岡崎さんと聴く、奏楽堂の渋谷毅

朝8時半起き。今日も出勤日。昨夜の残りで朝飯を済ませ、出かける。仕事場では苦手な原価計算の材料を揃えたり、ゲラを読んだり。1時半に出て、神保町のそば屋で昼飯。〈書肆アクセス〉で、坪内祐三『極私的東京名所案内』(彷徨舎)を買う。こないだのUBCで買ったというヒトが多かったが、ぼくも行っていたにもかかわらず、気づかずに帰ってしまったのだった。新書サイズで函入り、手にすっぽり収まる大きさ。ブルーの東京風景の箱から本体を抜き出すと、黄色ベタのカバーが鮮やかに現われる。このような、坪内さんの「小さな本」を待っていたのだ、という気がする。たぶん、この小さな本から発見することは多いだろうという予感がする。


〈珈琲館〉で、右文書院の青柳さんと打ち合わせ。青柳さん、「さっき、田村書店の外台で買ったんです」と4、5冊を見せる。一目見て、絶句。今和次郎『新版大東京案内』600円、生方敏郎『明治大正見聞史』600円。中公やちくまの文庫じゃないよ、戦前の初刊本だ。さらに、篠田鉱造『銀座・築地物語絵巻』200円、帝大新聞のアンソロジー『読書と散歩』200円。極めつけは、石角春之助『銀座女譚』が200円!(オヨヨ書林は1万円つけている)。一冊だけだったら、「ヨカッタですねえ」と祝福するところだが、この5冊をたった2000円で入手した青柳さんには、嫉妬を覚えた。うらやましい……。


飯田橋の〈パウワウ〉でデザイナーKさんと打ち合わせ。そのあと、病院に旬公をお見舞いに。仕事場に取って返し、1時間でもろもろ片付けてから出る。神田まで歩いて、山手線で上野へ。公園口で、岡崎武志さんと『ぐるり』の五十嵐さんと待ち合わせ。3人で、渋谷毅のコンサートを見に行くのだ。岡崎さんはこの秋、大学やカルチャーセンターの古本講座で忙しい。古本道場の道場主だったり、古本教授だったりと、まさに古本界のセレブと云えよう。晩鮭亭さんが今度、岡崎さんとアン・サリーのライブに行く、というように、いま、古本界ではその岡崎さんと一緒にライブを見ることがステータスとなっている(もうひとつのステータスは、セドロー牛イチロー主催のセドリツアーに招待されること)。そのうち、アクセスの「黒いでっぱり」こと畠中さんも、クレージーケンバンドのライブに岡崎さんを招待するであろう。


会場は、上野公園の中にある〈奏楽堂〉(http://www.taitocity.net/taito/sougakudou/)。明治23年建築の「日本最古の木造の洋式音楽ホール」で、ジャズを聴くこの催し、ぼくは3年目だ。会場に入ると、奥成達さんがいらした。第一部は渋谷さんのソロ。休憩を挟んで、坂田さんとのデュオ。坂田さん、出てきただけで笑いを取っている。最初はスタンダードを演奏したが、そのあとは、ピアノに乗せて日本書紀藤原定家に節をつけて唄ったり、現代音楽風の曲があったり、鳥取県の民謡があったりと、いろんなスタイルの曲を聴かせる。最後は、完全にフリージャズの「ダンス」という曲で終わり。奏楽堂でフリージャズが聴けるとは思わなかった。アンコールに渋谷さんが一曲やって終わり。いいコンサートだった。


終わって、五十嵐さんと二人で谷中のほうへ。三崎坂上にある〈町人〉に入る。いまのマスターに代わるずっと前、おばさんがやっていた時期に一度入っただけ。とても変わった店だという印象があった。久しぶりに入ると、そのイメージどおりで、新しいマスターも先代がかぶっていた「ずきん」を受け継いでいた。この店ではライブや落語も企画していて、来週30日(日)には福島泰樹の絶叫短歌ライブをやるという。前も食べたことのある「おいらん焼き」(お好み焼きみたいなもの)ほかを食べて、アレコレ話す。お互いにいろいろやりたいことはあるよなあ、五十嵐さん。11時に日暮里駅で別れて、ウチに帰る。