内輪話はほどほどに
朝8時半に起きる。遅れていた『チェコのマッチラベル』献呈本を、メール便で発送する。「sumus」の皆さん、明後日には届きますからね。また手持ちの本が足りなくなった。また注文せねばならぬ。そのあと、この本のPOPをつくる。旬公先生が手ずからつくってはくださらなかったので、不肖・ワタシメの自作。絶望的に下手な字だが、マッチラベルのカラーコピーを貼ってごまかす。まあ、中身のイメージはつかんでもらえるのでは。
昼は旬公がつくった、明太子パスタ。岡崎武志さんから、「おに吉」の原稿依頼。「ここはひとまず『うん』と言ってください」とあったので、「うん」と返信する。いや、そんなエラソウにではなく、ちゃんとお返事しましたが。創刊号から「おに吉」ファンなので、ホントに嬉しい。古本者として一人前になった気分だ。
2時半ごろに出て、西荻窪へ。〈音羽館〉でDMとPOPを渡す。音羽館、開店して五年経ったそうで、広瀬さんに五周年記念のバッヂをいただく。看板に使われているイラスト(本を読む女の子)をバッヂにしたもの。カワイイ。15年後(つまり開店二十周年)あたりには、レアな価値を生んでいるかも。広瀬さんと立ち話。あとで「とり、本屋さんに行く」(http://d.hatena.ne.jp/tori810/)を見たら、店内にとりさんがいらっしゃったようだ。小さな声で話したつもりだが、古本屋での常連客と店主の会話は、お客さんのジャマになりがちなので、不快に思われなかったか心配。ぼく自身、常連客がなれなれしくデッカイ声で喋っているのを聞くと、「なんだコイツは」と思うたちなので、なおさらである。
久しぶりに〈森田書店〉に寄ったら、なんだか本の量が増えている。棚自体は相変わらずあまり動きがないのだが、床に置いてある本がけっこうオモシロイ。買わなかったけど。そのあと、〈三月の羊〉〈興居島屋〉と回り、DMを置いてもらう。
次に荻窪へ。北口の〈ひなぎく〉で、DMを置いてもらうようお願いする。海月書林のイベントなど、何度も来ているのだが、店のヒトに挨拶するのは初めて。〈ブックオフ〉に寄る。この店はとにかく量が豊富で、見て回るのに時間がかかる。じっくり見るか、と思ったが、単行本の棚の辺りに、店員が何人か集まっていて、デカイ声で世間話をしている。客の存在なんか、目に入ってない様子だ。うるさいので他の場所に行ったら、そこでも女の店員二人が人生相談みたいなのをやっている。その合間に「いらっしゃいませ〜、こんにちは〜」だけは怠らない。挨拶なんかどうでもイイから、客のジャマはしない、っていう教育だけはしといてくれ。おじさんはもう少しでキレそうでした。買ったのは、青柳いづみこ『青柳瑞穂の生涯 真贋のあわいに』(新潮社)950円。阿佐ヶ谷会のコトが出ているので。あと、殿谷みな子『アローン・トゥゲザー』(集英社文庫)、かんべむさし『38万人の仰天』(朝日新聞社)が各105円。
阿佐ヶ谷、中野にも寄るツモリだったが、どうやら限界。中央線で新宿へ出て、〈TSUTAYA〉の半額セールでビデオとDVDを借りる。レジは長蛇の列だった。ウチに帰り、旬公が「今日も虫がいるよ」と云う。数週間前から、豆粒ほどの小さな虫がやたらと部屋の中にいるのだ。しょうがないからバルサンでも焚くか、と話し合ってた直後に、旬公が奇声を上げる。慌てて駆け寄ると、台所の引き出しに入れてあった、バリ島で買った豆の袋から例の虫がうじゃうじゃ湧いていた。コレが原因だったのか! その引き出しごと水に漬けて虫を処分し、旬公には異国の食品をそのままほって置かないよう、厳重注意。
やっと落ち着いたので、カレーをつくる。食べながら、DVDでジョン・ブアマン監督《脱出》(1972、米)を観る。じつに妙な映画。ジョン・ボイドら四人組が、もうすぐダムが建設される川をカヌーで下る。そこで妙な男たちに出くわして、対決するコトになる。しかし、その男たちがなんで主人公らを襲うのか、また四人組の一人(バート・レイノルズ)がなんだか腹に一物ありそうなのも、あるいは川の近くの住民が環境汚染のせいで病気にかかっているのも、ナンにも説明されない。ジョン・ボイドは何のために崖に登ってまで男を殺したのか、ホントにその男は四人組を狙っていたのか、それさえ判らないママに終わってしまった。それでいて冒頭から最後まで、不気味な空気と緊迫感が全体に張り詰めていて、まったく飽きさせない。だから妙な映画なのだ。本編を見たあと、ヒントを求めて、メイキングや予告編を見るが、「男と男の対決を描いた」などと表面通りの説明になっていて、よけい混乱した。