沖至=渋谷毅セッションに酔う

8時半起き。出勤日。デザイナーからファクスで届いた入稿前の最後の直しをチェック。ようやく仕様が固まったので、メディア関係に送るリリースを作成する。右文書院の青柳さんから電話があり、『ぼくの早稲田時代』の装幀原稿が林哲夫さんから届いたという。すぐに見たいので、〈ぶらじる〉で待ち合わせる。そして見せてもらった装幀は、素晴らしいの一言。表紙には早稲田大学の大隈通りの写真(新刊の〈稲門堂〉が見える)を使い、タイトルは書き文字。背表紙もピタッと決まっている。本扉、表紙にはべつの早稲田の写真を使用。仕上がりがとても楽しみだ。


田村書店〉の外台で、清水徹『都市の解剖学 都市を歩き、都市を読む』(ポーラ文化研究所)を400円で。清水氏がホストで、塩野七生とローマについて、小池滋とロンドンについて、前田愛と東京について、というように、各都市を語っていく。縦長変型の造本(若山嘉代子+縄田智子)もイイ。こんな風に思い切った判型の本を、いちどつくってみたいと思う。〈高岡書店〉では、諸星大二郎『魔障ヶ岳 妖怪ハンター』(講談社)、サラ イネス『誰も寝てはならぬ』第4巻(講談社)、『映画秘宝』12月号を買う。


新宿線で市ヶ谷へ。〈ルノアール〉で、デザイナーKさんと印刷会社のYさんと待ち合わせ。『ブックカフェものがたり』の本文を入稿し、カバー類の用紙を打ち合わせる。こっちもようやく出来上がりのイメージができてきた。仕事場に戻り、いろいろやってると6時半。竹橋から東西線茅場町日比谷線に乗り換えて入谷で降りる。台東区中央図書館で本を眺めて時間をつぶしていると、『ぐるり』の五十嵐さんがやってくる。歩いて1分のトコロにある〈なってるハウス〉へ。今日は沖至=渋谷毅セッション。この店にしては珍しく、予約席が用意されていて、10人ほどの客が入った。


今日のメンバーは、沖至(tp)、渋谷毅(p)、立花秀輝(sax)、望月英明(b)、外山明(ds)。沖至については、何十年前かにパリに渡り、向こうで活動している伝説のトランペッターという印象しかない。あと、神代辰巳監督壇の浦《夜枕合戦記》(1977)で音楽を担当していて、かなりヨカッタ記憶がある。ナマの音を聴くのは初めてだ。なんとなく、フリージャズ一本やりのヒトかと思っていて、今夜もヘンなかたちのトランペット、マウスピースや和笛を吹いたり、ホースを振り回してマウスピースで吹きながら音を出したりとアバレてくれたが、その一方で、ブリジット・フォンテーヌの「ラジオのように」とか、スタンダードの「ライク・サムワン・イン・ラヴ」(だったかな?)では、じつにメロディアスなトランペットを聴かせてくれた。一曲だけ渋谷・沖のデュオがあったが、コレもヨカッタ。開演前に、カウンターで沖さんが渋谷さんに「昔、二人で地方のライブハウスをよく回ったねえ」というようなハナシをしているのが聞こえたが、その再現のようであった。ラストは「御嶽山」。あの木曾のナー、というやつ。


他のメンバーもよくノッてたと思う。とくに、ぼくの大好きなドラマーである外山明は、今日もスゴかった。「エッセンシャル・エリントン」のときには、立ってドラムを叩くという、「立つ動物」ならぬ「立つドラマー」なのだが、今日は座って演奏していた(スタンダードの一曲だけ立っていた)。しかし、足でスネアをミュートしたりと、相変わらず変わっている。おせじにも「ゴキゲンにスイング」というリズムではなく、吃音的なリズムなのだが、それが他のメンバーの演奏と重なると、たまらなく心地いい。


終わると10時半。鶯谷まで歩き、〈信濃路〉に入る。つまみ200円台が基本の超安い店。ホッピーを飲みつつ、五十嵐さんに『ぐるり』の今後の展開など、いろいろ聞く。最後にコロッケうどんを食べて、勘定すると二人で2400円。安いなあ。ウチに帰ったのは12時半。