保昌正夫と清原なつのの新刊に出会う

昨夜は、何度やってもこの日記が登録できず、焦る。なぜか半分だけは登録できたので、とりあえず寝る。朝は普通に起きて、出かける。ポストに〈青猫書房〉の目録があったので、千代田線のナカで目を通し、新御茶ノ水の駅で即電話注文。これまで2度ハズれている駒敏郎『心斎橋北詰 駸々堂の百年』(駸々堂出版)4500円が残っていた。電話を受けた奥さんの「ああ、ございます」の一声に心の中で手を合わせる。今回の「青猫レース」は勝利です。

今日も朝マックならぬ朝ジュンク。ここ数日で気になっていた本を端末で検索し、棚で探す。データとしては載っていても見当たらない本が数冊あった。買ったのは、『保昌正夫一巻本選集』(河出書房新社)、森まゆみ彰義隊遺聞』(新潮社)、黒川博行『蒼煌』(文藝春秋)、上村一夫(画)・岡崎英生(原作)『夢師アリス』上巻(愛育社)。故・保昌さんの選集が出ることは、EDIの松本八郎さんから聞いていた。すでにエッセイ集で読んだ文章もあるが、こうしてまとまると、また読んでみたくなる。編集は元河出書房の藤田三男氏で造本も榛地和つまり藤田氏によるもの。


コレで8000円になってしまったので、上のフロアでもう一冊買ったら、特典のトートバックをもらえるかなと思ったが、探している本は見つからず。トートバックはまたの機会に。この「1万円以上お買い上げ」が別の日に買った本との合計でもよければ、すでに2つぐらいもらえるんだけど。


新刊のコーナーで、先日も見かけた小堀鴎一郎編『鴎外の遺産1 林太郎と杏奴』(幻戯書房)を見る。鴎外が家族に遺した絵葉書や手紙、手製の教科書などをオールカラーで複製した資料集で、毎日新聞で紹介されたときから気になっていた。編注は、元みすず書房の伝説的な編集者である小尾俊人さんによるもの。函(途中から斜めに切られていて、本体がはみ出ている)も本体も手がかかっていてしかもシンプルという、この版元らしいつくりだ。ただし、値段が1巻で2万6667円……。クオリティからいって高くはない、ないけれど、でもあと全3巻だと税込みで8万4000円。これはちょっと手が出ない。で、今日もこの本の前でウロウロしたのだが、前回はナカが見られたのに、今日はビニールの袋に入れられていた。オビも函ももろそうだったから、何冊か被害にあったのかも。しかし、コレは店員に頼んででも、一見の価値はありますよ。


ひと回りして、エレベーターで地下に降りて、弁当を買う。そして仕事場へ。最後の色校をチェックして戻し、やっと14号のカタがついた。そのあとは、単行本用の対談のまとめをやる。5時過ぎに出て、神保町へ。〈ディスクユニオン〉で、緑魔子「アーリー・イヤーズ シングル・コンピレーション」、高田渡タカダワタル的]、中川五郎「また恋をしてしまったぼく」、マーガレットズローズ「ネオンホール」を買う。〈書肆アクセス〉に寄ったら、清原なつのという名前が目に飛び込んでくる。手に取ると、おお、『千利休』という長編マンガ、しかも版元は本の雑誌社。こんなの出るって知らなかったなあ。370ページの大作。オール書き下ろしなのだろうか(あとがきには別の版元での出版が中止になって、本の雑誌社から出ることになったとある)。もちろん買う。


そのあと、〈竹尾 見本帖本店〉でブックデザイナー・工藤強勝さんの展覧会「書物の形・色・素材」に関して行なわれているセミナー「エディトリアル・デザインの森」を聞く。3回連続だったが、2回は行けず、最後だけ出られた。なんでも300人応募があったらしく、狭い会場に100席ほど椅子を置いたので、通路が存在しない。おまけにこの椅子が小テーブルが固定されてるタイプで、座るのに一苦労だし、座ったら体勢を変えるのもツライ。「丸い者」いじめの会場だった。今回は書籍の装丁についてで、スライドを見せながら、どういう点に気を使い、どう発想しているかを話していく。工藤さんは、本のイメージをつかむために、担当編集者に著者や内容のことを徹底的にインタビューすると云い、「気になるとすぐに聞きたいので、編集者が家に帰って風呂から上がった頃に電話してしまう」ことがよくある、とおっしゃっていたが、ぼくも何度か体験したぞ(笑)。綿密に材料を集めていって、全部揃えたところで、発想を一段上に飛ばす、というのが工藤流のようだ。会場に来ていた右文書院のAさんと、千代田線で途中まで一緒に帰る。堀切さんに紹介されて初めて知ったのだが、Aさんは右文書院で工藤さんに『松田修著作集』をはじめ、何冊か頼んでいるのだ。ちょうどぼくが「本コ」で工藤さんと仕事しているときに、やはり外苑前の事務所に通っていたらしい。偶然だなあ。


ウチに帰ると、本の雑誌社から書籍小包が。もしや……と思ったら、清原なつのさんの新刊だった。著者からの代送とのことで嬉しいが、厚い本が見事に2冊揃ってしまった。サバの一夜干しと味噌汁で晩飯。旬公がビデオで映画を観ているヨコで眠ってしまう。鼻とノドが調子悪い。


【今日の郵便物】
★『銀花』2004年冬号
創刊35年特集で、附録に木版刷り作品が挿入され、本文にも「杉浦康平の雑誌デザイン」や書肆啓祐堂の記事が載る、充実した号。その同じ号の「書物雑記」に「フリーペーパー『モクローくん通信』」という怪記事が見開きで掲載されている。図版も原寸大というか、ちょっと拡大気味で載っています。こんなの載せて大丈夫か、『銀花』?
小沢信男さんより 『新日本文学』終刊号(652号)
ついに終刊。小沢信男「一粒の麦――追悼新日本文学会」から読み始める。途中、「あぁまた愚痴の血圧があがる。やめよう。希望を語ろう」というフレーズあり。こう書かないと、前に進めないほど、小沢さんは新日本文学会のことを大切にしている。
日本古書通信社より 茅原健『新宿・大久保文士村界隈』日本古書通信社、1600円
新宿、大久保に居住した文学者の足跡を、彼ら自身の記述からたどった本。岡落葉、国木田独歩岡本綺堂、著者の祖父・茅原華山、そして最近亡くなった徳永康元まで。索引もある。小ぶりだが、読みでがありそうな本。表紙絵は池谷伊佐夫氏。
★研究社より 若島正『乱視読者の新冒険』研究社、2400円
「本コ」にご執筆いただいた「ナボコフと『ループ』」というオンラインゲームについてのエッセイが収録されているので献本された。巻末の文献リストにびっくり、あとがきを見てこの本が『乱視読者の冒険』の改訂新版であることにもっとビックリ。新版とはいえ、前著の内容は半分以下しか残ってなくて、ホトンド別の本である。大胆なことするなあ。
★古書目録 青猫書房、荻文庫、和洋会