今日はこのくらいにしといたるわ

朝8時に起きて、シャワーを浴び、西日暮里駅へ。東京駅に出て、新大阪行きののぞみ号に乗る。ほぼ満席。名古屋での「愛・地球博」(書くのも恥ずかしいタイトルだが)開催中のためらしい。車内のお供は、チキン弁当と缶ビール。コレだけあれば、楽しく過せる。食べ終わったら即眠り、京都で目覚める。


新大阪から御堂筋線で心斎橋。四つ橋線四ツ橋駅と地下でつながっているハズなので、その通路を探すが、ドコにも表示は出ていない。ワープロで打ったようなすごく小さな貼り紙があったので、それを頼りに歩くが、途中からその表示も消え、とても不安になる。結局、方向は合ってたのだが。毎回同じようなコトを書いているが、大阪の表示は大阪人以外のヒトにはとても不親切だ。


四ツ橋駅から地上に出て、1、2分のところに、〈INAXギャラリー大阪〉がある。来るのは初めて。ココで、「肥田せんせぃのなにわ学」展(http://www.inax.co.jp/Culture/2005g/06hida.html)を観る。肥田晧三は、近世文学研究者で、関西大学の元教授。両替屋の家に生まれ、幼い頃から大阪の伝統的な文化になじみ、一方で、戦前からの大阪モダニズム(映画とか宝塚とか雑誌とか)にも親しんできた。いまでも着物で通しているヒトである。上方落語、カフェー、美術雑誌、芸者評判記、双六など、肥田氏が蒐集してきた、近世から戦前にかけての上方の印刷文化の資料を並べているが、展示スペースは、意外と小さく、スグ見終わった。興味深いのは、奥に再現された肥田氏の本棚。三面ぐらいの本棚に、数百冊の本の現物が収まっている。稀覯本よりも、ふだんよく使っている研究書、事典、書誌などが多いようだ。何冊かナカを見たい本があったが、透明な覆いがかかっていて、手に取るコトができないのが残念。それと、戦前に肥田家が8ミリで撮影したらしい映像(大阪の街やカフェー、肥田家の人々)がビデオで流れていて、コレにも見入る。この展覧会、大阪では8月19日まで。そのあと、名古屋、東京と巡回するが、東京に来るのは12月だというから、イマ見ておいてヨカッタ。INAX出版からの図録もよくできている(同書に収録されている、澤田隆治のコメントには、マルセ太郎が肥田氏の同級生だったという証言も)。


この会場で、「大阪のチン」こと前田和彦くんと、その大学の先輩で、最近注目のブログ「エエジャナイカ」(http://d.hatena.ne.jp/akaheru/)のakaheruこと北村知之さんと待ち合わせ。近くのスターバックスに入る。さて、akaheru氏はどんな青年だったのか? 気になるヒトは、来月号の『彷書月刊』を読んでくださいな。ま、いろいろ盛り上がった。そのあと、前田・北村コンビと一緒に、北堀江の〈貸本喫茶ちょうちょぼっこ〉へ。旬公による手づくり本ワークショップがまさに佳境に差し掛かっていた。あとで待ち合わせるコトにして、外へ。


四ツ橋から地下鉄で、肥後橋の〈calo bookshop and cafe〉へ。今日は休みだが、石川さんに鍵を開けてもらい、ナカに入る。明日からの展覧会(「カナリヤ手帖−挿し絵原画とひみつの雑貨店−」)の準備中。8月16日からの「チェコマッチラベル」展の打ち合わせ。ダイレクトメールの作成、展示の方法、まだヒミツの販売グッズなどについて相談する。8月27日(土)5時から、caloでぼくが行なうトークのゲストは、内澤旬子に決定。身内ですいません。題して「10円コンビが語る 紙モノと古本のプラハ」。マッチラベルの現物を見せたり、スライド上映をしたりする予定です。よろしければ、お運びください。


Caloから北に向かって歩く。暑いし、荷物を背負っているので、汗が止まらない。堂島の〈ジュンク堂書店〉大阪本店へ。誰かのブログを見て知っていたが、レジの位置などレイアウトが変わっていた。不採算スペースをカットしたのだろうか、はたしてこの店の名物「編集工房ノア」コーナーは? と、そっちに向かう。前の位置に見当たらず、アセったが、ちょっと奥のほうに、ちゃんとあった。見ようによっては前よりも広いスペースだ。ジュンク堂はやっぱりエライ。美術書の棚に行き、デザイン関係のコーナーで、『チェコマッチラベル』を発見。3冊が面出しになっている。大手書店で並んでいるのを見たのは、初めて。3階に上がり、大阪本のコーナーで、橋爪節也編著『モダン道頓堀探検 大正、昭和初期の大大阪を歩く』(創元社)を見つける。橋爪氏ら8人が、人力車、クラブ白粉、浪花座、カブトビール、120のキーワードについて、解説していく。大正時代の雑誌『道頓堀』から、ふんだんに図版を掲載している。コレで2000円+税はお買い得だ。林哲夫さんが日記で書いているように、索引がないのが惜しいな。橋爪氏によれば、もともと『道頓堀大百科事典』をつくりたかったというのだから、なおさら。


このまま歩いて、梅田に行き、大阪駅前第三ビルの古本屋でも覗きますか、と前田くんが提案してくれるが、大阪には年に数回しか来るコトができないのだから、まだ行ったことのない店に行ってみたい気持ちが強い。で、パッと思い出したのが、以前〈ちょうちょぼっこ〉の店内に貼ってあった古本屋のポスター。広角で撮ったような店内の写真が印象的だった。幻想文学とかサブカルにつよい店だったハズ。ちょうちょの福島さんに電話して、それだけの手がかりで思い出してもらう。折り返し電話があり、〈古書ノスタルジア〉ではないかとのコト。電話してみたら、6時半まで開いているという。前田くんの道案内で、地下街を東梅田まで急いで歩き、谷町線に乗って谷町四丁目で降りる。オフィス街っぽくて、こんなトコロに古本屋があるのかなと思ったが、ちゃんとあった。もとは骨董屋だったのだろうか、倉庫みたいに奥の広い店で、古いカメラとかアンティークのランプとかを置いている。奥で店主と客がハナシをしているが、どちらも帳場に見える机に座ってので、どちらがご主人なのか判らなかった。品揃えも値段もまあまあだったが、今回は買わず。ほかにも、古本屋を覗きたかったが、移動が面倒なので諦める。今日はこのぐらいにしといたるわ。


中央線で本町に出て、御堂筋線に乗り換え、心斎橋に戻ってくる。アメリカ村まで歩き、〈タワーレコード〉へ。ココで、前田くんが荻原魚雷さんから強力にススメられたという、東京ローカル・ホンクというバンドの[東京ローカル・ホンク]を見つける。久保田真琴プロデュース。下北沢のモナ・レコードから出ている(タワレコでこのCDを買うと、モナ・レコードのサンプラーCDが付いてくる)。棚を見渡していて、矢口博康の名前を見つける。まさかニューアルバムがと思ったら、1984年のカセット・ブック[観光地楽団]のCD化だった。東京に帰って聴いたら、やっぱりヨカッタものの、ボーナストラックがないのはしかたないとしても、CD化への解説がないのは惜しい(当時のブックレットは復刻されているが)。冬樹社のカセット・ブック「SEED」は、[観光地楽団]のほか、細野晴臣[花に水]、ムーンライダーズ[マニア・マニエラ]などをリリースした、1980年代中期の重要なレーベルだったのだから、関係者へのインタビューなどを入れるなどして、詳細な解説がほしかった。


また〈ちょうちょぼっこ〉に戻る。古本コーナーで、『漫画ブリッコ』1985年4月号を発見。200円。奇しくも、[観光地楽団]と同時期だ。云うまでもなく、大塚英志が編集していたロリコン漫画誌。この辺りはリアルタイムで買っていたなあ。中森明夫の連載は終わっているが、竹熊健太郎の「風雲ライオン新聞」が載っている。この時期の竹熊氏は「エディパー」と名乗っていたのだ(いまは「編集家」)。あと、平野威馬雄『アウトロウ半歴史』(話の特集)1800円、塩山芳明『嫌われ者の記 エロ漫画業界凶悪編集者血闘ファイル』(一水社)600円。後者は、「古書モクロー」で売ろうっと。


旬公のワークショップの荷物を入れたデカいトランクを引きずって、移動。ちょうちょから5分ほどのところにあるカフェ・レストラン〈Barbes(バルべス)〉へ。料理はクスクスとか鶏肉のナントカとか。ちょうちょぼっこの4人と、caloの石川さん、前田くんと北村さん、そして旬公とぼく。このメンツだと、我々夫婦がダントツが歳上だ。にもかかわらず、石川さんの先を見据えた姿勢に、オトナだなあと思う。ちょうちょ郷田さん(今夜はミス・マープルをほうふつさせる髪型と眼鏡でご登場)と、チンこと前田くんとのやりとりは、まるで異次元空間が出現したようで、ドコにハナシが行くのか周りがハラハラする。たちまち三時間が過ぎて、11時にお開きに。


今夜は(今夜も)、前田くん宅にお世話になる。しかも夫婦で。いいのかコレで、38歳。もう何度も来ているので、今里に着いたら、さっさと前田家に向かって歩き出す。お母さんに挨拶し、フロに入れさせてもらう。『ぐるり』からのファクスを見て戻し、1時に就寝。古本屋を少なめにしたけど、それでもちょっとハードな一日だったかな。