塩山さんとしょっぱいお茶を

4時前まで、黒川博行『蒼煌』(文藝春秋)を読み進める。このまま一気に読了してしまいたいところだが、明日がつらいので止めて寝る。朝起きて、まだ風邪気味。風呂を湧かしてゆっくり浸かる。今日は勝負の日だから、沐浴潔斎しておかないと。旬公のお出かけの切り火ならぬ、呆れ顔に送られて出る。古書会館の「趣味の古書展」へ。


帳場が込み合っていたので、まず会場を見る。他の古書展の初日よりも人出が多い気がする。外は寒いのに、この中は暑くて汗が出る。今日は目録で注文していて、すべて当たると手持ちが足りないため、会場の本はどうしても流し見になる。それでも、和田静子『命の残り 夫和田芳恵』(河出書房新社)500円、小沢信男「新聞記事」掲載の『新日本文学』1966年1月号、200円などが見つかった。

帳場に行き、注文結果を聞くと、〈月の輪書林〉の上笙一郎編著『聞き書 日本児童出版美術史』(太平出版)2000円は当たっていたが、〈文学堂書店〉の2点はハズレ。1点は板祐生の「富士のや草紙」のひとつで、1点は蒐集趣味のガリ版雑誌。後者は〈祐生出会いの館〉で現物を見ており、どうしても欲しかった。なので、注文書には「どうしても欲しい」と書き、沐浴潔斎までしたのだが、無情にもハズレ。注文時にいろいろ書き添えても、大体はムダである。いろいろ書かれるとかえって落としたくなる、という古本屋さんもいるらしい。結局、会場の本を見るのをセーブしたのは意味なかった。


意気消沈して神保町の交差点を渡ろうとしたら、向うから塩山芳明さんが。コーヒーでも飲もうかと〈ぶらじる〉へ。いつもの実名バンバン出しての、こきおろし大会。神保町でこの会話はちょっと危険だ。しかし、「最近の古本関係の文章には、買った本の羅列が多いけど、つまんない並べかたが多い。書名の並べかたにも物語が必要だ」という意見は、正しい。オレも気を付けよう。〈田村書店〉の均一に向かう塩山さんと別れて、仕事場へ。対談のまとめ、夕方までになんとか終える。もう一度著者に確認したうえで、また手直しが必要だ。「日本の古本屋メールマガジン」第21号が配信される。「自著を語る」というコーナーの第一回目に、「『古本様』へのご恩返し」という短文を書いている。このテキストは、近いうちにバックナンバーとして掲載される模様だ(http://www.kosho.ne.jp/melma/)。


5時過ぎに出て、早稲田へ。鶴巻町側の出口を出てすぐの〈ブックオフ〉へ。塩山さんがイイ本があると云うので、行ってみたくなった。千駄木店と同じぐらい狭い店だが、たしかにけっこうイイ本がある。定期的に通えば、いろいろ拾えそうだ。中町信の文庫と、南伸坊『笑う茶碗』(筑摩書房)を買う。そのあと、〈古書現世〉に向うが、金曜日の夕方で学生がやたら多く道が通りにくかったのと、〈メープル・ブックス〉に寄ったりしたので、少し遅刻して着いた。ココで待ち合わせした右文書院のAさんと〈シェヌー2〉に入り、単行本の打ち合わせ。具体的に考えてくださっていたので、すぐに取り掛かれそう。


セドローくんも合流して、グランド坂上にある〈焼き鳥はちまん〉へ。地下の落ち着いた内装の店。女性店員が「こちら◎◎になります」などとファストフード喋りするのと、焼酎の銘柄をいちいち聞いてくる(「ナンでもいい」って最初に云ってんだろが)のがうるさいが、焼き鳥はいい味だし、酒もうまかった。そこで早稲田古本街のことや、古本関係のこと、この人の本を出したいというハナシなどで盛り上がる。気がつくと十一時半。店に戻るというセドローくんと別れ、Aさんと高田馬場から山手線で西日暮里まで。そこでAさんと別れてウチへ。けっこう量を飲んだのだろうか、眠くてしょうがない。


【アンケート回答ご紹介】
密偵おまささんより

あまり熱心な読者ではないのですが、「[書評]のメルマガ」も拝読しております。南陀楼さまのお名前は、坪内祐三さんにハマって、知りました。その後、かねたくさん(http://kweb21.com/110/bbs.cgi?kanetaku)のところで、たびたびお名前をお見かけしておりましたし、一度、sumus堂で本を譲っていただいたおり、南陀楼さまからお送りいただいたことも……。
坪内さんはもちろんですが、南陀楼さまや岡崎武志さんのお書きになったものを読んでいると、本が買いたくなってしまうもので、一時、意識的に読まないようにしておりました(笑)。
はてなダイアリーでの日記は、読ませていただくと、自分も新刊・古本問わず、本を探しに行きたくなるので、うれしいような、マズいような、複雑な心境で、読ませていただいておりましたが、このところ、積ん読の山はいっこうに低くなることはないということに気付き、開き直って(って、そんなことを何回となく、繰り返しているのですが……)、「やっぱり、本屋と本が無いとダメなのよ」という日々に戻りつつあります。なので、大手を振って?日記を拝読させていただきますので、お忙しいでしょうが、どうぞ、日記の更新もよろしくお願いいたします。

いや、この方もじつによく歩いて、本を探しています。ぼくのせいにする必要ありませんから、自己責任でよろしく(笑)。おまささんのサイトはこちら。「市中視回り日録」から見るとイイですよ。
密偵おまさの隠れ家」
http://homepage.mac.com/mitteiomasa/index.htm


【今日の郵便物】
★『暮しの手帖』13号
なんで送ってきたのかと不審だったが、中を見ると、「私が読んだ本」という読者投稿のコーナーに、『ナンダロウアヤシゲな日々』が書影つきで取り上げられている。誰が書いてくれたのかと思えば、「堀内恭 フリー編集者」とある。なんだ、堀内さんだったのか。短いけど的確な紹介であり、堀内さん自身の本への愛情も感じられて、なかなかイイ文章でした。ありがとう。しかし、二日つづけて『銀花』と『暮しの手帖』という二大オトナ雑誌にモクローくんやナンダロウアヤシゲが載るとはねぇ。
★古書目録 静岡東部愛書会
★青猫書房より 駒敏郎『心斎橋北詰 駸々堂の百年』(駸々堂出版)4500円
口絵に駸々堂の出版物の写真が多数載っている。田中一光の装丁とは知らなかった。