いろいろと心配

夕べは、徹夜で仕事する旬公につき合って、「書評のメルマガ」を編集して配信するなどしつつ、4時前まで起きていた。8時に起きたら、ちょうど仕事が終ったところ。1、2の原稿はぼくが宅急便で送ることに。まとめてあった荷物を持って、8時半に出る。45分に日暮里からスカイライナーに乗るのだから、ギリギリだ。タクシーを拾えるところまで見送る。少し寝なおそうと、寝入ったトコロに成田空港から電話。この雨でも飛行機は飛ぶらしいが、空港で直すつもりの原稿のプリントアウトを忘れてきたと云う。なんとかなりそうだったが、ぼくなんか怖くてそこまでの「チキン・レース」には挑めない。


これから10日間、一人暮らし。この間を利用して、「けもの道」の本を整理し、大ざっぱなテーマ別に分けようと思い立つ。で、奥から100冊ぐらい、旬公の机の周りに運び出した。先は長いぞ。小林信彦『本は寝ころんで』(文春文庫)を再読。書き下ろしの「面白本ベスト50」と、『週刊文春』の読書日記で構成されている。紹介されている本のうち、初読のときにまったく興味のない本に、いまでは興味津々というコトがあるから、小林信彦の読書モノと映画モノは、何年かに一度読み直すとイイ。ただ、読書モノだけで、(数えたことはないが)10冊以上あると思うので、これらの本で取り上げられた書名と著者名が検索できるデータベースがどこかにあると助かる。ついでに、取り上げられた映画のタイトルと監督名も。世の中にはディープな小林ファンが多いのだから、いつか誰かがそういうblogを開いてくれないかな。


そうこうしてるウチに2時になり、急いで出かける。古書会館で「アンダーグラウンド・ブック・カフェ」初日へ。大雨のせいで、初日にしてはヒトが少ない。ざっと見て、今日できたばかりの「サンパン」第2期第9号を買う。そうしたら、「これ、引いてください」とクジを引かされる。開いてみると「末吉」で、「このクジ運の人は身のまわりを見直すが大事、本をまたぐ生活を改め、整理整頓に励めば、自然と良書が近づいてくる」云々と。まさに、自分の状況を云い当てられている。ダレがこんなバカなものをわざわざ……と思ったら、〈古書ほうろう〉がつくったものだった。よくヒマがあったな。「不忍ブックストリート」の告知もある。いよいよ動きますよ。


2階に上がり、『子不語の夢 江戸川乱歩小酒井不木往復書簡集』(http://www.libro-koseisha.co.jp/shifugo.html)刊行記念のトークを見る。本多正一(監修)、浜田雄介(編)、阿部崇(翻刻)、村上裕徳(脚注)、末永昭二(索引)の各氏。まず、皓星社の佐藤助教授が挨拶、その後、しばらくはハナシがうまくかみ合わず心配したが、途中からメチャクチャおもしろくなる。村上氏はメールをやらず電話もなく、手紙で連絡つかなければ、電報を打ったのだとか。あの脚注を「軒先借りて母屋をのっとる」と自己分析していた。乱歩のお孫さんの平井憲太郎さん、ミステリ作家の芦辺拓さんなど、フロアからの発言も興味深い。博文館のハナシになったとき、いきなり「それはですね」と後ろで声がして、誰かと思ったら、吉田勝栄さんだった。ツワモノばかりの観客だ。


会場で配布した「『子不語の夢』に捧げる」というリーフレットには、多くの人の読後感やスタッフの余滴が入っていて、コレ自体オモシロイ読み物になっている。推理小説史に詳しいわけではないぼくも、助教授に云われてコメントを書いている。以下に引用する。

かゆいトコロに手が届く

書簡を読み進むうちに、乱歩と不木の親交が葛藤に変わっていく。その過程をたどるのがとてもスリリングだった。「行き過ぎと思われるであろうほどの解釈や推定」にまで踏み込んだ脚注や、詳細な索引、気鋭の研究者による論考が、読書を盛り上げてくれた。封筒の画像まで入れ込んだCD-ROMにも驚嘆。使える資料集のお手本ともいえる本だ。
自治体の事業でありながら、乱歩・不木を追いかけてきた在野の研究者やサイト主宰者に編纂を一任している徹底した「適材適所」も、この種の出版物では例がないだろう。
まさに「かゆいトコロに手が届く」本なのだ。


いや、実際、この本を読んで、「このやり方で、他の資料集もうまく出版できるのではないか」と思った。末永さん(だったかな)が、「アカデミズムとエンターテインメントの両面を兼ね備えている」とおっしゃっていたが、いま出せないかと思っている資料集も、そういうカタチで本にできればイイと思う。


終って下に降りようとしたら、「Nさんが倒れた」と聞かされる。下の古書展でいきなり倒れたそうだ。会館の前に救急車が止まっていて、古本屋さんたちが心配そうに見守っている。なかなか病院が見つからず、待機していたのだが、そのうち出て行った。過労だろうか? とても、心配。早くよくなってくれることを祈ろう。


吉田さんと一緒に千代田線に乗り、根津で別れる。〈赤札堂〉で買い物し、〈いなほ〉でビールとおでん、おにぎり、つみれ汁で夕飯。〈NOMAD〉でコーヒー飲み、ウチまで歩いて帰る。旬公から連絡ナシ。インドとの時差は、日本よりマイナス3時間30分だそうだ。落ち着いたらメールが来るだろうが、それまではちょっと心配。いつものコトだが。今日はほかに、知り合いから、急に状況が変わったというまったく寝耳に水のメールが来たりして、心配なことが重なった。そんなこんなで、原稿書くつもりが、テレビで映画を見たりして逃避してしまう。