さようなら、「本とコンピュータ」編集室

朝、〈ならまち文庫〉の宇多滋樹さんからの電話で眼が覚める。森まゆみさんらに会うために、上京してきた。谷中のアパートに泊めることになっていたので、鍵の受け渡しを段取りする。そのあと、また眠ってしまい、11時過ぎに起きる。旬公がつくった昼飯を食い、仕事場へ。昨日の日記で、「荻原魚雷くんが出てる」と岡崎さんが書いていた、「朝日新聞」29日朝刊を見る。古山高麗雄のことで、しかも「書評のメルマガ」(紙名は出てないが)で連載したコトにも触れてある。魚雷さんに古山高麗雄の作品をひとつずつ書いてもらったら、と思いついたのは、不肖ワタシメです。えっへん。なお、魚雷さんはいま発売中の『TONE(トーン)』(ユニバーサル・コンボ)でも、「歩兵と将校の戦争――古山高麗雄吉田満」という文章を書いている(目次では「古山高麗男」と誤植)。


もうだいたい片付けは終わったので、某誌の原稿を書く。ちょっと手こずり、何度も書き直す。けっきょく完成しないまま、5時になる。手荷物を片付け、皆さんに挨拶して、編集室をあとにする。今日で「本とコンピュータ」編集室は、解散する。この場所は、大日本印刷が後続のプロジェクトのために借りておくらしいが、ぼくがこの部屋に来ることは、もうないかもしれない。1997年3月に、ぼくたちがこの部屋に来たとき、中央にテーブルがひとつあるだけで、電話も床に置かれていた。それから、備品も人も増え、さまざまな出来事があった。季刊雑誌が32冊、別冊・叢書・オンデマンド出版が数十冊、オンラインのコンテンツなどが、この場所で生れた。しかし、終わってみると、あまりにもあっけない気がする。


都営新宿線新宿三丁目へ。久しぶりに〈ジュンク堂書店〉新宿店を。さっき書いていた原稿のために、本を探す。二冊探して二冊とも見つかった。さすがです。この店がオープンしたとき、「閉店時間が早いのが不満」と書いたのだが、6月から9時まで営業となっていた。これもエライ。資料本のほか、『en-taxi』第10号、島本和彦逆境ナイン』第5、6巻(小学館)、鈴木みそ『銭』第3巻(エンターブレイン)を買う。『en-taxi』には、洲之内徹の小説『棗の木の下』が別冊附録として挟み込まれている。匿名コラムでは、鈴木地蔵『市井作家列伝』(右文書院)が激賞されていた。


中央線で高円寺。ガード下の古本屋を覗き、7時に〈円盤〉へ。今日は、ふちがみとふなとのライブ。すでに10人以上入っていて、その後も続々と。30人ぐらいになったか。椅子に座ると、足も動かせず、ビール瓶を下に置くのさえ一苦労。ぼくのいちばん好きな歌(「坂をのぼる」)からはじまり、オリジナルをたくさんやり、間に「小さな喫茶店」「エノケンのダイナ」などを挟む。2ステージで約20曲。上野茂都さんがライブでやったのを先に聴いていた「古本屋のうた」も、初めてオリジナルで聴けた。今日のふちがみとふなとは、ノーマイク・ノーアンプだが、渕上純子は大声でも小声でも、聴く者を惹きこむ。ベースは超絶だが、コーラスは情けない声の船戸博史もイイ。アンコールでやった「百万円拾ったら」とかいうコミックソングが、アナーキーでよかった。ライブ会場で先行発売の[ヒーのワルツ]を買う。工場からのプレスは上がってなくて、ふたりが手作業で封入したやつだとか。


9時半に終わって、電車を乗り継いでウチに帰る。ピエ・ブックスから『チェコマッチラベル』(2200円)の見本が届く。製本された状態で見ると、けっこう厚くて、持ち重りがする。たっぷりと図版の入った本なので、書店に並んだらぜひ手にとって見てください。晩飯のあと、昼間の原稿の続き。1400字という短いものなんだけど、なかなか線が決まらず、何度もいじくっているウチに、いちばん最初の構成に落ち着いた。よくあるコトだ。