強盗はいりません

朝8時半起き。旬公と近くの病院に、インフルエンザの予防接種を受けに行く。しかしドアが閉まっている。休診日でもないし、もう診察時間なのに。ベルを鳴らしても反応ないので、帰ろうとしたら、奥からおばあさんが出てくる。「開けるのを忘れてた」とのこと。そして、このおばあさん(推定年齢80歳)がこの病院の院長さんなのだった。「私は60年やってるから、注射打つのうまいですよ」とのこと。たしかに、本棚の『最新療法ハンドブック』は1983年版で止まっており、ほかの本も、古本屋で云う「クロっぽい本」と化している。注射してるときに、電話がかかってくる。「え? 三鷹で強盗!?」。何のコトかと思えば、強盗して腹部を怪我した犯人がやってくるかもしれないから、気をつけろという、荒川警察からの連絡だったのだ。老院長は「ウチは関係ないです、いりません!」とキッパリ答えてたが、いかにも世を忍ぶ人物が訪れそうな病院ではあった。


ウチに帰り、いつも通り遅れに遅れた原稿を書く。12時に終わり、カレーうどんをつくって食べる。そのあと、テレビ東京の映画(なんかマヌケなSF映画だった)をBGVに、海野弘エッセイ集のゲラ(後半)を見る。目次案の段階では、各雑誌のコピーで読んでいたが、こうして統一した状態で読み直すと、本のイメージが湧いてくる。ゲラとは不思議なものである。


5時半に出て、バスで三ノ輪へ。久しぶりに〈遠太〉に入り、チューハイとポテサラ、アジのなめろう。30分で出て、近くの古本屋を覗く。小林信彦『おかしな男 渥美清』(新潮文庫)150円、そして、同じく小林信彦が責任編集の『テレビの黄金時代』(キネマ旬報別冊)が500円であった。こないだ文春文庫に入ったのと、タイトルは同じだが、内容はまったく別。こちらはクレージーキャッツを軸に据えたテレビ史なのだった。ちょっと得した気分。


日比谷線で入谷に出て、台東区中央図書館へ。いま見ているゲラで、引用文をチェックする必要があり、何冊か借り出す。ココで〈古書ほうろう〉の宮地健太郎さんと待ち合わせ、〈なってるハウス〉へ向かう。今日は渋谷毅2DAYSの二日目。しかし、客は昨日よりも少なく5人。今日は潮先郁男(ギター)、鈴木道子(ボーカル)と。ギターの奏法はかなり古めかしいもので、最初なんかモッタリしているなと思ったが、聴いているうちに心地よくなる。ボーカルは歌い上げ系で、ささやき(ウィスパー系)が好きなぼくにはちょっと苦手。全体に、銀座や六本木のジャズクラブにいるような雰囲気になった。ソロが終わるごとに拍手するとか、ああいう感じ。たまには悪くない。渋谷さんはお酒が入っているのかゴキゲンで、コードを間違えたり、珍しくステージで雑談していた。


自転車で帰る宮地さんと別れ、鶯谷から電車に乗って帰ると11時すぎ。それから、メルマガの準備や、何人かにメール書いているうちに2時前になってしまった。そうだ、〈bk1〉から本が届いていた。宮崎三枝子『白く染まれ ホワイトという場所と人々』(IBC)、川村年勝『あのころ』(北星堂)。2冊とも奥成達さん関係。インタビュー前に読んでおかなくちゃ。あと昨日、京都の〈三月書房〉の宍戸立夫さんから、「倉庫の奥から出てきた」というミニコミが送られてきた。『zinta』1971年創刊号と、『眼光戦線』第13号。後者はなんだかよく判らない。前者の特集は「少年考」。書き手がスゴイ。稲垣足穂高橋睦郎片山健草森紳一今野雄二加藤登紀子鈴木則文中川五郎野坂昭如田辺聖子矢崎泰久の座談、高平哲郎矢吹申彦、関谷荘一、村松友視清水哲男、林川健太郎、田吹日出碩。このナカでぼくが知らない名前はたった3人。なのに造りはいかにもミニコミ(ちゃんと活字で組んではいるが)というのがオモシロイ。どういう経緯で生まれた雑誌か、詳しいことを知りたくなった。