ちくわと〈ほんだらけ〉とカフェの鳥取

朝8時に起きて、ホテルの前にある「駅前市場」に行く。平屋建てで、なかに14、15店の魚屋や肉屋、乾物屋などが入っている。まだ開いてない店もあるが、ほとんどは営業中。おばさんがちくわを並べている店に行き、「何時からやっているの?」と訊くと、「ウチは6時には開いている」と云う。ちくわは日持ちがしないから、明日また来ることにしようと、とうふちくわを1本、焼きとうふちくわを1本買う。100円と150円だったかな。そのあと朝飯を食える店を探すが、それらしきものは見当たらず、コンビニでおにぎりを買って、ホテルに戻って「焼き」と一緒に食べる。このちくわ、じつにいい味でたちまち一本食べてしまった。


10時にNさんが迎えに来て、図書館へ。二階の大会議室に入ると、マシンがセッティングされていた。前方の大プロジェクターに投影して見せる。チラホラとヒトが入っているが、ほとんどが女性。鳥取県では県内のすべての公立学校に司書教諭、高校公立学校に司書が正規職員として配置されており、学校図書館に関しては先進県と云える。そのため、今回も参加者の半分は学校図書館の司書だった。こちとら、図書館の専門家でもなんでもないが、「進学レーダー」で私学図書館の取材をしている経験と、図書館以外の「本」の世界については多少持ちネタがあるので、それらを中心に話す。午前中1時間半、食事を挟んで、午後2時間半(途中一回休憩)話す。熱心に聴いてくれたと思うが、質問ありませんかと云ってもホトンド反応なく、それでいて終ってから個別に質問しに来る人がいた(これは鳥取人の性格だというんだけど、ホントか?)。まァ無事終ってよかったです。


また奈良さんが迎えに来てくれて、鳥取砂丘へ。子どものとき来ているハズだが、記憶にない。夕日が水平線の向こうに落ちようとしている時間で、われわれがすり鉢状の砂浜を下りて、また向こうに登っていくうちに陽はすっかり落ちてしまった。断崖になっている砂山の上から海を見て、また戻ってくる。奈良さんはこれから仕事なので、あとで会うことにして、ホテルまで送ってもらう。今日は昨日より安いシティプラザに泊まる。チェックインして、〈定有堂書店〉を覗き、昨日の中山さんが刊行した、松原岩五郎『復刻 社会百方面』(編集工房炬火舎)と、中島さんがオモシロイと云っていた、西本正『香港への道 中川信夫からブルース・リーへ』(筑摩書房)を買う。後者の聞き手は山田宏一山根貞男。そこからブラブラと駅方面に歩く。昨日、梶川先生が「モンゴル人のコックがいる」と云っていた〈上海茶楼〉という中華料理屋に入り、青島ビールと四川風鳥の唐揚げ、チャーハンを食べる。ワリとうまい。


これから、昨日村上さんに教えてもらった、〈ほんだらけ〉という新古書店に行こうと思うのだが、駅の反対側でバスもメッタに通らないらしくどうしようかと思案していたら、奈良さんから携帯に電話。昨日ライブをした田口くんが車で送ってくれるというので、駅前で待って乗せてもらう。車の中で話しているうちに、彼が「Charider」というミニコミを創刊したメンバーだったことを知る。数年前の「本の学校」シンポジウムの、ぼくが司会した分科会で、ミニコミのつくり方について質問したと云うので、思いだした。なんだ、そうだったのか。


20分ほど行った正蓮寺というトコロに、〈ほんだらけ〉はあった。外見はまるっきりブックオフだが、中に入ると本棚がギリギリまで高くつくってあり、本がギッシリつまっている。端から見ていくと、古本屋でそこそこいい値段がついている本がつぎつぎに見つかった。たとえば、山口瞳の男性自身シリーズの単行本が一冊100円、亀和田武『寄り道の多い散歩』(光文社)400円、川瀬一馬『随筆蝸牛』(中公文庫)200円という具合。奥に新書のコーナーがあり、そこでは河原淳『くたばれファッション きみ自身のおしゃれ』(双葉新書)、「週刊本」の野々村文宏中森明夫田口賢司『卒業』(朝日出版社)、『ニセ学生のすすめ』(大陸書房ムーブックス)がいずれも100円で見つかった。この3冊は個人的には掘り出し物だ。新書コーナーの周辺は改装中で段ボール箱が積まれていて、この棚もぼくが本を抜いた直後に立ち入り禁止になってしまった。ラッキーでした。あと、旬公に頼まれていた、羅川真理茂『ニューヨーク・ニューヨーク』第3巻(白泉社)も発見。15冊ほど買い、紙袋に入れてもらう。


車に乗ってホテルまで送ってもらい、そこで田口くんと別れる。一度荷物を置いてから、また出かける。10時まで時間をつぶせる居酒屋を探そうと、街を歩く。しかし、メイン通りにある飲み屋はいかにも「創作料理屋」風で、ちょっと外れた通りは街灯すらなく真っ暗。昨日眼をつけておいた「太平通り」の〈太平食堂〉も閉まっていた。駅近くの飲み屋街を30分ぐらいウロウロしたが、仕事帰りのサラリーマン向けのスナックか割烹、あるいはチェーンの居酒屋ばかりで、一人で入れるような店はない。うーん、困った。結局、雑居ビルの中にある〈てんまり〉という店に入る。「鳥取の地酒と魚」とあるので、酒を二杯冷やで飲み、石がれいの刺身とあごちくわを食べる。うまい。


そうこうするウチに10時近くになったので、待ち合わせの〈ソース〉というカフェへ。しかし、金曜の夜なので女性で満員。定有堂で奈良さんと田口くんと待ち合わせ、倉庫街にある〈パーク〉というカフェに行く。この店も倉庫を改造したようなつくり。髭を生やしたマスターに飲み物を注文して、二階に上がる。3、4人座れる席が、ちょっと離して4つほどある。椅子もテーブルも照明もイヤミでないほどにシャレている。ぼくが注文した「プーアール・ミルクティー」もえらく美味い。数年前にできて、人気の店らしいが、たしかにとうなずける。あれこれ話すうちに、12時前になった。お開きにしてホテルに送ってもらう。ベッドで文庫本を少し読み、すぐ眠ってしまった。