気がつけば6月

おお、4日もあいだが空いてしまった。書きたいコトや紹介したい本がいろいろあったのに。この間、ナニをしてたかといえば、仕事場の整理や企画の打ち合わせのほかは、ひたすら原稿を書いていた。某社からビジュアルを中心とした本を出すことになり、そこに入れる文章をまとめていたのだ。チェコ語ができない人間がチェコについて書くという無謀な行為なのだから、いろんな文献に当たっての準備にえらく時間がかかった。また、「sumus」「モクローくん通信」の読者でプラハに留学中の田中大さんには、知りたいことを片っ端から調べてもらった。感謝。この本については近いウチに告知できると思うけど、なかなかイイ本になりそうですよ。ふっふっふ。今朝は早く起きて、その本のあとがきを書き上げる。コレでなんとか山は越えたぜ。


珍しく早く片付いたので、旬公と映画を観にいくコトに。観たいのが上野でやってるので、自転車で出かける。日差しが気持ちいいし、不忍池のあたりに来ると風もさわやか。久しぶりに人間に戻った気分だ。駅前の上野百貨店2階にある〈聚楽台〉へ。上野の顔みたいな存在だが、団体客が多いだろうと敬遠して、一度も入ったコトがない。こないだ、エンテツさんが「ココはいいよ」と云ってた(日記でも書いている。http://homepage2.nifty.com/entetsu/sinbun05/ueno_jyuraku.htm)ので、行く気になったのだ。


ナカに入ると、一目で気に入った。天井が高く、広いホールだ。昔のデパートの大食堂のスタイルが、この時代に残っていたとは。お座敷席にもそそられたが、上野の街や走る電車を正面から見られるテーブル席に座る。ほぼ満席の盛況だ。ここでビール飲んでうだうだしたら、さぞやいい気分になるだろう。しかし、映画の時間が迫っている。エンテツさんお勧めの「西郷丼」は、ウェイトレスに旬公が頼んだ五目ラーメンを食べ終わるころに到着します、とじつに具体的な待ち時間を教えてもらったので、パスして、長崎ちゃんぽんを頼む。ごくフツーの味なんだけど、こういう場所で食べるとなんか美味しいような気がする。また来よう。ちなみに、上野百貨店の前の京成のなかにあった〈じゅらく〉は、改装工事のため5月8日で閉店している。


隣の〈上野セントラル〉に入る。待っている客は20人ぐらい。どんな映画でもラクに座れるのが、上野の映画館のいいところ。前の回が終って、ヒトが出てきたが、意外と高年齢層が多い。土地柄か。ナカに入ると、この映画館も上野っぽいなあ。スクリーンの左右にはでっかいレリーフがあるし、二階席なんか左右に張り出していて、昔の劇場みたい。


今日観るのは、クリント・イーストウッド監督の《ミリオンダラー・ベイビー》。自分が育てたボクサーに逃げられたボクシングジムの経営者・イーストウッドと、トレーラーハウス育ちのホワイト・トラッシュ(貧困層)で、31歳でボクシングに賭けようとするヒラリー・スワンク。その二人を見守るモーガン・フリーマン。ほぼこの三者の関係だけで、出来上がっている映画だ。スワンクが次第に強くなり、リングで快進撃していく前半。そして、それがすべて無に帰す後半。病院のシーンは、こないだ以来の旬公の入院とどうしてもダブってしまった。結末は苦いけど、どうしてもこの終り方じゃなければならなかっただろう。イーストウッドもスワンクもいいが、モーガン・フリーマンがよれよれのオヤジを演じてスバラシイ。あと、メインのストーリーには絡まないが、ジムに通っているちょっとオツムの弱いデンジャーという青年がよかった。2時間以上あったけど、一瞬たりとも退屈することのない映画だった。


自転車で不忍池の脇を通り、根津駅まで。自然食品の〈根津の谷〉の二階にある〈Amber〉へ。なんとなくココ、バーが中心だと思っていたが、コーヒーの種類が多い喫茶店だった。バナナケーキのセット。コーヒーもケーキもどっちも好み。久しぶりに出かけたので、〈往来堂書店〉あたりを覗きたかったが、いまにも降りそうな天気なので、ウチへ急ぐ。へ屋に入ったとたんに、大雨が降り出した。勝川克志さんから『のんき新聞』第9号が届く。勝川さんと栗栖直哉さんの二人が、謄写版のコトを書いているのがオモシロイ。勝川さんが通っていた東京デザインカレッジという専門学校の存続を巡っての騒動で、建物の壁に書かれた落書きを栗栖さんが謄写版の本にまとめたところ、それを見た『週刊朝日』の記者に取材されたそうだ。その記者とは川本三郎氏。この縁で、勝川さんの『豆宇宙珍品館』に川本さんが解説を書いたのだという。なるほどねえ。ぼくの「ホンの一枚」、今回はカラッポになった実家の本棚を。


晩飯を食べながら、旬公が借りてきた《ザ・カップ 夢のアンテナ》(1999、ブータン・オーストラリア)を観る。ヒマラヤ山麓チベット仏教の寺院で暮らす、修行僧たちがサッカーのワールドカップを観るために、奔走するハナシ。テレビもラジオもない寺院で、主人公のまだ子どもの僧が、「昨日はロナウドのシュートが失敗した」と一喜一憂したり、ドコから入手したのかサッカー雑誌や選手の写真まで持っているあたり、(ぜんぜん比べ物にならないとはいえ)田舎で情報に飢えていたぼくの子どものときを思い出した。ブータンで製作された映画だが、舞台はインドらしい。チベットから亡命してきた僧侶が出てくる。なんとプロデューサーは、《戦場のメリークリスマス》のジェレミー・トーマスだった。


4日ぶりなので、またしても長くなってしまった。やっぱり日記は少しずつでも、毎日書くほうがラクなのだ。