紙モノの在庫と岡崎さんの30冊

朝7時過ぎに眼が覚める。朝飯の前に、「早稲田古本村通信」の原稿を書く。映画のハナシのつづき。そのあと、午後4時ごろまで、ときどき休憩を挟みながら、松坂屋の古本市の値付けをする。本、CDのほか、貼込帖、マッチラベルのシート、出版カタログ、明治時代の業界紙など。この辺の紙モノは、10年ほど前に『美濃』という交換入札誌(誌上オークションの雑誌)で毎月のように買い集めていたときのもの。ネットオークションと違い、「マッチラベル 明治 動物 50枚」などのようにわずか一行の情報から内容を推定し、最低値にどれだけ上乗せするかを考えなければならない。結果としてずいぶん失敗もしたが、いまではそれなりの価値のあるものも。久しぶりに段ボール箱から引っ張り出し、こんなの買ってたっけ? と呆れ、こんなのよく買ってるよなあと感心する。


5時に旬公と一緒に出て、松坂屋へ。会場にはお客さんの姿がちらほら。とはいえ、ぼくたちのブースの前には、次々にヒトが来ては去っていくので、なかなか本の補充ができない。お客さんのヨコで、下から荷物を引っ張り出したり、本を入れ替えたりするのは、それなりの年季が要るのだなと思う。


昨日の売上を教えてもらおうと、ポラン書房さんに聞くが、担当の人が休憩中で明日になる。あとでウチに帰るとメールが届いており、ぼくたちの初日の売上は32080円だったそうだ。このうち◎%は松坂屋に引かれるので、こちらの手に入るのは2万◎千円ほど。コレが、シロートの出品物の一日の売上としてイイか悪いのか、まるで見当がつかぬ。明日は売上のスリップを受け取ることになっているので、それを見れば、売れ方の傾向が少しはつかめるかも。


有楽町で旬公と別れ、東京駅から中央線で高円寺。〈古本酒場コクテイル〉で「岡崎武志の今年買った古本ベスト30」を見る。椅子をとっぱらい、15人ほどが立ち飲みしている。晩鮭亭さん、〈ぶらじる〉の竹内さん、『ifeel』の大井さんほか、知り合いの顔多し。岡崎さんのトークは、持ってきた本を30位から1位まで見せて、そのおもしろさを話していくもの。30冊のリストはいずれ発表されるだろう(ぜひお願いします、オカザキさん)が、芸能もの、エロっぽいもの、貸本マンガ、戦前の新聞コラムなど範囲の広さは無類だ。ある本とその次の本が、微妙にテーマが似ているなど、どこかでつながっていくのが、構成の妙だろう。ほとんどの本は客に回され、手にとって見られるのもイイ。1000円で買ったという『血と薔薇』創刊号の編集人に、矢牧一宏の名前が。偶然だが、今日届いた〈青猫書房〉の目録で、この人の遺稿・追悼集『脱毛の秋』(社会評論社、1983)が載っていた。興味を持っている人し、種村・渋沢・松山俊太郎、堀内誠一ほかが寄稿となれば欲しいのはヤマヤマなれど、8500円という値段と、先着順のこの目録では夕方になって電話かけてもムダだろうと思ってあきらめていたのだった。それにしても、『脱毛の秋』というタイトルにはどう反応してイイやら、わからん。


このあと、ブックオフで抜いてきた文庫の「フリ」があって終了。1時間半ほどで、ちょうどいい長さだった。〈高円寺文庫センター〉で、『映画秘宝』、『Hot Wax』第4号と、『ワンダーJAPAN』(三才ブックス)という雑誌の創刊号を買う。「日本の《異空間》探検マガジン」というキャッチフレーズで、特集は廃墟、気になる巨大建築、不思議な神社仏閣。特筆すべきは大胆なレイアウトで、どの写真もかなり大きく使われている。アートディレクションはセキネシンイチ制作室。『江口寿史の正直日記』のデザイナーだ。文字が少ないのが物足りないが、これからどう転ぶか、ちょっと注目。


文庫センターを出るとき大井さんに声を掛けられ、高円寺駅のホームで晩鮭亭さんに声をかける。さらに、電車が止まり降りてきた金子さんにバッタリ会い、乗り込もうとした電車から森“書誌鳥”洋介が降りてきた。まるで一箱古本市のメンバーがいっせいに高円寺に移動したみたいだな。ウチに帰ったのは10時すぎ。