奥成達のハナシを聴け!

11時に仕事場へ。葉山の渡邊裕之さん(http://d.hatena.ne.jp/hi-ro/)が聞き手になって、奥成達さんと本について喋るというネットラジオ「nusic books」を聴く。第一回のテーマは日記本。奥成さんの友人の吉田仁『葉山日記』(かまくら春秋社)についてのハナシがメイン。この日記には葉山や逗子、鎌倉の飲み屋やバー、有名無名の人名が多く出てくるが、それらを奥成さんが解説してくれる。これを聴くと、葉山に住むのも楽しそうだと思うけど、ヒト付き合いが濃密になりそうでちょっと躊躇する。


奥成さんは、他に殿山泰司『JAMJAM日記』(ちくま文庫)、小林信彦『1960年代日記』(ちくま文庫内堀弘石神井書林日録』(晶文社)を好きな日記本として挙げていた。もっとも、「取るのがめんどくさいので」という理由で、本棚の高いところにある本は除いている。奥成さんの自宅で収録しているので、そういうナマな雰囲気も楽しめる。他にも、1999年から2000年にまたがる2カ月の日記を、有名無名にかかわらず数百人に書いてもらいそれを本にするというアイデアをマガジンハウスに提案したが蹴られたとか、主宰する詩誌『gui(ギ)』は「guitar」の「tar」を取って付けたとか、山下洋輔の文章はどれも日記的だとか、初耳&なるほどのハナシがたくさんある。奥成さんと渡邊さんは「若いヒトのあいだで、コレクターやマニアの生態の描かれた日記本を楽しむ読者が増えている」と話していたが、奥成さん自身も、1960年代から多くの才能ある変わり者とつき合ってきた。彼らと直接出会っているという経験と、それを裏付ける記憶力を、両方持っている(この辺のコトは、ぼくが準備している書き下ろし本に、インタビューを元にまとめるツモリだ)。


仕事しながら聴こうと思っていたのだが、つい聴き入ってしまって、1時間仕事にならなかった。途中で、関島岳郎らのユニット「OKIDOKI」(一昨日〈円盤〉にCDがあったが、カネが足りなくて買えなかった)の演奏がジングルみたいに挟まるのもイイ。本好きならきっと共感することが多い番組だと思うので、一聴をオススメします(聴きたい方は上の渡邊さんのブログからどうぞ)。


昼飯のあと、印刷会社から届いた『チェコマッチラベル』の表紙や帯の色校を見る。ちょっと地味な気もするが、ナカに150ページもカラーが入っているから、かえってイイかも。もうすぐチラシもできるそうなので、置いてくださる書店があればご連絡ください。お送りします。


いままで使っていたメールを変更するので、そのやりかたをシステム担当のOくんに相談する。その設定は30分ほどで終わったのだが、そのあと、パソコンに溜まったデータを自分用に保管するやりかたを訊いたら、えらい時間を食ってしまった。もともと外付けのハードディスクを買うつもりでいたら、もう一人のシステム担当BくんにiPODをススメられた。コレで決まりと思って、Oくんに伝えたら、なんと「VAIOiPODは相性がワルイんですよ」と云われる。あとUSBは2.0じゃないと転送スピードが遅くて使い物にならないとか。あとで調べたら、ぼくのマシンは2002年発売でUSB2.0ではなかった。あとDVD-Rに焼くという案も出たが、これもうまくないというコトに。


説明を聞いているウチに、だんだんイライラしてきて、その辺のモノを蹴り飛ばしたくなる。いつものことなのだが、パソコンに関して何か設定を変えたり、新しい機器をつなごうとするたびに、かならず障壁がある。「ハードAとハードBが対応しています」と書いてあったとしても、それは、ハードAについて条件Cが満たされているか、ハードBについて条件D が満たされていること(しばしばその両方)が前提なのだ。そんなの「対応してる」って云えるのか。Oくんに悪気はなく、なぜできないのかを懇切丁寧に説明してくれるのだが、なぜだか目がウレシそうに見えるのは気のせいか。けっきょく、最初に戻って、外付けハードディスクを買うコトになった。今後、自宅に仕事することになるので、そのうちプリンタも買わなきゃならんのだが、そのときには同じような騒ぎになるのだろうか。あー、もう。書かなければならない原稿があったのだが、まったく取り掛かれず。


ウチに帰って、今度はこっちのマシンのメール設定を変更する。全然アクセスできないので焦ったが、いろいろやってるウチになぜかつながる。こうやってできる・できないの理由を理解しないままだから、次に同じ事態に遭遇しても対応できないのだ、というコトはよく判ってるんだけどねえ。そういうワケ、メールアドレスを新しいのに変えました(ヘッダを参照)。いままでのアドレスでも8月末までは受け取れるようです。ヨロシク。


ムダに疲れた気がして、ビデオで《ロスト・イン・ラ・マンチャ》(2001、米=英)を観る。こういう気分にピッタリというべきか、よりダークにさせるというべきか。なにしろコレは、「完成されなかった映画の記録」なのだから。テリー・ギリアム監督が、ドン・キホーテの映画化をもくろみ、ようやく撮影に入るが、資金不足、大雨、プロデューサーの横槍、主役の急病などで中断される。コッポラのドキュメンタリー《ハート・オブ・ダークネス》は完成して大ヒットしたからよかったが、ギリアムの映画はそのままオクラ入りになった。なんともやりきれない、胃が痛くなるような(そこがオモシロイ)映画だった。余談だが、撮影現場で、ギリアム監督がなぜか佐渡の「鼓童」のTシャツ(しかも二種類も)を着てたのが、笑えた。そのあと、もう一本、《D.O.A 死へのカウントダウン》というのを観るが、まったくノレなかった。晩飯のうどんをつくりながら観たセイだろうか。


そうだ、昨日、書き落としたことひとつ。新宿の西口を歩いていたら、地下広場で古本市をやっていた。神奈川組合の主催らしい。時間がないので10分だけ見たが、〈古書自然林〉の出品で、『にっぽんの喜劇映画PART1 前田陽一篇』(映画書房)という本が眼にとまった。前田陽一の映画についての評論、本人のエッセイ、前田映画へのメッセージ(田中小実昌も)、《にっぽんパラダイス》のシナリオなどで構成されている。こんな本、知らなかった。しかも、オビは小林信彦で、前田陽一のサイン入りとくれば、2000円なら安い。手持ちが少なかったが、小銭まで動員して買った。そして、いま気づいたのだが、表紙のイラストとデザインは橋本治の手になるものであった! ちょっとウレシイ買い物だった。