海野さん、月の輪さん、堀切さん

朝、昨夜の残りご飯でお茶漬け。書くのを忘れていたが、昨日の毎日新聞朝刊で、今度公開される《魁!!クロマティ高校 THE MOVIE》で、元巨人軍のクロマティが「氏名を無断に使われた」と差し止め申請をした、という記事が載っていた。全国紙にクロ高が……。思わず、飲んでいたお茶を噴き出しそうになった。『少年マガジン』での連載はもう数年間続いているし、アニメにもなって、それもアメリカで放映とか云ってたのに、今頃になって抗議してくるのはヘンだという気がする。いまだに、他メディアよりも映画のほうが影響力があるという認識があるのだろうか? クロマティ側は、抗議の理由として、「クロマティ高校の生徒たちは授業にほとんど出席せず、他校の生徒との抗争に明け暮れるなど素行の悪い学生として描かれている」と云っているらしい。たしかにその通りのマンガなんだけど、こうまとめられてしまうと、ナンか違うという気になる。


11時過ぎに旬公と神保町へ。途中で別れ、〈Folio〉で海野弘さんとお会いする。ぼくが完全にフリーランスになったと知って、「一日中ウチにいると腰が痛くなるから、毎日散歩したほうがいいよ」とアドバイスしてくださる。そのあと、「カワカミくんをびっくりさせようと思って」と取り出したのは、分厚い原稿の束。ポプラ社から今年中に刊行予定の海野さんの本で、書き下ろしていただく部分を、もう早々にアゲてくださったのだ。こないだ、「そろそろ掛かるから」と電話で聞いたところなのに、わずか10日で150枚書いてくださったのだ。中身はもちろん素晴らしい。フリーランス編集者として出発する日に、最高の贈り物になった。


1時半まで話し、海野さんと別れる。〈書肆アクセス〉にちょっと寄ってから、また〈Folio〉に戻る。某ムックの取材。ハナシを聞きに来た編集プロダクションのYさんは、本好きで神保町の動向にも詳しいのだが、そのムックの基本方針自体が、いまいちよく判らないもので、Yさんも困惑していた。30分ほど喋り、外で写真も撮られたが、どんな風にまとまるのか不安だ。


遅い昼飯でも食うかと、駿河台下の交差点に立っていると、向こうに月の輪書林高橋徹さんの姿が。「いま、市場にいたんだよ。君の本もあったでしょ」と。こないだ、セドロー牛イチローに引き取ってもらった分だ。日月堂さんが、「コレはナンダロウさんのじゃないかなあ」と云ってたという。サスガに鋭い。小川町の蕎麦屋に入り、昼からビール。月の輪さんにも、コレからの行く末を心配していただく。みんなに心配してもらって、ホント、果報者です。月の輪さんは先日、何年がかりかの晶文社の本の原稿を完成し、昨日編集の中川さんに渡したとのこと。350ページぐらいのボリュームで、秋頃には刊行されるらしい。楽しみだ。


ウチに帰ると、大森のいまは亡き古本屋〈山王書房〉の関口良雄さんの未亡人より留守電が入っている。先日手紙で取材をお願いしたのだ。折り返し電話すると、お送りした『ナンダロウアヤシゲな日々』で関口さんのコトを書いたのを読んでくださっており、喜んで会ってくださるとのこと。とても明るい声の方だった。そのあと、昨日原稿を送った『週刊朝日』のUさんから電話。うまく書けたか自信がなかったが、「とてもオモシロかったです」というコトバにホッとする。


6時、バスに乗って、三ノ輪へ。日比谷線の改札のところで、堀切直人さんと右文書院の青柳さんと待ち合わせ、〈中ざと〉へ。『浅草 大正篇』の完成を祝う会。表紙は織田一磨描く浅草十二階の絵。前の『江戸明治篇』ほどではないが、本作もけっこう厚い。目次に登場するのは、石川啄木室生犀星谷崎潤一郎宇野浩二辻潤正岡容江戸川乱歩堀辰雄金子光晴。堀切さんといえば、大正文学というイメージが強いので、自家薬籠中の世界で浅草をどう料理されているのか、読むのが楽しみ。10時近くまでアレコレ話すが、堀切さんが先日の「一箱古本市」に来てくださり、あの雰囲気を十分に愉しんだと云ってくれたのが、すごく嬉しかったなあ。


二人と別れ、歩いて帰る。途中、荒川区役所の近くの〈なごみ〉という立ち飲み屋に寄る。一年前にできていたが、入るのははじめて。まだ新しいカウンターで、清潔な感じ。客はぼく一人だった。つまみが110円から380円と安い。焼酎のロックとつまみ数品で、1000円でおつりが来た。多くのヒトと話したせいか、ウチに帰ったとたん、ヨコになって眠ってしまう。気づいたら1時で、《タモリ倶楽部》を見逃してしまった。完全フリーランスとしての最初の日は、なかなかエキサイティングで、実り多き日であった。明日からもこうありますように。