アレコレ観てしまう

夜中、あまり眠くないので、テレビで映画《鉄道員》(1956)を観る。「ぽっぽや」じゃないよ、ピエトロ・ジェルミ監督・主演のイタリアのネオ・レアリズモ映画です。以前に一度観ているが、家族がそれぞれ不幸になっていく様から目が離せない。けっきょく終りまで観てしまった。寝ようかと思って、「はてなアンテナ」を見ると、おお、旬公が自分の日記(http://d.hatena.ne.jp/halohalo7676/)をアップしている。てめえ、ダンナにメールも出さずに日記の更新かよ、と思ったが、そのあとメールが来た。まあ、なんとか無事にやってるようである。


10時に起きて、仕事場へ出かける。連絡を取ったり、資料を読んだり。『レモンクラブ』の原稿も仕上げて送る。途中、佐藤助教授から電話が入り、Nさんは昨日入院せずにウチに帰ったとのこと。夜には、「彷書月刊」の皆川さんから、一日で回復して古書展会場に来ていたと報告。いやー、よかったよ。無事だったから名前を書いてしまうと、Nさんは西秋書店の西秋学さんです。大事にしてください。夕方、新宿の〈ジュンク堂書店〉へ。目的の本を買って、仕事場にとんぼ返り。7時過ぎまでやって帰る。


〈はやしや〉で、ビールとサーモン刺し。椎名誠『さらば国分寺書店のオババ』(新潮文庫)を読む。単行本では何度も読んでいるが、文庫版は初めて。嵐山光三郎の解説は名文だと思う。岡留安則『「噂の眞相」25年戦記』(集英社新書)で、この本に『噂の眞相』創刊パーティーのことが書かれているとあったので、読み直してみた。マスコミ業界人の態度に怒り心頭になっている章があるのだが、それがまさにその創刊パーティーのコトだった。いろいろ発見あるなあ。


ウチに帰り、〈デリー〉のカレーを食べる。めちゃくちゃ辛い。今日からはじまる、《不機嫌なジーン》というドラマを観る。オフビートなラブコメディといったところ。演出や映像(アニメとか)で変わったことやろうとする姿勢がある。けっこうオモシロイかな。ぼくはここ数年、連続ドラマはほとんど最後まで見たことないんだけど(例外は《白い巨塔》)。竹内結子松嶋菜々子との区別がつかないのも、致命的である。


そのあと、レンタルのDVDで、山下敦弘監督《リアリズムの宿》(2003)を観る。つげ義春の旅ものマンガのわびしさ、いじましさ、いたたまれなさが、いちばんふさわしい監督によって映像化された。傑作。最初、田舎の駅舎の前で、主人公の二人(自主映画の監督と脚本家)が立ってるシーンからもう笑えるもんなあ。見ているあいだ、見につまされて、画面に叫んだり、立ち上がってしまったりするシーン多数。これはかえって、映画館で観なくてよかったかも(笑いすぎる本は電車で読むな、と同じように)。終り近く、「東京に帰ったら、一緒に映画の脚本を書こう」と話すシーンには、ホロッと来た。突然現われては去っていく女の子もイイ。


もうひとつイイのは、この映画が鳥取県で全面ロケされていることだ。三朝温泉をはじめとする温泉や、昔からの街並み、鳥取砂丘などがふんだんに写っている。隣の県出身のぼくも、行ったことのナイ場所がほとんど(三人で商店街を歩くシーンは、鳥取市の商店街じゃないかと思うけど……)。よって、本作は山陰(鳥取・島根)がストーリーに出てきたり、ロケ地になっている「山陰映画」としても楽しめる。ちなみに、ほかの「山陰映画」を2、3挙げると、鳥取では、浜野佐知監督《第七官界彷徨 尾崎翠を探して》(1998)、島根では、野村芳太郎監督《砂の器》(1974)、錦織良成監督《白い船》(2002)などがある(《白い船》は未見)。ちょっとだけ、松江が出てくる中村登監督《集金旅行》(1957)ってのもある。他にもあるだろうから、ヒマを見つけて、「山陰映画」のコレクションに励みたい(ご存知の方は情報ヨロシク)。


ともあれ、コレまで観た山下敦弘の映画はまったくハズレがない。新作《くりいむれもん》もビデオが出たらしいので、観なければ。あと、《リアリズムの宿》のサイト(http://www.bitters.co.jp/yado/)を見たら、山下は宅録テクノの歌姫「大正九年」のビデオクリップ『祝祭日』(2004)も撮っている。うーん、コレも見たいぞ。などと、二晩続きで、映像中心で過している。


【今日の郵便物】
★アマゾンより 司田武己『手塚治虫バカ一代』(集英社インターナショナル)、勝田文『あのこにもらった音楽』第1、2巻(白泉社)、『あいびき』(集英社
★古書目録 泰成堂書店