ノーギャランティー・ネットワーク

朝、起き上がるのがツライ。仕事場に行き、夕方までに記事2本を校了。そのほか、台湾行きの打ち合わせなど。だけど、まだ1本が残ってる。7時前に急いで出て、中野へ。かなり久しぶりに〈タコシェ〉へ。藤本和也さんが先に来ていた。18日まで開催中の、藤本和也フェアを見る。藤本さんがいろんな機会に描いたイラストをまとめてコピー製本した、「藤本和也イラスト大全集」。これが11冊特製ケース(藤本さん曰く「100円ショップで購入しました」に入って、たったの1600円! 安いなあ。じっさい、初日に一度売り切れ、その後、少しずつ持ってきてるらしい。タコシェの中山さんに「もっと持ってきてください!」とハッパを掛けられていた。藤本さんの写真とイラストを組み合わせた「ファースト・アルバム」、餅屋ブック製のトート、旭堂南湖の2冊目の同人誌『世界に一つだけの講談』などを買う。あと、『ロカンボ』の中島武明氏の新しい(といっても見かけはホトンド同じ)ミニコミ『バクガン』も買う。


サンモールのパスタ屋に入り、初の商業出版を祝って、ビールで乾杯。イラスト集の最新版と、単行本のポストカードをもらう。とてもいいデザイン。今度出す、「スムース文庫」の一冊『古本漫画』(仮題)で、マンガ(あるマンガのパロディ)を描いてもらうことになったので、その打ち合わせ。この企画は、古本や古本屋の出てくるマンガに関するものだが、最初は「描きおろしマンガは1、2本だろう」と思っていた。それで、先行して、うらたじゅんさんと勝川克志さんにお願いし、かなり以前に原稿をいただいていた。他は文字モノを中心にまとめようと考えていた。しかし、今年に入って、ダメもとでお願いしてみたところ、全員が「マンガを描きます」と答えてくれた。目下の内容は、以下の通り。


うらたじゅん「新宿泥棒神田日記」(16p)、勝川克志「目白の貸本屋」(8p)、森元暢之(6p)、藤本和也(8p)、浅生ハルミン〔画〕+向井透史〔作〕(6p)、濱田研吾(2p)、林哲夫(2p)、岡崎武志(2p)、内澤旬子(2p)、そして巻末座談会。森元さんはマンガの他に、イラストも数点描き下ろしてくださる。なんとまあ、豪華なメンバーであるコトか。夏には発行したいと思っている。


こうやって、皆さんが描いてくださるのはホントに嬉しいのだが、全員ノーギャラというのは編集者として心苦しい限りだ。もちろん、みんな、決して豊かな生活をしてるワケではない。藤本さんも去年は商業誌からのマンガの注文が一件もなく、同人誌ばかりに描いている。「ノーギャラでも面白ければやっちゃうんだよねえ」と藤本さんは笑うが、それはぼくも同じ。問題は、多くの場合、カネのない人はカネのない人に頼む傾向がある、しかもお互いに頼みあう、ということだ。そうやって、「ノーギャランティー・ネットワーク」ができていく。それは楽しいし、ワクワクすることだけど、このネットワークの外からの仕事が適度にないことには、生きていくのはしんどいよなあ。


……と云いつつ、雑談しているウチに、藤本さんにもうひとつ、ノーギャラ仕事をお願いしてしまった。ごめん。帰りの電車で、旭堂南湖の同人誌を読む。一冊目に増してオモシロイ。小説は芦辺拓、マンガは藤本和也森元暢之。ほかに、藤本さんが大学で同じサークルだったという縁で、ずーっとタダで描いてきた南湖さんの講談会の「チラシギャラリー」がスバラシイ。後輩で頼む側の南湖さんのほうがイバっているのが、すごい。ココにも「ノーギャランティー・ネットワーク」が。ちなみに、私の知る限り、関西最大の「ノーギャランティー・ネットワーク」は西明石周辺に存在する。


ウチに帰り、〈古書ほうろう〉で「不忍ブックストリートMAP」の地図の印刷や、イベントについて話し合い、ウチでは旬公とポスターのことなどを話し合う。そのほか、参加希望者から来たメールに返事を書いたり、送られてきた「プロフィール」(名前、屋号、出す本の傾向、メールアドレス、質問・意見の5つです。まだの方はお早めにメールしてください)を整理してスタッフに送ったりする。ひとつひとつはめんどくさいけど、コレも「面白ければやっちゃう」のである。「本コ」の仕事のほうは、明日が正念場。


最後に、本日の「幼児にウケるモクローくん」。オンライン古書店〈町屋堂〉(http://www.fiberbit.net/~machiya-do/index.html)の石村さんより。「昨秋、岩手に行く機会がありまして、『ナンダロウアヤシゲな日々』を新幹線の中で読もうとしたら、わが子に、カバー下の4コマ漫画を見つかり、20回ぐらい、音読させられました。モクローくんはキャラとして子供に通じているようです」。嬉しいねえ。


【今日の郵便物】
★『レモンクラブ』3月号
今回の書評は、岡留安則『「噂の眞相」25年戦記』(集英社新書)。塩の字が「凡人回想録」で、年末の「嫌われ者忘年会」のコトを書いていたが、わりと淡々としていて不気味。『COMIC Mate』のほうで毒をまかれるのだろうか?