極私的2004年ベスト12のテーマは「貧しさ」

朝起きるとなんだか寒い。ま、これが普通の冬なんだけど。午前中は仕事場で、以来のメールや書類整理。年明けに対談、座談会、取材がある。数人が参加するものは、日取りを調整するだけでタイヘンだ。調整→連絡→調整の繰り返し。オマケにこの年末の飲み会の連絡までいつの間にかやっている。そういう役回りなんだからしょうがないね。


1時半に出て、神保町へ。〈Folio〉で海野弘さんと待ち合わせ。編集部の竹中も後から来て、対談の相談。意外な組み合わせで、面白くなりそう。海野さん、今日も絶好調で3時間喋りっぱなし。静かに話しているのに、決してハナシが途切れず、ずーっと続いていく。一編集者に対してコレだけいろんなハナシをしてくれる著者も珍しい(堀切直人さんもそうだが)。


5時前に古書会館に行って、新宿展を覗く。あまり時間がなかったので、一回りしてナニも買わずに出る。イチローくんに、1月の浅草松屋の目録をもらう。仕事場に戻ると、《銭形金太郎》の制作会社となのるヒトからメール。一瞬、冗談かと思ったが、ホントらしい。この日記を読んだということで、「つきましては、南陀楼様ご関係者で生活は苦しいけれどもめげずに活動されている方がいらしたら紹介していただけないでしょうか」だって。この日記に貧乏感が溢れていると感じられたのか、それとも、貧乏な友人に恵まれていると思われたのか(じっさいのトコロは検索エンジンで《銭形金太郎》でヒットしたサイトに片っ端から依頼メールを送りつけていると思われる)。さっそくウチに帰って旬公と、誰を推薦したら出演につながりそうかを話し合う。しかし、コレという「逸材」は思い当たらず。わざわざ出たいというヒトもいなそうだし(あっ、一人だけゼッタイ出たがるヒトを思いついたぞ。たぶんあのヒトなら……)。夕飯は昨日の豚汁の残り。一休みしてから、旬公と田端新町の〈ブックマーケット〉まで散歩する。


ところで、2000〜2003年まで、毎年年末に出る『ことし読む本いち押しガイド』(メタローグ)に、その年のベスト12を書いてきた。ジャンルはなく、ぼくが勝手にテーマを設定してよかったので、自分なりのくくりを考えて、「買うだけでシアワセ気分が漂う12冊」「繰り返し見る本・繰り返し読む本12冊」「「このヒトたちを見よ!」の本12冊」「過去を身近に引き寄せる12冊」と書いてきた。今年、依頼があったらナニをテーマにしようか、ついでにどこかに『ナンダロウアヤシゲな日々』を紛れ込ませてやろうと画策していた。ところが、今年はこの本自体が出ないらしい。メタローグとしては確実に一定部数が売れる部類の本のはずなのに、フシギだ。そういうワケで、せっかく途中まで考えたので、ココで今年のベスト12を発表します。


テーマは「貧しさのなかで夢見る12冊」。べつに《銭形金太郎》に影響されたわけじゃありません。この貧しさは、経済的なものでも、精神的なものでも、歴史的なものでもあります。多少コジツケでも、このテーマに入らない本は外しました。また、順序はほぼ刊行月順です。
河内紀『ラジオの学校』筑摩書房、1600円
橋爪紳也監修『飛田百番 遊郭の残照』創元社、2000円
大島幹雄虚業成れり 「呼び屋」神彰の生涯』岩波書店、2800円
山本善行『関西赤貧古本道』新潮新書、700円
末井昭『絶対毎日スエイ日記』アートン、2500円
遠藤哲夫汁かけめし快食學』ちくま文庫、780円
堀切直人『浅草』栞文庫、1425円
いわき市草野心平記念文学館『真尾倍弘・悦子展 たった二人の工場から』図録 1000円
安食文雄三田村鳶魚の時代 在野学の群像と図書館体験』鳥影社、1600円
伊藤理佐『ハチの子リサちゃん』双葉社、619円
きらたかし赤灯えれじい』第1、2巻、講談社、各514円
町山智浩『USAカニバケツ 超大国の三面記事的真実』太田出版、1480円


コメントは略。知人が出した本が3点(河内、山本、遠藤)入ってますが、いずれも情実とは無縁です。また『レモンクラブ』その他で書評したのは、5点です。もちろん、他にもベストに入れたい本はあるし、まだ読んでない本でいいものもあるでしょうが、とりあえずこの12冊を2004年ベストとしておきます。