浅草にて地震

朝7時に起きる。今日は、〈書肆アクセス〉の企画「東京者」(仮題)の打ち合わせがあるので、その候補リストをつくる。東京に関する本で、いま販売できるものを選ぶのだが、考え出すとアレもコレもと出てくる。バランスを考えて、25冊ぐらいに絞る。一昨日の煮物を温めて、遅い朝飯。


12時に、三河島の〈稲垣書店〉へ。カウンターに中山信如さんが座られている。「古本屋の書いた本」で使うため、写真撮影をお願いしたのだ。写真を撮りながら、著書の裏話などを聞く。『古本屋おやじ』(ちくま文庫)は2冊分の原稿からセレクトしたものだとか、『古本屋「シネブック」漫歩』(ワイズ出版)は毎回取り上げる本を全部読む(読み直す)のが地獄の苦しみだったとか。後者など、増補して文庫化してほしいと思うのだが、きっとタイヘンな作業になるだろうから、あまり気楽にはお願いできない。なお、先日の日記で最近、土日開けるようになった、と書いたが、去年のうちから土曜日一日だけは開けていたそうです。気づかなかった。『色川武大の御家庭映画館 映画ビデオ・ガイドブック』(双葉社)1000円、色川武大『寄席放浪記 なつかしい芸人たち』(廣済堂文庫)400円、中野翠『会いたかった人、曲者天国』(文藝春秋)350円を買う。同じ映画書専門店でも、神保町の某店(こないだ正面からトラックが突っ込んだとか)とは比較にならないぐらい安いなあ。


三ノ輪に出て、駅に向かっていたら、目の前に青柳隆雄さんが。古本屋に寄ってたみたい。改札で堀切直人さんに会う。荒川線・三ノ輪橋駅前の地味な喫茶店で、「東京者」の打ち合わせ。各自がつくってきたリストを見せ、意見を云い合う。堀切さんは選択の基準が厳しいので、青柳、南陀楼の出した候補で、何冊か却下された。その場で思いついたヒト、本も何冊かあり、最終的には60冊近くになった。とりあえず第一段階には達したかな。


茶店を出て、昭和通りを浅草方向にぶらぶら歩く。千束で〈おもしろ文庫〉を覗いたり、野坂昭如田中小実昌の集った〈かいば屋〉を眺めたりして、六区のほうへ歩く。競馬の日だから、人出がスゴイ。伝法院通りの先の〈ニュー浅草〉に入る。ココは昼間でも酒が飲める。二階のテーブル席が落ち着く。ビールとつまみを数品頼み、雑談していると、急に地面が揺れだした。地震だ、とスグ判ったけど、いつもより揺れが激しいし長い。時に4時35分。足立区が震源地で、震度5だという。揺れが収まっても、なんだかまだ地面が揺らいでいる気がする。ウチがどうなったか、心配だ。


一足先に辞去して、自転車で帰る。西日暮里駅の前を通ると、電車が止まっているせいで多くの人が駅前で立っている。再開を待っているのか、タクシーに乗ろうとしているのか。駅前にあんなにヒトがいるのは、初めて見た。マンションに帰り、恐る恐るドアを開ける。入ってスグのところは、見た目に変化がない。しかし、枕元に積み上げた書類の山が崩れていた。さらに、台所の上のほうに置いていた棚が倒れ、塩や砂糖の入れ物が床に落ち、中身が散乱していた。もったいないけど、掃除機で吸い込むしかない。奥の部屋に入ると、やっぱり崩れている。押入れの奥に積み上げた本が前に飛び出し、床に落ちているのだ。横積みにした中公文庫が100冊ぐらい散らばっていて、肌色の表紙がまあキレイ……なんて云ってるバアイじゃない。机に置いていた本、CDも散乱。とにかく応急処置のツモリで、積みなおしてしまう。こうして、また行方不明の本が増えていくのだが。でも、この程度で済んで良かったよ。あとで見たら、ほうぼうの書物ブログで、本が崩れたハナシを書いているのが、なんだかオモシロかった。あんまり笑い事にしてはいけないけど、いちばん激しく崩れたのは誰だろうなあ。一等賞は晩鮭亭さんかな?


旬公から一度電話があり、御茶ノ水駅で足止めされているとのこと。テレビを見ると、たしかに山手線・京浜東北線・千代田線と運休している。一通り片付けて疲れたので、『映画秘宝』を読む。映画《逆境ナイン》が公開中の島本和彦インタビューが最高。『映画秘宝』はインタビューや対談のまとめがウマイんだよなあ。大槻ケンヂソニンの対談では、角田光代の『空中庭園』が映画化され、ソニンも出るのだが、小泉今日子の演じる主人公の夫が、ナンと板尾創路だという。おお、コレは観てみたい。《魁!!クロマティ高校》といい、板尾は最近、映画づいているのか。先日亡くなった林由美香の追悼記事も(ちょっと感傷過多だったけど)ヨカッタ。


大阪の〈calo bookshop and cafe〉より、「チェコマッチラベル」展のDMが届く。月曜日に入稿したのに、もう出来てきたのだ。早い。表面は4色カラーで、いいカンジ。これを書店や古書店に置いて回らなければ。「ウチで置きたい」というお店はメールでご連絡いただければ、お持ちするか送付します。どうぞヨロシク。


少し眠ってしまう。9時半に旬公が帰ってきて、自転車で出かける。すずらん通りの〈鳥ぎん〉で、釜飯。珍しくガラ空きだった。〈古書ほうろう〉にDMを届け、そのあと〈NOMAD〉へ。DMを500枚渡し、山田さん(奥さん)と打ち合わせ。土曜日の夜はいちばん忙しい時間なのに、邪魔して悪かった。12時にウチに帰り、スグに布団敷いて眠る。