恵比寿と渋谷で映画漬け

朝8時半起き。こないだ、台湾の新聞記事を翻訳してくれるヒトを募集したが、今朝Sさんという方からやってくださるというメールが入っていた。おお、コレで「一箱古本市」がどう評価されたかが、判るぞ。楽しみです。8日からNOMADで行なう「チェコマッチラベル展」のチラシを数十通封入。ホントはカラーのDMも同封したいが、ぼくの手元にはあと20枚ぐらいしか残っていない。2000枚印刷して、ぼくが1000枚受け取ったのだが、大阪での展覧会の時期に、ほぼ配り終えてしまった。


10時前に出て、山手線で恵比寿へ。そこから歩いて、写真美術館へ。今日も「チェコ映画祭」だ。こないだ来たときは、平日夜だったからか、客が少なかったが、今日は100人ぐらいはいたようだ。《厳重に監視された列車》(1966)は、《スイートスイートビレッジ》の監督イジー・メンツェルのモノクロ映画。脚本はボフミル・フラバル。舞台はナチス占領時代のチェコ。脱童貞を望む主人公の少年(駅員)をはじめ、登場人物のほぼ全員が「性的人間」であり、セックスをめぐるエピソードが展開される。不自由な時代を性に固執することによって忘れようとしている。だから、やや重苦しい笑いになるのだが、そういう枠からはみ出る部分もあって、冒頭、主人公の祖父が催眠術師で、ナチスの戦車に催眠術で立ち向かったという、いかにもなホラ話には大笑いした。


終わって昼飯、と思っても、ガーデンプレイス内のレストランにはあまり入る気がしない。コンビニでおにぎりを買って、しのぐ。まだ時間があるので、〈TSUTAYA〉を覗く。1階の天井まで棚があり、古いビデオを詰め込んでいる。渋谷店では見かけない映画もあり、3本借りる。写真美術館に戻り、今度はミロシュ・フォルマン(《アマデウス》の)監督《消防士の舞踏会》(1967)は、政治色がほとんどないコメディ。消防署が主催するパーティーで巻き起こる珍騒動。カタログには「小さい村にはそれぞれ有志による消防団があり、それが必ずどの村でも地元の共同社会のまとめ役を担っていました」とある。ダンスや、美人コンテスト(署長たちがアメリカの雑誌の美人コンテスト記事を参考にしていて可笑しい)、くじ引きなどでトラブルが起こり、そのたびに消防署員が右往左往する。カメラは、火事のシーンを除いては、会場から出るコトがない。もとは舞台劇だったのだろうか。


観おわって、駅まで戻り、渋谷へ移動。道玄坂の〈シネセゾン渋谷〉で次の回のチケットを買う。時間があるので、道玄小路の〈麗郷〉でビールとガツ炒め。最後に焼きそばを頼み、コレを食べて映画館に戻ると開場時間だな、と胸算用していたが、なかなか焼きそばが上がらず、開場に10分遅れて映画館に戻る。席は空いてたので、そんなに心配するほどでもナカッタけど。


山下敦弘監督《リンダ リンダ リンダ》は、まぎれもない傑作だった。主演のペ・ドゥナの意志の強さと唐突なおかしさは、いかにも韓国から来た女の子という気がする。ペ・ドゥナをバンドに誘う香椎由宇(連ドラ《女系家族》でも末娘を好演してる)の強そうで脆いトコロもいい。カラオケボックスの店員が山本剛史、スタジオの人が山本浩司と、山下映画の常連もいい場面で登場。ぼくはブルーハーツにはなんの思い入れもないが、練習で何度も繰り返される曲が、彼女たちの気分にマッチしているのはよく判った。これまでの山下作品を観ると、ラスト、学園祭でのライブに大遅刻したときに、間に合わないままに終わるんじゃないかと思ったが、ちゃんと間にあわせて演奏も成功し、盛り上げて終わる。たとえば《くりぃむレモン》のような「不発感」「未到達感」はない。山下監督と脚本の向井康介の意思なのか、プロデューサーの意思なのかは判らないが、このラストは、山下映画のひとつのターニングポイントなのではないか。山下映画はずっとビデオで観ていたが、この映画を劇場で観られたのはヨカッタ。今後は毎回、劇場で観るぞと心に誓う。


ウチに帰ったのは7時。仕事のメールやDMの封入をやり、10時ごろに晩飯(えだまめとカニの炊き込みご飯と、サンマ焼き)。一日持ち歩いて再読中の小林信彦『映画を夢みて』(筑摩書房)で優れたコメディと激賞されている、ジョセフ・L・マンキーウィッツ監督《三人の妻への手紙》(1949、米)をビデオで観る。構成はオモシロイと思ったが、会話の妙味があまり味わえず。英語がわからないと、オモシロさが理解しにくいのか。ともあれ、今日は一日、映画漬けの日だった。