私のけもの道

朝9時過ぎに起きて、旬公を追い出して(ホコリが散ると彼女の体に障るのと、居られると本を積む場所がなくなるから)、奥の部屋から売る本を選んで居間に持ってくる。奥の部屋はいま、文字通り立錐の余地もない状態なので、まず、床の本をどかして空間をつくり、手が届かなかった棚の本を引っ張り出す。これまで本を売るたびに、「これは読んでから売ろう」とのけておいた本も、今回は売ることにした。一時期、見かけるたびに買っていたデザインやパッケージ関係の展覧会図録やビジュアル本もある程度処分することに。片付けているウチに探していた本が出てきたり、ダブっている本が見つかったりするのはいつものことだ。フレデリック・スタールの『山陽行脚 附東海道行脚』(金尾文淵堂、大正6)が2冊出てきたのは信じられない。1万円近い本なのに、なぜ? 


昼飯をはさんで働き、150冊近くを積み上げる。3時、セドローくんとイチローくんのゴールデンコンビが登場。本の山を見て、これはそっち、これはこっちと仕分けていく。お互いの店で売れる本、欲しい本がよく判っているのだ。1時間ほどかけて値踏みをする。さっきの『山陽行脚』の買入額だけ先に聞いていたが、全部でいくらになるかドキドキしていたら、セドローくんが「全部でヨンパチでどうですか?」と云う。「えっ、でもスタールだけで4000円って云ってたよね。そうしたら他全部で800円……?」と不安そうに聞くと、二人に大爆笑された。「4万8000円ですよ!」。ああヨカッタ。買ってもらう側はつねに不安なのだ。


イチローくんの車に本を積み込み、彼は一度店に帰る。セドローくんと雑談してると、前田“大阪のチン”和彦より電話。「駒沢公園に行ってきたんですぅ。これから谷中に帰ります」と云うので、ウチに寄ってもらう。前田くんに「オレの部屋、10分間だけ覗いてきていいよ」と云ったら、喜んでけもの道に入っていった。セドローくんが「『彷書月刊』で南陀楼さんのけもの道を記事にすればいいのに、と云うので、「じゃあ、『私のけもの道』ってタイトルで、リレー連載でやろうか」と答える。いろんなヒトの「けもの道」を見せてもらう企画で、トップバッターは山本善行さん、アンカーは大屋幸世氏で決まりだ。


6時に3人で〈古書ほうろう〉へ。ここで書肆アクセス畠中理恵子さんと旬公と待ち合わせ。〈ブックオフ〉をちょっと覗いてから、谷中銀座へ。イチローくんも合流し、〈千尋〉へ。マグロの竜田揚げ、カワハギの肝あえなど、どんどん頼む。相変わらずウマイなあ。今日の目的は、畠中さんが来年出す「神保町路地裏マップ」の相談に乗ること。今回は16ページだというので、開くと地図が大きく出てきて、畳むと記事が読めるという構成を提案。オモシロいものができるかもしれない。後から、ほうろうの宮地夫妻も加わり、いろんなハナシをする。大阪のチンはからかい甲斐があるなあ。みんなに愛される存在である。気づいたら11時近くになっていた。ウチに帰り、仕事を少しやるが、早めに寝てしまう。