「俺の店」の衝撃

★24日夜から日記が全文登録できずに混乱してましたが、25日昼、別のマシンからアップできました。しかし、なぜ昨日は半分しか登録できなかったのか、不明です。

11時に仕事場に着き、青焼きのチェック。最後の一本の色校正は今日は出ず。こまごまとした雑用を済ませる。午後に、K社のKさんが来る。新書の企画なのだが、お聞きしていて新書の世界も変わったものと感じ入る。6時に出て高円寺へ。


高円寺文庫センター〉で、野中英次魁!!クロマティ高校』(講談社)の第11巻を買う。〈円盤〉には食べ物がないので、先にメシ喰っておこうと、適当な店を探す。以前から気になっていた〈B亭〉という洋食屋に入る。ナカに入った瞬間、いやな予感。客は誰もいないのに、妙な威圧感がある。カウンターのほうを見ると、なんだかいろいろ貼り紙がしてある。曰く「椅子の上に荷物を乗せないでください」、曰く「(店にある)本を読むのは料理がくるまでにしてください。持ってきた本も同じです」、曰く「ティッシュを食べた皿の中に入れないでください、清潔を!」という説教の類と、ビタミンとかゴマがいかに体にイイかを推奨する新聞記事と一言コメントが、所狭しと。ぼくは座るなりカバンを隣の椅子に置いてしまったが、誰もいないからどけるのもアホらしくそのままにしておいた。なんか云われるかというようなことはなかったが。


もっとも驚いたのは、カウンターの上に、タイ?とかニュージーランド?とかちゃんと見る気もしなかったので覚えなかったが、明らかにセンスの悪い置物……というかみやげ物というか……ガラクタが陳列してある。そして、そのヨコには「手に取らないでください。見たい人は店主に申し出てください」、そしてもういっちょ、「勝手に手に取った人がいたら店主に教えて下さい」。もはや、店主が密告を奨励する秘密警察と化している! このガラクタ取り除けば、この禁止事項まるごといらないんじゃないの、と考えると脱力する。まるで、さっき買った『クロ高』の世界そのままである。メニューはたくさんあるが、定番っぽいチーズカツを頼む。4切れあるカツの半分は普通に揚げてあり、半分はチーズがかかっている。もってきたおばさんが、「こっちにはソースをかけて、コッチにはタバスコと塩をかけろ」と講釈する。たしかにそれなりにウマイ。ご飯も味噌汁もうまい。値段も800円と良心的だ。


しかし、安心するのはまだ早かった。食べはじめたとたん、ヨコで新聞を読んでいたおばさんが店主に、ある記事を読み上げた。なんでも、最近の子どもは電動のおもちゃを与えられ、好きなだけテレビを見せられているので、ガマンができなくなっている。外で遊ばずに一人遊びをしているのもよくない。……というような、それ自体俗論としか思えない記事を読んで、二人で感じ入っている。おばさんが「最近は共働きが増えて子どもがカギっ子になって」と云えば、店主は「物価が上がったからね。政治が悪いんだ」とメチャクチャ飛躍した答えを返す。そうやって、「意義のある会話」を交わしながら、あわよくばそこに座っている若造(ぼくのこと)を啓蒙してやろうという意欲さえ窺える。まるで、呉智英の『大衆食堂の人々』の一シーンみたいだ。とにかくとっとと食べ終えて、離脱する。久々に出会った、強烈な「俺の店」(『畸人研究』の用語です)だった。


云っておくが、ぼくは店主が自己主張する店が全部悪いと云ってるんじゃない。西荻の〈登亭〉などは「オレが法律」な店だけど、気にくわないときにはちゃんと言葉に出して云う(むしろ云いすぎ)。だけど、この〈B亭〉では口で注意すれば判ることを、あらかじめ遵守事項として提示している。そういう姑息なやりかたが気に喰わないのだ。ま、とにかく、しょっぱい気分を味わいたいヒトは、ぜひ行ってみてください。激安で有名な中華料理屋〈大陸〉と同じ通りにあります。


7時15分頃、〈円盤〉へ。ミュージシャンを除けば、今日の客は4、5人だった。こういうときは楽々座れるのだが、身内ばかりでちょっと居づらい感じ。桂牧さんとちょっと話す。こないだオープンしたサイト(http://www16.ocn.ne.jp/~maki84/index.html)にいろいろ追加してるとのコト。この数日見てなかったが、いま見るとたしかにプロフィールや読み物が入っている。コラム欄が「裏庭丹話(うらにわにわ)」というのがイイ。徐福のことを書いてあるが、牧さんは諸星大二郎の「徐福伝説」は読んでらっしゃるだろうか?(集英社文庫暗黒神話』に入ってます)


まず、パグダス。まったく初めて聴くので、誰と誰がパグダスなのかわからなかったが、ボーカル&ギターの女性がゲストとやるユニットがパグダス、ということらしい。今日のゲストはレイクサイド(前にもココで聴いたことがある)の人。うーん、1、2曲を除いては、ボーカルにもギターにも乗れなかった。


次に、桂牧さん。まず、大幅にアレンジした「突然炎のごとく」からスタート。アルバム[牧]の曲のあいだに、こないだのライブで披露した新曲や、ジギタリス時代の「常夜燈」などをやった。聴いているうちに気持ちよくなって、ときどき一瞬眠ってたらしい。ハッと気づくと、まだ同じ曲が続いていて、牧さんの曲名じゃないが幽体離脱から戻ってきたような気分だ。終ってから牧さんと一杯、といきたかったが、ノドが痛いので今日は遠慮して先に出る。


中央線の中で、〈円盤〉で渡されたチラシを見る。去年の年末行きそこなった、香川県の直島(ベネッセが現代美術館をやってたり、いろいろ面白い動きのある島)にできた、〈Caf・まるや〉(http://cafe-maruya.jp/)で11月28日に、友部正人二階堂和美がライブをやるらしい。また、ブリッジ(http://bridge-inc.net/)というレーベルがはじめた「男たちよ!」というシリーズでは、白石かずこのジャズをバックにしたヴォイス・パフォーマンスや、緑魔子のシングルを集めたアルバム、伝説のジャズ歌手・安田南のアルバム(ジャケットは中平卓馬!)などのCDが出ている。すごいラインナップ、すごい企画力である。もはやレトロとしての1970年代、レトロとしての復刻は終り、もっと深いところに行っているなという気がする(客がついてきてるかは知らないけど)。〈円盤〉にも何枚かあったが、あんまりビックリしたので、今日は買わなかった。音楽雑誌をホトンド買わなくなって久しいが、こういうレーベルが出てくると、嬉しくなってまとめ買いしたくなる。


ウチに帰り、12時過ぎに「やりにげコージー」を見る。杉作J太郎は男らしいよなあ。演出とはいえ、よくココまで思いきってノノ。自分でも杉作さんに似てると思ってるので、他人事とは思えない。自分が裸にされたり、ヌードアイドルのパンツをかぶったり、ベランダに追い出されたりという気分だった。


【アンケート回答ご紹介】
◎「書評のメルマガ」でも連載、詩人の渡辺洋さんより

ほとんど毎日読んでます。ナンダロウさんの日記のすごいところは「中心になっているアノ雑誌の編集の仕事」も忙しいはずなのに、その辺はさらっと流して、自由人のように、たくましく飛び回っている、読みようによってはそればっかりと思えるように書いていることですね。フットワークの良さを見習いたいです。ちなみに、日本特価書籍や神保町タリーズは私のテリトリーですので、5回に1回くらいは声かけてくれると嬉しいです。鬼のようなデスクワーク(座るとやめられない)から身をもぎはなすきっかけになりますし。ちなみに、特価書籍に出ている、毎日新聞社の「シリーズ20世紀の記憶」はゾッキ1冊800円ちょっとで「買い」じゃないでしょうか。編集は故西井一夫さん。私はまだ「連合赤軍・"狼"たちの時代」1冊しか買ってませんが。


塩山さんといい、日本特価書籍のファンは多いですねえ。渡辺さんのblogはこちら。

「f451日記」
http://blog.livedoor.jp/f4511/


【今日の郵便物】
★胡蝶掌本86 長谷川卓也『みすてりー界と私2』
★「彷書月刊」12月号 特集「生誕百年 正岡容
ミリオン出版より 『マンガ実話ナックルズ増刊号』 「実録刑務所のすべて」大特集号
編集の方が送ってくださったのだが、まるごと一冊刑務所特集とはすごい。