絶賛値下げ中

今日は自宅で仕事。午前中、郵便局に行ったついでに、〈古書ほうろう〉に寄る。「古書モクロー」はこれまで値下げをしなかったが、しばらく経っても動いてないものを数日前にちょっと値下げしてみた。そしたら昨日、いきなりそれが売れていた。やっぱり値ごろ感というのはあるのだねえ。味を占めて、その場で3、4冊値下げしておく。さて、どうなるか。


彷書月刊』5月号が届く。特集「ラジオのひろば」。ぼくの連載、今回は「書物サイト」に関係なく、岡山−出雲古本の旅の模様を。書庫で働くセドローくんの写真も載ってるよ。「ハルミン&ナリコの読書クラブ」では、浅生ハルミンさんが新刊『私は猫ストーカー』について書いている。

文章を書くということについて、小学生だった頃からずっとしずかに思い続けていたことがあります。女友達たちで集まった時、私が感じた事を話すと私以外の友達は顔を見合わせていっしゅん間を置き、他の話題に移るということがよくあります。(略)また、それと同じことを文章で書くと、不思議なことにもっと向き合って読んでくれるようになったのです。私の脳味噌の中にあるものは変わらないのに、文字だと面白く読んでもらえるのはなぜなのか考えるのは身体に悪い気がしますが、今このような場があって、しかもお金までもらえることが、とてもうれしい昨今です。

おお、コレはハルミンさんの「文筆家宣言」ではないか。「私の脳味噌の中にあるもの」を、もっとイロイロ見せてほしい。そういえば、編集後記で夷さんが、ハルミンさんに「2冊目は小社よりの刊行、よろしくお願いします」と書いてるが、コレは、「彷書月刊」サイトのプロフィール欄に載っている、「現在小誌に連載していた、『浅生ハルミンの読書日記』の単行本化作業に奮闘中」のことなのかなあ。伝言板広告には、前号に続き、一箱古本市の広告を。皓星社発売の『トスキナア』創刊号の広告、「香具師社会主義運動」という文章が読みたい。


仕事しながら、木村千歌『パジャマ・デート』(講談社)を読む。身も蓋もなくほのぼの系だが、細かい観察眼が伊藤理佐にも通じるか。眠るハナシと食べるハナシがよく出てくる。読んでたら、なんかパスタが食べたくなり、ベーコンとニンニクの芽、ホワイト舞茸を塩、ショーユで味付けしたパスタをつくる。旬公が出かけてるので一人前だが、少ないほうがうまくできる。けっこうウマかった。そのあと、ちょっと眠ってしまった。


半分ぐらい読んでいた、小沼丹風光る丘』(未知谷)の残りを読む。明朗な青春小説。登場人物が全員魅力的だ(とくに、大食いの杉野と、その親戚のキメツケの激しいばあさんが好き)。後半に登場する主人公の恋人もいい感じ。もし当時に映画化されていたら、きっと名作になったことだろうに。ラスト直前の次の一節には、ちょっとホロリときた。

合唱があまりにも楽しかったので、終点についたとき、一同はもっとバスに乗っていたい気がした。車掌も残念そうな顔をしてこう云った。
「もう終りだなんて、つまりませんわ」
すると、中年の運転手はにこりともせず云った。
「ものごとは、何でもそのぐらいのところがいいんだ。余韻があると云うもんだ」


この作品が、1968年に一度単行本化されたきりで、著作集にも入らず文庫にもなってないのは、もったいなさすぎる。それを読めるようにしてくれた未知谷はエライ(でも、解説かしおりぐらい付けてほしかった)。


6時過ぎに出て、大塚へ。〈ブックオフ〉で、とがしやすたか『私立探偵村田三郎』『めざせ!!プロゴルファー金太郎』第1巻、色川武大『恐婚』(文藝春秋)、小林信彦『私説東京放浪記』(筑摩書房)、近藤恵『ミニコミのつくり方』(情報センター出版局)が、どれも105円。ぼくはあまり丹念に棚を見るほうじゃないので、ブックオフで掘り出し物といえる収穫を得たためしがあまりないのだが、昨日、今日はナカナカだった。少しはヒキがつよくなったのか? 


P社で打ち合わせ。チェコ人で演劇史研究者のペトル・ホリーさんに、翻訳をお願いするコトになった。相変わらずデッカイな、このヒトは。〈あゆみブックス〉で、かんべむさし『理屈は理屈 神は神』(講談社)を見つけて買う。宗教体験を書いたノンフィクションらしい。へえー。イラスト(平田利之)と装幀(城所潤)がイイ。〈世界飯店〉で、ビールと豚バラそばを食べて、ウチに帰る。今日は万歩計を忘れて出てしまったが、さほど歩いてないので3000歩ぐらいだったろうな。


【今日の郵便物】
竹内栄美子『批評精神のかたち 中野重治武田泰淳』EDI
第一部には「アナーキズムからアヴァンギャルドへ――大杉栄中野重治村山知義――」が。第三部には、中野重治の全集未収録文がいくつか収録されている。