ブックフェアは懐古の香り

朝食に出ようと思っていたが、ギリギリまで眠ってしまった。朝9時から会場へ。ブックフェアのオープニング。大統領がやってきて、挨拶する。報道陣が詰め掛けて、大統領が移動するたびに、次の撮影ポイントに移動するため走り回る。ぼくも真似して、デジカメ持って走ってみました。


そのあと、会場を見て回る。日本、韓国、台湾、中国の本を展示するコーナーは、並べ方になかなかセンスがあった。しかし、ガリ版刷りのミニコミ『謄写技法』や、トムズボックスのフリップブックがガラスケースに入っているのは、妙な感じ。出版社のブースでは、どれも割引で本を売っている。荷物になるので、買わないぞ、と思っていたが、手にとってしまうと欲しくなる。


今回は趣味に徹して、『珈琲時代 台湾珈琲館百年風騒』『醸造時代 1895〜1970 台湾酒類標貼設計』(遠足文化)、『台湾古董雑貨珍蔵図鑑』(果実)などを買う。いずれも、近代化以後の台湾の文化を図版とともに見せる本だ。この手の本はアジアでも前からあるが、コレクター向けだったりデザインのセンスが悪かったりした。しかし、今日買った本は、マニア心を満たしながら(『醸造時代』には酒ラベルの原寸大復刻が挟み込まれている!)、デザインがよくてそこそこ売れそうだ。バブルの頃、日本で根を下ろし、その後も自分の気分として続いている懐古(レトロ)趣味が、台湾の出版界に根を下ろしつつある様子がうかがえた。ぼくがやりたいコトは、こういった、「時代の気分」を一カ国単位ではなく、アジア各国で確認し、共有できる部分をカタチにしていくことだ。どういう見せ方になるかは、まだ判らないのだけど。


1時半。近くの出版社の会議室で、韓国の作家・李文烈さんにインタビュー。しかし、時間が短かったためと、通訳が韓国語→中国語で一人、中国語→日本語で一人というリレー式だったため、思うようには聞けず。ここでもコトバの壁を感じる。そのあと、マンガ中心の第二会場、児童書中心の第三会場にも行ってみる。また、隣にある「台北101」という世界最大(いまのところ)のビルに入っている書店〈ページワン〉にも行く。シンガポールの資本で、店長は紀伊國屋出身の日本人だとか。そのせいか、店内には日本語の曲がかかっている。どっかで聴いた声だなあと思ったら、小島麻由美だった。おいおい、これじゃ〈ビレッジヴァンガード〉と同じじゃないか。この店、棚の配置がうまく、洋書に関しては日本の書店なんか比べ物にならないほどだが、中国書に関しては〈誠品書店〉に軍配を上げたい。


5時からツノさんの講演。聴衆は70〜80人ぐらいか。ちょっと高度すぎるのではと心配していたが、みんな静かに聞き入っていた。終ってから、台湾の美術出版社『漢聲』の黄永松(ファン・ヨンソン)さんが「すごくいいスピーチだった」とホメてくれたとのこと。荷物をホテルまでいったん持ち帰り、レセプションの会場であるグランドハイアット・ホテルへ。どうせ立食式のパーティーだろうから、誰でも入れるとタカをくくっていたら、200人ぐらいが参加し、席がぜんぶ決まっていて、随行者のぼくは座れなくなりそうになった。しかし、なんとか席を用意してもらう。そこで、「ゴールデン・バタフライ」賞の受賞式があった。


九時過ぎにホテルに帰り、ツノさんの部屋でちょっとハナシをする。メールを見たら、また何人か「一箱古本市」の店主希望者が。ちゃんと計算してないけど、もう70人近くになったのではないかな。明日、東京に帰ってから、いろいろ進めなければ。