お久しぶりです神保町

午前中、神保町へ。ここのところ、家と仕事場、病院の往復で、神保町に立ち寄る余裕がなかった。ひょっとして二週間ぶり? ぼくにしては非常に珍しい事態だと云ってもいい。でも、久しぶりの神保町は相変わらずだったので、ホッとした。目についた変化としては、〈書泉グランデ〉の奥に〈ラドリオ〉の仮店舗ができていた。ココは以前、〈リオ〉という喫茶店があった場所だ。飯塚利昭さんという方の「神保町 昼食ニュース」(http://www.ne.jp/asahi/iizuka/toshiaki/lunch_s0.html)によれば、〈リオ〉は「かつてT字型のフロアで北側と西側に入り口があった「ラドリオ」を分割した店である」という。知らなかった。経営者が同じだったということなのだろうか? 〈リオ〉は昨年12月に閉店していたそうで、そのあとが改装中の〈ラドリオ〉の仮店舗となったというコトか。


三省堂書店〉で、ばるぼら教科書には載らないニッポンのインターネットの歴史教科書』(翔泳社)、〈書肆アクセス〉で、「清原なつの忘れものBOX」の1『サボテンとイグアナ王子』、2『二十歳のバースディ・プレート』(本の雑誌社)を買う。「BOX」とあるが、フツーの単行本2冊なんだよなあ。それと『トスキナア』創刊号も。畠中さんに、フィルムセンターのチケット(豊田四郎特集)をいただく。なないろさんにも遭遇。〈すずらん堂〉で、『ウラBUBKA』7月号を買う。この号で休刊するらしい。特集によって買っていたが、文字が多く、隅々まで濃い内容だった。やっぱりこういう詰め込み方は、いまはウケないのかもしれない。〈成光〉で半チャンラーメンを食べ、仕事場へ。


自分で書いた記事の青焼きを戻す。「そして、本だけが残る−―三人の「出版者」との対話」というタイトルで、金沢で復刻版出版と古書店を営む金沢文圃閣田川浩之さん、名張市立図書館で「江戸川乱歩リファレンスブック」3冊の刊行を独力で実現させ、『子不語の夢 江戸川乱歩小酒井不木往復書簡集』(皓星社)の仕掛人でもある中相作さん(http://www.e-net.or.jp/user/stako/)、そして、大阪で「建築・美術・日常」を三本柱に、スピード感にあふれる本づくりを行なっている編集出版組織体 アセテートhttp://www.acetate-ed.net/)の中谷礼仁さんという3人への取材をベースに、「出版」についてのぼくの考えをまとめたモノだ。三者三様の出版活動をぼくなりの見方でつなげてしまったコトを、当の3人がどう感じられるのかは判らない。でも、ぼくとしては、「本とコンピュータ」の編集者・河上進としてやってきたことと、南陀楼綾繁としてやってきたことを、ようやく最後の最後に結びつけることができたように思う。その点で、執筆者は河上になっているが、これは南陀楼としての仕事でもある。


ちなみに、アセテートは9月に、建築家・鈴木了二氏が行なった「金刀比羅宮プロジェクト」のエスキースノートを一冊にまとめ、『JUL.2001 - JUN.2004 Ryoji SUZUKI Architect』(仮)として刊行する予定だ(http://www.acetate-ed.net/bookdata/007/007.html)。「建築を志す者におくる、最も近い迂回の書」というコピーもいい。中谷さんのつくるキャッチフレーズは、いつも扇動的で色気がある。また、25日に知ったのだが、『子不語の夢』は日本推理作家協会賞にノミネートされており、残念ながら落選したそうだ。中さんは「私にはまだ『江戸川乱歩著書目録』でゲスナー賞を受賞するという望みが残されております」と書いているが、中さんの仕事は、たしかに優れた書誌や出版関係書を表彰するゲスナー賞にふさわしい(ついでに云えば、前回「本の本」部門で銀賞を受賞したのは、松田哲夫著・内澤旬子イラスト『印刷に恋して』晶文社、でした。連載時の担当はワタシメです)。


コレで季刊の最終号もほぼ終わり、編集室の解散にともなう話し合いをする。ココから離れる日が近づいている。目先の仕事に追われて、なかなか動けなかったのだが、いよいよ今後の食い扶持を確保するために走らねば。仕事場の本も片づけなきゃならないし、ユウウツ。そんな気分を反映してか、夕方から土砂降りだ。傘を持ってなかったので、雨に濡れつつ走って坂を降りて、スーパーで105円の傘を買う。そしてタクシーで春日まで。


BOOKMANの会の会場である〈寿和苑〉の前まで来たら、メンバー数人が立ち尽くしている。管理人が不在で、門も閉まっているという。いつもキチンと対応してくれているのに、こんな雨の日に限ってねえ……。どこか喫茶店でやることにして、茗荷谷方面に歩くも、どこも不適当で、けっきょく駅の上にある〈ジョナサン〉に落ち着く。わりと少人数なのでかえって助かった。今日の幹事は柳瀬徹くん。将棋好きな彼の趣味を反映して、某大手出版社の山岸さんをお迎えして、おハナシを聞く。将棋を取り上げるジャーナリズムやライターが、「盤上」(将棋という競技そのもの)の魅力を論じることをせず、棋士のパーソナリティやゴシップを書くことでごまかしてきた、と山岸さんは怒る。たしかに、新聞の将棋欄の「観戦記」はいかにいい加減であるか、資料として配られたコピーを見てよく判った。この会のメンバーでは、将棋を知っているのは柳瀬くんの他に魚雷さんぐらい。でも、山岸さんの話を、各自が別のジャンルやテーマに置き換えて、興味深く聴いたようだった。今回からメンバーが持ち回りで幹事をつとめ、自分の企画で進めるという形式に変えたのだが、この調子なら大丈夫、と思った。


いつもの〈さくら水産〉に席を移して、二次会。旬公の写真とモクローくんのイラストが載った『薔薇族』復刊第二号をセドローくんに見せたり、知り合いの編集者・堀内恭さんがやっている「入谷コピー文庫」(限定15部発行)のマイナー女優インタビューを濱田研吾くんに見せたり。この二週間ほどいろいろあって、あまりヒトと会わなかったので、くだらないハナシに飢えていたようだ。ウチに帰ったのは12時半。


そういうワケで、お久しぶりですが、日記を再開します。休み中に、ぼくのことに触れてくださった方に感謝します。とくに、「Web読書手帖」(http://yotsuya.exblog.jp/1948764)でいろいろ心配してくれた四谷書房さんや、「この店で買った本」リンク集(http://taikutujin.exblog.jp/1956385)をつくってくれた退屈男さんに、ありがとう。まだ落ち着かない日々が続いているので、いままでみたいに毎日は更新できないかもしれません。でも、読んでくれるヒトがいるうちは、なんとかやっていけると思います。