「台湾のモクローくん」に会う

朝7時半に起きて、6階のレストランへ。バイキングだが、さすがに高級ホテル。中華、洋食と両方あり、どちらも料理の種類がとても多い。一通り見て回るだけでも、おなか一杯だ。食べ終わって、ロビーで待ち合わせ。午前中は日本人だけで外に出る。


タクシーで●(牛+古)嶺街(クーリンチェ)へ。ここは数十年前には多くの古書店が並んでいたそうだが、いまでも6、7軒が営業している。静かな、古い街である。前にぼくが連れて行ってもらったのは〈人文書舎〉だけだったが、今日はほかに2軒ほど覗いた。通路まで本がぎっしり積み上げてあり、店主が外に座っている店もあった。あと、切手を売っている店もあった。「燐票?」と紙に書いて訊くと、「ないない」と云われたが。


その後、汀州路へ。ここでも古本屋を探すが、見つからず。諦めて裏道に入り、「素食」という看板がかかった店へ。ベジタリアン料理がいろいろ並んでいて、各自が好きなものをとるシステム。会計はどうするのかと思ったら、その皿をハカリに載せて勘定する。量り売りだ。店の人に古本屋の場所を聞くと、店にいたお客さんがわざわざ連れて行ってくれえる。かなり遠くまで歩き、店を発見。隣り合った2軒を覗く。


そこからタクシーで、台北国際ブックフェア(TIBE)の舞台である「台北世界貿易中心」へ。会場はあちこちでまだ建て込みの真っ最中。上からその模様を眺めつつ休憩。1時半から記者会見が開始。レックスやテーマ国の韓国のヒトたち、ツノさんが壇上に上がり、順に挨拶。英語で聞ける同時通訳の機械を渡されたが、早すぎてなにを云っているのか、聞き取れず。このときだけでなく、今日は一日中、「人並みに英語が話せたらなあ」と思うことしきりだった。台湾と中国と韓国と日本のヒトが同じ話題を話すために、英語が共通のツールになっているコトは間違いないのだ。


その後、「ゴールデンバタフライ」賞の選考会。台湾の単行本、雑誌のうち、デザインが優れている29点がエントリーし、それを6つのカテゴリーに分けて、1つずつ選んでいく。写真を撮りながら、ぼくならこの本を選ぶ、というアソビをやっていたが、半分しか当たらなかった。なかなか魅力的な本が多かった。そのあと、選考委員たちと食事。創作料理を出す日本料理屋で、台湾まで来てわざわざ……と思ったが、「ドコが日本料理やねん」と云いたくなる料理ばかりで、かえって楽しめた。


終ってから、ほかの人と別れ、遠流出版の林皎宏さんの宅に行く。傳月庵(フ・ユエアン)というペンネームで、『紙魚的旧書店地図』という本を書いている古本好きだ。ウチに入ると、本棚がお出迎え。日本で出た古本関係の本が並んでおり、その中に、山本善行『古本泣き笑い日記』があった! 山本さん、台湾でも読まれてますよ。あと、魯迅の初版とか、岩田専太郎(好きなのだとか)の画集とか、『あしたのジョー』の原画復刻版とか、いろいろ出てくる。古典籍からサブカルまで幅広いところが、いいなあ。


最初、ほかにゲストがいたし、通訳がいなかった(あとから韓さんが来てくれた)ので、思うように話せなかったが、しばらく経つウチに打ち解けて、いろいろ古本関係のハナシをする。「一箱古本市」の計画を話すと、オモシロがってくれた。傳月庵さんは、「神保町は高級っぽいので近寄りがたい。下町の古本屋がイイ」というので、「不忍ブックストリートへようこそ」と云っておく。「モクローくん通信」のバックナンバーを差し上げて、記念撮影。彼の奥さんが「あんたたちは、体型も顔もそっくりだ」と笑っている。ホント、他人とは思えない。「台湾のモクローくん」と命名した。


再会を約して、12時前に辞去。ホテルに着くと1時前だ。会うヒト会うヒト、興味深く、話したいことは山のようにあるのに、思うように話せないもどかしさよ。だから、よけい疲れてしまった。