「初日派」以外がターゲット?

kawasusu2005-12-22

朝8時半起き。眠い目をこすり、トランクを引きずって、JRで有楽町へ。松坂屋の搬入口に着いたのは10時ちょっと前。昨夜値付けした本や端布を並べる。EDIの藤城さんが、本を立てかける台を買ってきてくれたので、使わせてもらう。看板も貼って、なんとかブースらしくなったかな?


10時15分にミーティング、25分には「開店前ですが客を入れます」という通達が。とたんに、ドーッと人が入り込んでくる。ぼくのところにも、おじさんがやってきて、台に立てかけておいたチェコの絵本(蜂が出てくる)を手にとってパラパラ見るなり、それを抱え込んで去っていった。お買い上げ、ありがとうございます。10分ほど見ていたが、短時間に多くの人がかき回すので、すぐレイアウトが崩れていく。ぼくのところだけでなく、隣や北尾トロさんのところでも、グジャグジャになっていた。こちらは少しでも手に取りやすいように、目につきやすいようにとレイアウトしているのだが、「初日派」のディープなお客さんにとっては、そういう陳列が物理的にジャマっけなのかもしれない。古本市に行くと、上にも下にも本がギッシリ詰め込まれていて、見ているうちに疲れるし薄い本はまぎれてしまうしで、「あそこまで多くなくてもいいのになあ」といつも思うのだが、あれは、数冊抜かれてもスカスカにさせないための、プロの古本屋としての常識なのかもしれない。何事もやってみると判るコトがあるなあ。


しばらくヨコに立っていたが、客のジャマになりそうなので、外に出る。仕事場に行き、『ブックカフェものがたり』の増刷のときに直す部分のチェック。末尾のリストに、2、3ヶ所、間違いがあった。データ入稿後に、直した部分をブログで公開するコトにしよう。


2時過ぎに出て、お茶の水丸善〉へ。『進学レーダー』の書評の本探し。数冊と、『東京人』増刊の「杉並を楽しむ本」などを買う。「杉並を楽しむ本」は、青柳いづみこ×角田光代×川本三郎が杉並の町や文学を語る座談会を掲載。阿佐ヶ谷文士村についても触れられている。また、「阿佐ヶ谷ジャズストリート」を中心とした杉並と音楽のかかわりを取材した金丸裕子のルポは読み応えあった。それにしても、谷根千でもこの増刊ぐらいの質と量で一冊つくるのは可能なのに、そういうハナシは聞こえてこない。やっぱり新宿や中央線は別格なのか。そのあと、日能研お茶の水校で打ち合わせ。来年は関西の学校図書館の取材に行くのである。


丸の内線に乗って銀座へ。ふたたび松坂屋の古本市会場。なんだか人が少ないような気がするが、こんなものだろうか? ウチのブースは、本もCDもある程度減っている感じだが、売れていったものがナニかを思い出すことはできない。明日、スリップを見せてもらうことにしよう。ぼくも会場を一回りする。今回の古本市は、まずスペース自体がほかのデパートに比べて狭く、隣が服売り場になっている。「だからワリと一般のお客さんが流れてくるので、単価の安いものが売れやすい」というのが、日月堂・佐藤さんの印象だというが、たしかに、各書店の品揃えも、そういう場所を意識したかのように、クロっぽい本が少ない。その分、古本好きにはちょっと物足りないことになるのだが……。しかし、ぼくたち賛助会員(ぼくみたいなシロートを含む)にとってはそれがかえって存在価値を示せることになるかもしれない、という気もする。ぼくが買ったのも、プロの古本屋からは、相倉久人奥成達ほか編『山下洋輔の世界』(エイプリル出版)800円、『矢作俊彦の世界』(別冊・野性時代)315円の2冊だけだったが、賛助会員のシマからは、新刊の長新太『カット』(トムズボックス)1200円、『写楽祭』1961年5月号と1962年6月号を各1000円と、冊数的にも金額的も多かった。


写楽祭』は北尾トロさんのところで見つけた富士フィルムの小型雑誌だが、トロさん曰く「『洋酒天国』の次はこれがくるんじゃないの?」とのこと。たしかに、表紙のコラージュ写真がすごくいいし、目次や本文のレイアウトもセンスがある。淀川長治が「8ミリコント」というのを書いてたり、血液型本で有名な能見正比古の「フォトよろず相談室」があったりと、大人の読み物雑誌というカンジだ。1962年6月号には、中原弓彦「早斬り早撃ち腕比べ」という四ページのコラムが載っている。映画における西部劇の早撃ちと時代劇の抜刀の早さについて書いたもの。黒澤明椿三十郎》の対決シーンと、宍戸錠(キャプションで「穴戸錠」と誤植)の早撃ちの分解写真も載っている。このコラムは、小林信彦の単行本に収録されているのだろうか?


5時すぎにでて、銀座コアの〈ブックファースト〉へ。書評の本と唐沢なをき『漫画家超残酷物語』(小学館)を買う。『ブックカフェものがたり』は読書のコーナーに1冊だけ棚差しされ、ほかには見当たらず。配本が少ないのだろうが、この店には、女性と生活、コーヒーとカフェなど、平積みしてもらえればそこそこ動きそうなのにと思えるコーナーがけっこうあった。配本と配置に関する、版元と書店との希望度のズレをどうやって埋めればイイのだろうか。


ウチに帰り、パッケージ屋で紙モノを入れる透明袋を買う。ついでに〈古書ほうろう〉で「不忍ブックストリートMAP」を受け取る。松坂屋用である。そのとき神原さんがナニも云わなかったので知らなかったのだが、前日にほうろうの入っているマンションで火事騒ぎがあったと後で知る(http://www.yanesen.net/diary/horo/)。大事なかったらしいのでヨカッタです。


自転車で田端駅南口に行き、『暮しの手帖』編集部のMさんとHさんと待ち合わせ。めちゃくちゃ寒い。歩いて3分のトコロにある洋食屋〈がらんす〉へ。女性が一人でやっている店で、一度に5人ぐらいしか入れないが、誰を連れて行っても満足してもらえる、ウチの近所での「鉄板」の店のひとつ。あとで旬公も来て、マッシュルームやイカのピルピル、ビーフシチュー、ハンバーグシチューを食べ、ボトルでワインを飲みながら、4人でいろいろ話す。MさんもHさんも、話し上手聞き上手なので楽しい。次号で、チェコ関係の記事のコーディネーターとしてラデク・ランツが登場するらしい。ぼくが紹介したわけではなく、会社のカメラマンと偶然に知り合ったのだという。二人からクリスマスプレゼントなのかお歳暮なのか、花森安治のイラストを刺繍した暮しの手帖オリジナルのキッチンクロスをいただいた。〈グリーンショップ〉(暮しの手帖社の通販部門)のサイトでも注文できる(http://shop.greenshop.co.jp/)。


11時前にお開きになり、あまりの寒さに気絶しそうになりながら、自転車で帰る。すぐに布団を敷いて温まる。今日買った島本和彦『新・吼えろペン』第3巻(小学館)を読み、そのつまらなさに唖然とする。いつも新刊が出るのを心待ちにしているマンガなのに、新シリーズに入ってから、すっかりハナシがユルくなった。自分のマンガの映画化の話題を引っ張ることは構わないけど、肝心のマンガがぜんぜん面白くなくなっている。絵柄もずいぶん落ち着いちゃったし。これには困った。