう雑誌で、「名編集者・花森安治が愛した日本の原風景 松江を歩く」という特集を組んでいるので買う。花森はハナシのマクラに使われているっぽいが、旧制松江高校時代の写真(ヨコに丸い顔だ!)が載っているなど、それなりに貴重。


その近くにある〈ブックオフ〉出雲店にも寄ってもらう。9号線沿いにある渡橋店にはよく行くが、ココは初めて。単行本の棚で、いきなり『尾崎一雄対話集』(永田書房)800円が目につく。そして、森銑三の本が5冊もある。これ全部100円コーナーにあったら、瞬時に買うのにと思いつつ、『瓢箪から駒 近世人物百話』(彌生書房)850円を買う。ウチに帰り、谷沢永一『紙つぶて 自作自注最終版』(文藝春秋)を読みはじめる。途中、風呂に入ったりして、1時すぎまで読みふける。久しぶりに読書に没頭できた一日だった。