ゲラ戻し、打ち合わせ、立ち飲み、そして『薔薇族』

午前中、遅れに遅れている原稿を書く。その最中に、バイク便で某社のビジュアル本のゲラが届く。原稿を書き終わってから、一気にゲラを直し、バイク便で送ろうかとメールで尋ねると、ファクスで送ってくれという答え。A3サイズのゲラを切って、家庭用のファクス機で30枚も送るのはタイヘンなのになあ。やっと送り終わって、自転車で出かける。


往来堂書店〉に寄り、カレル・チャペック『こまった人たち チャペック小品集』(平凡社ライブラリー)と、『東京人』(特集「新宿が熱かった頃 1968−1972」)を買う。あと、今柊二さんから「コレが買いですよ!」とススメられていた『月刊プレイボーイ』(http://m-playboy.shueisha.co.jp/home.html)の30周年記念号を見つけた。名物の「プレイボーイ・インタビュー」の名作選、主要なカバーガールのグラビア、時代を代表する映画・音楽・本のセレクション、田名網敬一坪内祐三ほかの『プレイボーイ』へのメッセージ。しかも、別冊附録として創刊号のダイジェスト・ミニチュア復刻版が付いているのだ。普段買ってないくせに、節目の号だけ買うというのは、いかにもミーハーだけど、コレは買わずにはいられない。しかも次号も、30周年記念の第二弾として、開高健特集をやるという。


自転車だから風は感じるものの、どうも蒸し暑い。御徒町の〈風月堂〉で、C社のNさんと待ち合わせ。2階が満席なので、4階に行ったら、妙に高級なサロンみたいな部屋で、しかもガラ空き。ゆっくりハナシができた。懸案の書きおろし、取材は先に進めているものの、本全体の輪郭ができていない。しかし、Nさんと話しているウチに、どうやらこうつなげばイイかなという線みたいなものが、おぼろげに見えてきた。アドリブによる企画の煮詰め方というのは、メールやファクスのやり取りではまずできない。直接会って、雑談から入りながら、その場で話していくのがいちばんイイ(ま、あとでひっくり返るコトもありますが)。しかし、方針は決まったものの、先は遠いなあ。


5時前にNさんと別れ、ちょっと時間があるので、御徒町駅ガード下の立ち飲み屋〈味の笛〉に入る。何年ぶりだろう。ココは、目の前の鮮魚スーパー〈吉池〉が直営する店で、サカナもそこから運ばれてくる。だから、刺身が300円だったり、塩焼きが200円だったりと破格に安いのだ。しかも、4時開店(2階は3時)だよ。当然、今日も憩いを求めておじさんたちが集っていた。チューハイと刺身(ホタテとマグロ)、厚揚げで700円だった。


そこから、昭和通りに出て、東上野へ。『月刊薔薇族』(http://www.barazoku.jp/)編集部のあるメディア・ソフトに行こうとするが、番地をたどっても、それらしき表示はない。アセって、編集部に電話すると、編集部は同じ東上野だが違う場所にあるとのこと。急いで上野方向に戻り、ビルの9階にある『薔薇族』編集部へ。なんで、ココにやってきたかというと、フリーでは食えないのでデブ専として東上野で働くコトになった……のではなくて、この雑誌のアドバイザーであるライターの影坂狩人(カルト)さんに取材するためなのであった。彼は〈書肆アクセス〉で、「モクローくん通信」などを見て、ぼくにメールをくれたり、自分で出したミニコミを送ってくれた。狩人さんは、見た目はもの静かで理知的な感じ、でも喋りだすと止まらないヒトだった。ブログ日記「Cultな疼き。〜GMな日々〜」(http://karuto.blog8.fc2.com/)も、細部にわたる日常の記録と、歯に衣着せぬ直言が気に入って、愛読している。その辺のハナシをいろいろお聞きする。途中で旬公も参加した。


編集部を辞去してから、自転車二人乗りで御徒町まで戻り、湯島の裏のほうの韓国料理屋に入る。二階の座敷はぼくたちだけで、あとから帰って来た女の子がテーブルに座って宿題をしているという、のどかな店だった。しかし、味は本格的で、キムチ、ナムル、豚の皮炒め(コラーゲンたっぷり)、そしてミソチゲと、どれもおいしかった。場所柄か、西日暮里の〈大栄〉よりは値段が張るが、満足であった。また二人乗りで、西日暮里まで帰ってくる。


テレビで《サイコ》を観る。ヒッチコックのではなく、ガス・ヴァン・サントがリメイクしたほう(1998)。カメラワークや音楽も含め、あえて新しい要素を付け加えずに、オリジナルに忠実にリメイクしている。それはよく判るのだが、新しくつくられた、サイコが主人公である映画として見たときには、なかなかツライものがあった。今朝送った校正を反映したものが30枚もファクスされている。もともと小さな文字で組まれているから、ファクスで読むのはきついんだよな。どうにかチェックして、訂正点をメールで戻すと、12時すぎてしまった。