堀切で菖蒲園に行ったコトなし

朝、日暮里から京成線に乗って、堀切菖蒲園へ。この駅にはもう十数回降りているハズだが、未だにココの名勝である菖蒲園を見たコトがない。約束まで30分ほど時間があるからと、そっち方向に7、8分歩いたが、まだ掛かりそうなので引き返す。菖蒲園が見られるのはいつの日か。もっとも、いままで歩いたことのない道で、やたらとデカい昭和モダン建築(病院か?)を見つけたりして、楽しい散歩だった。駅近くの不動産屋のウィンドーを覗いたら、3LDKで9万円というのが出ている。堀切駅から徒歩10分。間取りのコピーをもらっておく。


〈青木書店〉で青木正美さんとお会いする。8月に日本古書通信社から刊行される、反町茂雄の晩年を描いた本のお話などを聞きながら、昨日買ったデジカメで青木さんを撮影する。資料として著書を2冊拝借して、辞去。堀切に行くとナゼか寄ってしまう〈アルー〉で、アルーカレー(挽肉、豆、卵)を食べる。その先の新しい文庫に強い古本屋も覗くが、買わず。同じルートで帰ってくる。


3時過ぎに、自転車で小沢信男さん宅に寄り、『チェコマッチラベル』をお渡しする。谷中コミュニティセンターの図書館で、リクエストした本を受け取る。それから、〈千駄木倶楽部〉で、中国人記者の于前さんとお会いする。日本に来て12年という、アタマの回転の早そうな女性。不忍ブックストリートMAPを見せると、「しのばずくん」にやたら反応していた。一箱古本市については、「台湾の人もきっとおもしろがると思います」と絶賛。ただし、年一回じゃ少ないそうで、「毎月やってほしい」とのコトだった。店を出て、突然降り出した雨の中を、〈古書ほうろう〉へ。ココで写真を撮られる。もともとカメラマンだということで、かなりいろんなポーズを取らされる。最後に「しのばずくん」の粘土人形と一緒に写真を撮られ、終了。コレでもう来週には、台湾の新聞「開巻」に掲載されるというのだから、すごいスピードだ。


ときわ食堂〉でチューハイ。帰りに生協で買い物する。晩飯は、サバと厚揚げとネギとえのきと油揚げをぶち込んで、唐辛子とキムチで味付けした煮物(?)。テキトーに考えてつくったのだが、ホッとな味でおいしかった。クリント・イーストウッド監督《真夜中のサバナ》(1997、米)を観る。イーストウッドが出演しないし、長い(150分)ので敬遠していたが、なかなかオモシロイ。サバナはアメリカ南部の町で、作詞家・作曲家のジョニー・マーサーの出身地。トップシーンで、サバナの公園にあるらしい、天使の像とマーサーの碑みたいなのが出て、そこに「そして天使は歌う」と彫られている。マーサーの曲のタイトルだ。「そして天使は歌う」と来れば、久保田二郎のエッセイ集もそうだ。映画を観たあと、角川文庫版を引っ張り出したら、この表紙にも天使像の写真が。コレは偶然なのか。もっとも、この本のあとがきには、「これは(ベニ−・グッドマン楽団の)しぶといセカンド・トランペットの、ユダヤ系のジギー・エルマンの快作だ」とあり、マーサーの名前は出てこない。グーグルで検索してみると、この曲はマーサー作詞・エルマン作曲なのですな。なるほど。


で、映画はそのジョニー・マーサーの親戚であるマーサー将軍の屋敷で展開し、全編にマーサーの曲が使われている。マーサー邸に住む富豪をケヴィン・スペイシー、そこにやってきたニューヨークの記者をジョン・キューザックが演じる。中心となるのは、スペーシーの犯した殺人をめぐる裁判なのだが、イーストウッドの興味は、サバナという町とヒト
を描くコトにあったのではないか。犬の首輪だけを毎朝散歩させる黒人。頭にアブをたからせ、謎の毒物を所持している男。キューザックを翻弄する黒人のオカマ。ブードゥーの魔術師。黒人のための社交界も、ややグロテスクに描かれている。南部という土地は、北部のアメリカ人にとってよほど奇怪な土地らしい。なんだか、とても不思議な映画だった。原作(ジョン・ベレント)は翻訳されているので、読んでみたくなった。