古本市・古本講義・古本パーティー

朝、洗濯などを済ませ、山手線で池袋へ。水曜日から開催されている「池袋西口公園古本まつり」へ。初日は雨のため中止だったが、今日はイイ天気。広いスペースをいっぱいに使っており、数軒ごとにひとつのシマになっている。シマからシマへと渡り歩くカンジ。土曜日にしては客は少ないか。ゆっくり見られてイイのだけど。野外で古本を見るのは、とにかく気持ちがイイ。売る側も、屋内のと較べて、全体にゆるい、というか、アットホームな雰囲気が漂っている。


オモシロかったのはアナウンス。本部席でずっとマイクを握っているおじさん(名札見に行ったが見えなかった)がいて、丁寧に説明してるのだが、ときどき余計なコトも云ったりする。それで本を見ながら耳はそっちに集中していたら、そのうち、お客さんの探求本を会場の書店にマイクで知らせる、というサービスをやりはじめた。「はい、セイワ辞典ありますか、スペイン語の辞書(西和辞典)ですよ」「あと、六法全書を持っている店は本部席まで」などと云うと、ほうぼうから本を持って駆け寄ってくる。どっちが早いか競争までして。コレは楽しい。書名が判らないものもある。「最近話題になった本で、父親が娘に刺青をして……」というと、「あっ、判りました!」という声が上がって、若いアンちゃんがその本を持って掛けてきた(こちらからは書名は見えず)。その後も、宮部みゆき模倣犯』とか、誰だかという画家の図録とか、いろんな本を求めるアナウンスが。すぐ見つかるものもあり、何度もアナウンスされるものもあり。


あまり時間がなかったので、じっくり見なかったが、それでも何冊か買う。〈朝文堂書店〉で、奥成達『怪談のいたずら』(KKベストセラーズ)100円、〈國島書店〉で、佐藤嘉尚『ぼくのペンション繁昌記』(集英社文庫)100円ほか、〈東京書房〉で、小田実開高健『世界カタコト辞典』(文春文庫)など5冊で300円。このコーナーはなかなかヨカッタ。〈古本 遥〉で、河野典生『群青』『陽光の下、若者は死ぬ』(角川文庫)各367円。柳生弦一郎のカバーがカッコよすぎるぞ!


そのあと〈ヴァージンメガストア〉に入るが、丸井の地下にあった時期と違い、狭くなったのはしょうがないが、あまりにやる気のない品揃えに呆れる。適当に歩いて、中華料理屋でチャーハン。〈芳林堂書店〉コミックプラザ(本店は閉店したがココだけは残っている)で、田中圭一『鬼堂龍太郎・その生き様』第1巻(集英社)、サラ イネス『誰も寝てはならぬ』第3巻(講談社)、『comic新現実』第4号(角川書店)を買う。丸の内線でお茶の水へ。〈ディスクユニオン〉で、フィッシュマンズのベスト2種[空中][宇宙]、キリング・タイムの[IRENE][Filling Time with Killing Time]、マザー・グース[インディアン・サマー][パノラマ・ハウス]を買う。あー、見事に過去の音源ばっかりだ。


古書会館、今日は書窓展。駆け足で回り、上司小剣『U新聞年代記』(中央公論社、昭和9)3000円を買う。函があるのかもしれないが、裸本。ジャーナリスト・作家が多く登場する「モデル小説」としてよく紹介されるので、一度読んでおきたかった。2階で開催している「古本屋の書いた本」展にあわせて、7階でトークショーが行なわれる。上にあがると、客層は平均年齢50代以上。八木福次郎さんと青木正美さん、小林静生さんの予定だったが、小林さんは急病で休み。はじまると、司会(司書房の中野さん)が、では「この目録に沿って」と云い、青木さんが「では口絵ページの◎番をご覧ください」と云うので、ずっこける。大学の講義じゃありませんことよ。じっさい、その目録を持ってきてないヒトも多く、隣のヒトはずっとぼくの持ってきたのを覗き込んでいた。話そのものは初めて知るコトが多く勉強になったが、講義調なので長時間聞いているのはツライ。目録に自分が持っている本を記号で書いていったら、100冊近くになった(あとで海月書林さんに見せたら、「ナニやってるんですか」と笑われた。だってヒマだったんだもん)。あと、この目録がいかに使いにくいかもよく判った。たとえば、高知のタンポポ書店の『古本屋タンポポのあけくれ』を引こうと思ったら、書名でも店名でもなく、著者の片岡千歳で引かなければならない。


山王書房関口良雄さんの話になったとき、青木さんが、「今日は奥さんがいらしています」と紹介する。と、ぼくの三つ右に座っていた上品な女性が立ち上がって礼をされた。この方だったのか。ほかに、上笙一郎さんやアン・へリングさんがコメントしたり、いちばん前の老人二人が壇上を無視してずーっと喋ってたり(なんでスタッフが注意しないの?)と、いろいろあり、終ったら4時10分。関口さんの奥さんにご挨拶をと思ったら、前に座っていた山口書店のご老人(三島由紀夫文献の蒐集で有名だと、今日知った)が奥さんに話しかけられ、そのままハナシがつづく様子だったので、諦める。今度、手紙を出そう。2階の展示をざっと見て、外に出る。


ドトール〉で休憩して、お茶の水の〈丸善〉で藤本和也さんと待ち合わせ。〈ミロ〉に入り、一箱古本市のスタンプラリーで使うスタンプを受け取る。消しゴムに彫ったもので、藤本マンガのキャラがひとつに一人ずつ、計12人揃っている。こんなに小さなサイズなのに、よくやってくれました。そのあと、スムース文庫『古本漫画』に入れるマンガの進行状況を聞く。……まあ、もう少し待ちますよ。藤本くんは、アイデアの段階でいろんなことで悩んでしまうらしく、どうすればその辺を突破できるかというハナシになる。そんなの判ったら、ぼくにも教えてほしい。藤本マンガは集団劇系と同棲系のふたつの系譜があるとぼくは思っていて、『古本漫画』のは後者なのだが、次は前者のカンジでガーッと突っ走る話を描いてほしいと思う。


書店を少し覗き、7時前に〈名舌亭〉へ。浅生ハルミンさんの最初の本の出版を祝う会。地下の座敷に行くと、ぼくが一番乗りだった。待つうち、みんなが揃う。主賓の猫ストーカー・浅生ハルミンさん、岡崎武志さん、セドローくん、紀伊国屋書店の大井さん、アクセス畠中さん、少し遅れて海月書林の市川さんの総勢7名。ハルミンさんには花や本のプレゼント、本へのサインや色紙のリクエストが殺到。しまった、なんにも持ってこなかったなあ。例によってハナシはあっちこっちへ。ハルミンさんが本を買った人を追跡して猫ストーカーから読者ストーカーになるとか、畠中さんが神保町を発信地にラジオ局を開設するとか(ホリエモンには失望したそうだ)、温厚で知られる岡崎さんの「ダークサイド・オブ・岡崎」を暴露しようとか、今朝配信された「早稲田古本村通信」の『古本道場』特集で、山本善行さんが「ああ、私もはやく弟子がほしい!」と書いてるが、きっと弟子の買ったイイ本を取り上げる大人気ない師匠なのに違いないとか。閉店だと追い出されてからも、きっちり二次会へ行き、11時半に解散。


西日暮里に着いたところで万歩計を見ると、9500歩。今日はたくさんの荷物を抱えてけっこう歩いたハズなのにナンか納得いかない。もう少し歩くかと思ったとたん、12時になってカウントがゼロになってしまった。ウチに帰り、布団を敷いていると、旬公が帰ってくる。以前、ゲイ・ミニコミを送ってくれた一文字カルトさん(現・影坂狩人さん)の誕生日と、彼が関わっている『薔薇族』の再刊を祝うパーティーが新宿が行なわれ、そこに顔を出していたのだ。とても楽しかったらしい。『薔薇族』の復刊号(メディアソフト)ももらってきたが、海野弘さんが「薔薇の騎士たち ホモセクシャルとアーティスト」という文章を寄稿されている。さすがだ。旬公のハナシを聞いているうちに眠くなって、寝る。