古本王国・岡山を満喫のち遭難

kawasusu2005-03-24

3日ぶりの更新です。いろいろあって日記を書くヒマがないうえに、実家の電話回線でダイアルアップしていると、大容量のスパムメールのせいで、メールがダウンロードできず、不便極まりない。仕事の連絡をするのが精一杯だった。今回の旅は、次号の『彷書月刊』で書くつもりですが、簡単にメモしておきます(といいながら、長くなってしまった)。

けっきょく、1時間しか眠れず。早めに出て、東京駅の新幹線口で、イチローくん、セドローくんと待ち合わせ、8時50分ののぞみに乗る。斜め前の座席で、子どもが騒いでいる。泣いているならしょうがないなと思うのだが、このガキはなんか興奮していて、やたら絶叫するのである。それを止めようともせず、ピコピコ音を出してスーパーマリオに興じる両親。こんなとき、塩山さんの霊が乗り移ってくれたら、即座に怒鳴りつけ、有無をいわさずヤメさせるんだけど……。


岡山に12時過ぎ着。けっこう寒い。イチローくんがレンタカーを借りるときに、営業所のオヤジに「山間部が凍結する可能性はありますか?」と聞いたら、「大丈夫ですよ」というので安心(が、のちにとんでもないウソだと判る)。途中の駐車場に止めて、「岡山シンフォニービル」の古本市へ。一階の小スペースでやっているが、吹きさらしなので恐ろしく寒い。場所は狭いが、本が二重三重に置かれているし、戦前の本が多く、中身は濃い。ただし、値段のほうも相応で、欲しいと思って手に取るが、値札を見て棚に戻してしまう。買わなかったもの、佐藤巌『新聞遍路』(千葉亀雄、松崎天民序文)2000円、『ルンペン社会の研究』1万2000円。買ったのは文庫本。斬馬剣禅『東西両京の大学』(講談社学術文庫)、石川達三『最近南米往来記』(中公文庫)、佐藤忠男長谷川伸論』』(中公文庫)、阪田寛夫『わが小林一三』(河出文庫)など7冊。いずれも100〜250円と安い。最後のは数日前に亡くなった著者への追悼の意味で。


腹が減ったので、裏通りのほうでメシ屋を探す。以前からこの辺りに来ると、岡山独特のカツ丼(デミグラスソースがかかっているヤツ)を食べていたので、二人にもそのハナシをしていたら、〈やまと〉という店が見つかった。寂れたカンジの店なのに、ナカに入ると満員でビックリ。カツ丼を頼んで回りを見ると、みんなラーメンと焼き飯とか、カツ丼(小)とラーメンとか組み合わせで食べている。カツ丼もウマかったが、ラーメンにもちょっと未練が残った。そのあと、〈南天荘書店〉で『胡桃割り 寺島博之詩集』(新日本文学出版部)を見つける。跋文は菅原克己。そういえば、来週ある「げんげ忌」(菅原克己をしのぶ会)の幹事は寺島さんだった。値段がないので聞いてみたら、500円と。ありがたく買う。


その裏にあると、野村宏平『ミステリーファンのための古書店ガイド』(光文社文庫)と書いてある〈リトルハウスまんが王国〉に行くも、看板だけ残して、ナカは空っぽだった。閉店してしまったらしい。その先の〈古本ハウス〉は、同書に「戦前の大衆小説が最近の一般書に混じって置かれている」とあるが、マンガとエロ本だけで、一般書は影も形も見えず。同書は紹介されている店も地図も充実しているが、「二〇〇四年秋に営業を再確認」したあとに閉店したり、品揃えを変えたりした店は多いのだろう(とくに新古書店系は動きが激しそう)。ちなみに、同書で「山陰随一の本格派古書店」と紹介されている島根県松江市の〈ダルマ堂書店〉は、この日記で触れたとおり、昨年末に閉店している。


岡山の街ではもう一軒、〈烏城文庫〉に行きたかった。ぼくはこれまで2回行っているが、住宅街のフツーのウチの玄関を開けると、その土間と上がり口の部屋に本が並んでいるのだ。戦前の小説、評論、随筆のいい本が多く、そのワリに値段が安かった。あのお爺さんは元気かなと、電話してみたら、娘さんらしき人が出て、「移転しました」と云う。「古本屋さんはやってますか?」と聞いたら、店はやってないとのこと。ぶっきらぼうでハナシにならないので、本人に代わってほしかったが不在。二人を連れて行きたかったのだが、残念。


雨が降り出してきた。いよいよ本日のメインである〈万歩書店〉ツアーへ。まずは市内(久米)にある本店へ、と思ったら、カーナビ見てるのに目的地からずれて、南のほうに行ってしまった。迷ってるときに「本」という看板を発見。『ミステリーファンのための古書店ガイド』にも載っている、〈ブックスフロンティア〉だ。入ってみて驚いた。奥が見えないほど広い。棚と棚の床には、レコードやおもちゃがじか積みされている。大ざっぱに分類しているが、途中で力尽きたのか、完全に混合している棚もある。これはナニかあるかも。セドローイチロー、ぼくはすぐさま散開。掃討作戦を開始。30分後、一通り見終わって、数冊をレジに持っていく。「値札のないのは150円です」という表示のある棚で、『わんだーらんど通信』のひさうちみちお特集や吾妻ひでおのマンガを見つけたのだが、それを見て、店員が「これは未整理のものだから……」と云いはじめる。もっと高めにつけたかったらしい。未整理もナニも、店全体が未整理みたいなもんだろが! 値段を訊くと、前者は500円、後者は300円と。買えないコトはないが、なんだか応対のしかたがイヤで、このまま従うのは業腹なので、ヤメておく。買ったのは、『タモリのカセット面白術』(21世紀ブックス)500円など3冊。


ココまで来たら、万歩の奥田店のほうが近いというコトになり、そっちへ。広い店だが、最近のマンガと文庫が中心。それでも、『漫画の手帖』の初期の号(飛び飛びで)10冊3000円というのを見つけてしまった。そして、5キロほど走り、今度こそ〈万歩書店〉本店へ。気持ちが急いていたために、駐車場に乗り入れる前にシートベルトを外してしまい、レンタカーのアラームに注意される。二人に大爆笑された。さて、入ってみると、たしかに迷宮だ。あまりに広いので、ジャンルごとの分類とは別に「◎丁目」という表示がある。あと、通路の上にスピーカーが設置されていて、店内連絡をこれでやるのだが、すごい音量なのでビクッとする。とにかくすごい量で、たとえば戦前の実用本だけで百冊単位で並んでいる。うーん、スゴイ。だけど、その一方でだんだん気分が醒めていった。なるほど量はすごいが、本はあまり整理されていないし、値段もはっきり云って高い。以前から探していた本が何冊か、あっさり見つかったのは嬉しかったが、これだと買えないよ。1時間ぐらいいたが、買ったのはマンガも含め7、8冊。細野晴臣『レコード・プロデューサーはスーパーマンをめざす』(徳間文庫)150円、陳舜臣『神戸というまち』(至誠堂新書)250円といったところ。そのあと、倉敷店に行きたかったが、もう暗くなってきたのでパスして、総社店へ。ここはあまり見るべきものナシ。それでも、陳舜臣『崩れた直線』(廣済堂文庫)150円を見つける。コレで、陳舜臣のミステリものの文庫はコンプリートしたはず(単行本はあと2冊)。


腹が減ってきたが、なるべく先まで行っておきたいというイチローくんの意見で、高速に乗る。ところが、途中まで来たら雪がチラホラ降り始める。落合の近くでは、少し積もっている。「岡山で古本買ったあとで、交通事故で死んだら殉職扱いになるのかなあ」などと冗談云ってるウチはよかったが、すごい吹雪になってシャレじゃなくなってくる。それでもイチローくんが真剣に運転してるヨコで、ぼくとセドローくんは馬鹿話。蒜山を越え、米子に近づいたあたりで、ようやく雪がなくなる。よかった。そのあと、米子−宍道を高速で、そのあと国道を走り、出雲の実家に着いたのは10時半。そばを食べて、風呂に入り、明日の段取りを相談してから眠る。初日からハードだった。


セドローの割り込み日記》
ナンダロウ家は、お母さんがステキです。南陀楼さんはガンガン駄目だしされています。「煮しめたような服着て!」「もう本は買わせん!」ステキだ!


*写真は、万歩書店・本店。ボケてますが。