ご対面の際のお願い

朝9時起き。昨日の日記が消えてしまったので、思い出しながらメモ的に書いておく。そのあと『映画秘宝』を読む。ついに来年1月に公開が決まった《ホテル・ルワンダ》についての6ページにわたる記事がすごくいい。不肖・宮嶋のインタビューも、現時の状況を見たものならではの、感傷に流れないクールな意見で参考になる。また、日本公開を呼びかけた運動の経緯も、ネットを使って動きを起こす際のメリットとデメリットがよく判る。男子中学生ノリに見せかけているが、いま『映画秘宝』ぐらい、ちゃんとジャーナリズムしている雑誌は少ないんじゃないの? 一方で、杉作J太郎監督の映画についてもけっこう長くページを割いており、そのバランス感覚が笑える。そのあと、松坂屋に搬入するものの値段付け。


1時半に出て、品川へ。インターシティフリーマーケットへ。今日のミニミニ古本市は、〈うさぎ書林〉〈古本海ねこ〉〈RYODAN BOOKS〉〈古書わらべ〉の4店。毎回参加店が変わり、4店の組み合わせが楽しめる。うさぎ書林の芳賀さんのプロデューサーとしての腕だろう。古書わらべで1970年前後の『少年マガジン』が十冊ほどあった。大伴昌司が巻頭図解をやっていた時期だ。各1000円と安い。全部欲しいところだがガマンして、1970年1月1日号を買う。「1枚の絵は1万字にまさる」という名キャプションで知られる「劇画入門」の掲載号だ。このほかにも古いマンガが多く、ジャンプコミックス諸星大二郎などあったが、ちばあきお『半ちゃん』(集英社)を。500円は安いよ。RYODAN BOOKSでは、『日本幻景 バートン・ホームズ写真集』(読売新聞社、1974)を1800円からおまけしてもらう。バートンが明治から昭和初期にかけて日本で撮影した写真をまとめた大判の写真集で、永井龍男虫明亜呂無加太こうじらが寄稿している。デザインが斬新だと思ったら、やっぱり横尾忠則だった。うさぎ書林では、青島幸男『ざまァみやがれ! デッカイ気分になる本』(青春出版社、1966)800円。紫藤甲子男(しとうきねお)による写真コラージュ(青島が踊り子になったりヌードになったり)が随所に挟まれている。いずれも安くて、申し訳ないようだ。古本海ねこには「岡崎武志堂」も一箱出品。海ねこさんに「南陀楼さんもどうですか?」と誘われ、二つ返事で引き受ける。海ねこさんの旦那さんは、ぼくと音楽の趣味が合うという。今度一緒に渋谷毅のライブに行きましょう。


帰ろうとしたら、和服を着た女性に挨拶される。一瞬判らずに適当に話していたが、連れの男性を見て〈古本T〉のお二人だと気づく。先月ココで会ったばかりなのに……。何度も書いている通り、ぼくはヒトの顔の認知能力が決定的に低いらしく、すぐに顔と名前が一致するヒトのほうが少ない。子どものときからずっとそうで、近所のおばさんや親戚の顔を忘れて、よく親に怒られていた。一度覚えたとしてもシチュエーションが変わるとすぐに判らなくなる。タレントの顔ですら、ちょっと髪型を変えたり、別のCMで見たりすると判別できなくなる。うさぎ書林さんや海ねこさんもRYODAN BOOKSさんも、古本市の会場で会うから判るので、ほかで会ったらたぶんワカラナイだろう。だから、先日のコクテイルでも、書店員ナイトでも、松坂屋の古本市でも、なんとなく見覚えがあるヒトと会うときにはいつもドキドキしている。ホントに申し訳ないし、失礼だと思いますが、南陀楼に声を掛けていただくときは、お名前を云ってくださると助かります。幸い、名前を覚えるのは人並み以上ではありますので。もし一瞬判らない表情をしたとしても、この男をアワレと思し召して、辛抱強くお付き合いくださいますように。この機会に伏してお願いします。ちなみに、旬公はいまでも右と左の区別が付きません。なんという夫婦だ。


品川から新橋に出て松坂屋へ。搬入口で名前を記入してリボンをもらって上がる。だいぶ慣れてきたか。エレベーターを降りたら、日月堂の佐藤さんとバッタリ。疲れた顔してた。休憩室に座って、ちょっと話す。デパート側の設定した売上はクリアできたようで、まずはよかった。会場に入り、ぼくのコーナーに行くと、ん? あまり昨日と変わってないぞ。帳場に行きスリップをもらうと、昨日の売上は8650円。3日目で落ち込んだか。気を取り直して、商品を補充。戦後ラベルのスクラップブックや、CDを20枚ほど追加しました。大井由紀子さんが来てくれたので挨拶して、会場を出る。このあと〈ラピュタ阿佐ヶ谷〉でミステリ映画を2本観るツモリだったが、疲れたのでウチに帰る。先月から今月にかけて、ラピュタにはよく通ったなあ。楽しみにしていた、芦川いづみの《結婚泥棒》を見逃したのがザンネンだけど。来年も1月から文芸映画の特集があり、行かねばならぬ。


ウチでちょっとごろ寝して、眼が覚めると、テレビで「M-1グランプリ」をやっていた。5回目だが、見るのは初めて。岡崎さんがテレビで共演した麒麟が、笑い飯ブラックマヨネーズとともに上位3組に入った。そのあと同じ局でやった映画《ザ・コア》(2003・米)を観る。まあまあ面白し。しかし、もうそろそろハッカーをあんなにステロタイプな描き方をするのはヤメたらどうかね。