ノンプロの古本市がおもしろい

kawasusu2005-10-08

ちょっと寝坊して9時過ぎに起きる。雨は上がったが、まだ天気は悪い。「出かけるのめんどくさいなあ」と旬公に云うと、「じゃ、止めれば」とのお答え。それでも行くのだ、文化祭へ。新宿で中央線に乗り換えて、国分寺へ。北口から大学通りを5分ほど歩き、道を渡ったところに、早稲田実業学校がある。受付はあるが、さほど派手な感じではない。共学のせいか、開成に比べると女子高生ハンターの姿は少ない。


図書館の2階にあがると、「古本市やってますよ」と呼び込みが。靴をスリッパに履き替えて、入場。スデに客が群がっている。5つぐらいの長テーブルに、単行本と文庫を分けて置いている。値段は文庫30円、単行本が50円と100円。一通り回る。最近の本が多く、そこそこイイ本があるのだが、開成のように意外な掘り出し物は少ない。ちょっとゼイタクか。図書委員会の機関誌「パピルス」によれば、毎年文化祭までに学内と家庭に、古本の供出を呼びかけているのだそうだ。唐澤平吉『花森安治の編集室』(晶文社)、矢代静一『含羞の人 私の太宰治』(河出書房新社)、本多秋五『物語戦後文学史』(新潮社)、黒井千次『時間』(講談社文芸文庫)、仁木悦子『石段の家 自選傑作集』(ケイブンシャ文庫)、石光真清『城下の人』ほかの四部作(中公文庫)、五味川純平『虚構の大義 関東軍私記』(文春文庫)、蓮実重彦『文学批判序説』(河出文庫)など15冊。これだけ買って560円。いちばんの収穫は、10円の箱から見つけた、扇谷正造草柳大蔵・小谷正一『おもろい人やなあ 奇才、怪物逸話人物論』(講談社)。エンピツの線引きがあるので、この値段なのだが、目次には大宅壮一高田保池島信平、岩堀喜之助(平凡出版創業者)、花森安治らの名前が。これらの人物の逸話を鼎談形式で語るもの。人名索引がついている。この古本市(というか文化祭)は、明日もやっているそうなので、お近くの方はどうぞ。ほかの展示を見ることもなく、外に出る。


大学通りに戻り、行きがけに目に入っていた、名曲喫茶〈でんえん〉へ。開店時間の12時すぎに行ったのだが、まだ入り口が閉まっていて、上品な老婦人が開けてくれる。店内は奥行きがあり、スピーカーの近くのテーブルに落ち着く。とにかく古い店。この店は、たしか永島慎二が若いときに通った店だという記憶があったが、たまたまテーブルに置かれていた朝日新聞の記事(「中央線の詩」という連続企画)のスクラップを読むと、その通りだった。この店は蔵を改造したのだという。30分ほどクラシックを聴きながら、コーヒーを飲む。また来よう。


店を出ると、小雨が降っている。駅周辺の古本屋を覗くのはヤメにして、中央線で中野へ。商店街のアーケードをブロードウェイのほうへ歩いていると、前にマンガを読みながら歩いている小学生が。覗き込むと、押切蓮介の『でろでろ』だ。思わず、笑いをこらえる。やあキミ、いいセンスしてるよね、と肩を叩きたくなった。〈明屋書店〉で、雑誌『Invitation』(ぴあ)をようやく見つける。ふだん縁のない雑誌なので、書店に行っても探すのを怠ってしまっていた。読書コーナーで、岡崎武志さんが『チェコマッチラベル』を紹介してくれたのだのだが、見つけたのは無常にもスデに次の号だった。版元にバックナンバーを注文するか……。〈タコシェ〉で、今日からはじまった「ちょうちょぼっこ出張古本市+沼田元氣放出 駄本+がらくたバザール」を見る。思ったよりも冊数が少ない。沼田さんの棚から1985年に自費出版した『芸術珍道中』という小冊子(500円)、ちょうちょぼっこの棚から、横尾忠則装幀の瀬戸内晴美田村俊子』(角川文庫)350円を買う。ちょうちょぼっこは、自分の店でも昨日から「ラララえほん」(http://www.nk.rim.or.jp/~apricot/lalala/)という絵本のイベントを開始した。同時に大阪・東京の二ヵ所でイベントやるなんて、働き者だなあ。


今日はもう一ヶ所、池袋西口公園古本まつりに行くハズだったが、まだ小雨が降っているので、パスする。「不忍ブックストリート一箱古本市」のあたりから、古書会館の古書展やデパート古本市のように、プロの古本屋の古本市よりも、文化祭やちょうちょぼっこのように、ノンプロの古本市のほうがおもしろい、という気がしている。ほしい本が見つかるかどうかよりも、「祭り」としてのワクワク感があるのだ。そういう機会があると、やたら張り切って出かけるのだが、従来型の古本市には(いま、本を減らす算段ばかりしているせいもあって)「行っておこうかな」という義務感めいた動機で出かけるコトが多い。やっぱり、ぼくは熱心な古本好きとは云いがたいのかもしれない。この辺のことは、いずれきちんと書きたいと思っている。


ウチに帰り、寝転んで本を読んだり、ちょっと仕事しているうちにたちまち夜になる。晩飯はカレーの残り。ビデオで、M・ナイト・シャマラン監督《サイン》(2002・米)を観る。このヒトはホント、「あおる」のがウマイよなあ。ほかの数作を見た経験上、「ゼッタイに伏線になってない、たんなる意味ありげなシーン」だと判るトコロも多いのだが、けっこう見入ってしまう。あまりにもアレな◎◎◎をはじめ、よくもまあこれだけ堂々とやるよなあと、呆れるのを通りこして感心してしまう。小説や漫画では描けない、映画独自の「見世物」であることはたしか。シャマランの新作ができたら、今度は映画館で観たい。