狭山は汗と雨に濡れて

kawasusu2005-09-04

8時半起き。朝飯を食べ、昨日の日記を書いて、シャワーを浴びたら出かける時間。山手線で池袋に出て、西武池袋線の快速に乗る。小林信彦『映画を夢みて』に熱中していて、ハッと気づくともう所沢だ。20分しか掛かってない、早いなあ。ココでちょいと悩む。というのは、この方面に行くコトに決めてから、どこか古本屋に寄ろうと、古書店地図やネットを調べてみた。それを見ると、所沢からの西武新宿線沿線に何軒か古本屋があるのであった。で、いったんそっち方面のホームに行くが、はたして戻ってくる時間があるのか心もとないのでヤメておいた。


そこで、行くことにしたのが、〈ほんだらけ〉(http://www.hondarake.com/)所沢店。この店はチェーン1号店らしい。小手指駅を出て、北に向かって歩く。駅ロータリーから西友の辺りは、見事にチェーンストアしか存在しない。けっこうヒトが多く賑わっているのだが、どうも気分が暗くなっていくのはナゼだろうか。そこから国道に出て、西方向へひたすら歩く。バスは3時間に一本、流しのタクシーはまったく通りがからないので、歩くしか方法がない。じつはウチに帰って、野村宏平『ミステリーファンのための古書店ガイド』(光文社文庫)を見たら、隣の狭山ヶ丘駅にレンタサイクルがあるとの情報が載っていた。しまったー!


暑さでくじけそうになった頃、ようやく到着。黄色い建物に赤のロゴが目印です。〈ほんだらけ〉は鳥取店に行ったが、まず広いこと、雑多な本を詰め込んでいること、状態にあまり気を使ってないこと(その分、安い)のが気に入った。この所沢店も、かなり広い。また駅まで歩くことを考えると、1時間もいられない。文庫だけは丹念に見たが、単行本は流し見で終わってしまった。二階は吹き抜けの周囲に、木で床がつくってあり、かなりギシギシ音がする。音楽、映画関係の本が多かったが、ざっと一回りしたのみ。買ったのは、『小林信彦の仕事』(弓立社)550円、阿佐田哲也編著『競輪痛快丸かじり』(徳間書店)100円、神西清『灰色の眼の女』(中公文庫)180円、山田宏一『シネ・ブラボー 小さな映画誌』(ケイブンシャ文庫)200円、桂千穂『白い少女』(角川ホラー文庫)150円、小山清『落穂拾ひ・聖アンデルセン』(新潮文庫・復刊)330円、中町信のミステリ2冊が各100円といったところ。汗かいてココまで来た甲斐はあったかも。


同じ道を30分近くかけて戻り、小手指駅前の〈なか卯〉で昼飯。池袋線稲荷山公園駅へ。改札で『ぐるり』の五十嵐さんと会う。今日は「ハイドパーク・ミュージック・フェスティバル2005」(http://www.hmf-sayama.jp/)という野外ライブを見るのだ。昨日に続いての二日目。会場の公園は駅の目の前。演奏中のバンドの音がココまで響いている。イイ感じで盛り上がる。入り口で当日券(6500円)を買い、会場へ。手前の小高い場所には、ビールや料理の屋台、その先の芝生の奥にステージがある。すでにかなり埋まっていたが、それでもステージがよく見える場所に座れた。みんなビニールシートを持参していたが、我々は芝生に直接座る。


パンフによれば、この稲荷山公園は、アメリカ空軍の「ジョンソン基地」跡地で、1976年に一般開放されて、「ハイドパーク」という名前で親しまれてきたという。この周囲には米軍ハウスが建ち並び、そこに細野晴臣小坂忠吉田美奈子らが住んでいたという。そして、このイベントは狭山に住むヒトたちが実行委員となり、何らかのカタチで狭山にゆかりのあるミュージシャンを集めている。ちゃんと「地縁」のあるイベントなのだ。そのせいか、全体に手づくり感が漂っていてとてもイイ。行ったことはないが大阪の「春一番」コンサートというのは、こんな感じだったのだろうか。


ステージでは、岩淵まこと(g、vo)が演奏中。五十嵐さんが生ビールを買ってきてくれ、飲む。日差しはキツイけど、涼しい風がときどき吹いてくる。20分ほどの休憩のあと、アーリー・タイムス・ストリングス・バンド。CDは聴いているが、ライブは初めて。アコースティックなライブかと思ったら、渡辺勝さんがギンギンにエレキギターを弾いていた。村上律のスティールギター、松田幸一のハーモニカ、いずれもいい。ゆるゆると演奏しながら、きっちり客席を盛り上げていくところは、さすがベテランだ。後半は、西岡恭蔵トリビュートとして、宮武希、中川五郎ハンバート・ハンバートとボーカリストを増やしながら、西岡恭蔵の曲を演奏。最後はまたヒトが増えて、全員で「プカプカ」をやる。


この辺りから日が翳ってきた。屋台に行き、ビールと焼きそばを買ったら、突然雨が降り始めてきた。席に戻り、しばらくは傘を差して座っているが、どんどん激しくなるので、とてもその場にいられない。次のラストショウがはじまる頃に、後方の大きな木したまで退散。さらに雨が激しくなり、雷まで鳴ってきたので、残念だが帰るコトにした。このあと、ムーンライダーズ鈴木慶一鈴木博文武川雅寛が出て、何バンドかはさんだあと、最後に細野晴臣が出るので、とても惜しいけど、荷物を抱えて雨のナカを何時間も立つ気力はない。稲荷山公園駅のホームで、〈古書ほうろう〉の宮地夫妻にばったり。東京ではもう雨が止んだので、出かけてきたと云う。健闘を祈って別れ、池袋経由で帰ってくる。


ナンだか疲れて、1時間ほど眠る。晩飯は昨日の枝豆ご飯と、鳥ひき肉を焼いたもの。ビデオで、アレックス・コックス監督《リベンジャーズ・トラジディ》(2002、英)を観る。なんか、古典劇を近未来に移し変えたようなストーリーだなと思ったら、やっぱりそうだった。雨はいったん止んでいたが、また激しくなった。「ハイドパーク」のサイトで速報を見ると、ムーンライダーズのときは大雨。しかし、佐野元春あたりで止み、最後の細野さんまで無事に続けられたらしい。あのとき、ムリして残っても、根性なしだからムーンライダーズの途中で帰ってしまっていたかも。チケット代は惜しかったけど、まあ、野外イベントのリスクというものだろう。でも、汗と雨に濡れて、それなりに楽しかった狭山行きであった。