雑誌づくりは難しい

朝8時半に起きて、区役所に電話し、その足で自転車に乗って出かける。とりあえず、応急処置はほどこした……が、年内にカタつけなければならない。帰りに、あの北島選手の自宅の肉屋〈きたじま〉で、噂のメンチカツサンドでも買おうと思ったら、販売は水曜日と土曜日という看板が出ていた。その日を覚えて買いにくるほどの意欲はないなあ。開成学園前の〈ポポー〉でサンドイッチを買い、ウチで食べ、仕事場へ。


最後に残った討論の追い込み。未着だった出席者からの校正も戻り、なんとか夕方には追い込める。シンポジウム出席のため土曜日までソウルにいた津野さんから電話。「討論読みました。まとめがずいぶんうまくなったなあ」。7年間、「本コ」をやっていて、初めて聞くセリフ。思わず耳を疑う。話しコトバの原稿まとめにはとくにうるさいヒトで、いままで何度となく「下手だなあ」と叱られてきただけにコレは素直に嬉しい(だけど、あとになって「そんなこと云ったかなあ」とトボけられるかもしれない)。ぼくはもともと書籍畑の人間だと思っているから、「本コ」ではつねに、雑誌づくりの難しさと面白さを同時に感じていた。来年6月の終刊が近づいたいまになって、ようやく雑誌づくりに慣れてきたようだ。今日は他にも、原稿依頼の電話を受けたり、打ち合わせしたりで、なかなか忙しかった。


マツケンならぬハマケンこと濱田研吾くんよりメール。「ところで、新装の国会図書館で、三津田健の写真集をコピーしたら、お祝い文(里見とん、戸板康二杉村春子宮口精二中村伸郎龍岡晋戌井市郎)の箇所はすべてコピー不可と言われました。版権がらみで、厳しくなったらしい。知らなかった。『sumus』の場合も、それぞれの複写許可書がいるみたいです。うーん」。復刻版の編集をやっていた1996年ぐらいまでの体験で云うと、もともと、複数執筆の論文集では一記事の半分以下という原則があったが、じっさいにはそんな原則守っていたら1ページもコピーできない本がたくさん出てしまう。結局は現場(複写係)の判断で何とかなっていたのだが、それが厳しくなったというコトだろうか。じっさいに行って確かめてみるか(また腹を立ててしまいそうな気がするが)。


7時過ぎに神保町で人と会い、帰りに千駄木ブックオフと古書ほうろうに寄る。ほうろうで皆川博子の新作と、「食べ歩き」を特集した1998年の「東京人」を買う。「本コ」が一段落した安堵感から、眠くて仕方がない。スグに蒲団を敷いて眠るが、2時間もしないうちにまた眼が醒めた。今日届いた『BOOKISH』第8号を読む。特集は「画家のポルトレ」。海野弘さんが谷中安規の、小沢信男さんが亀山巌の、林哲夫さんが鍋井克之の、樽見博さんが内田巌の、松本八郎さんが松本俊介の、それぞれ肖像を描いている。いずれも短文だが興味深い。雑誌『きりん』の編集者・浮田要三インタビューは、これから読む。


「私が愛した画家の本」というコラムでは、山本善行、藤田加奈子、中尾務、近代ナリコ森山裕之ほかの面々が登場。どれもイイ文章だが、存在感としては横尾忠則の三冊を取り上げた塩山芳明が圧勝。「親が北関東の貧乏百姓で本当に良かった!!」という絶唱には感じ入ったし、相変わらずの特価本話にも磨きがかかっている。一文も儲からない文章を好きで書くのならこれぐらい覚悟を決めて書け、という手本。ミニコミ『記録』の連載は字数が長いせいか、どうもダラダラしてるけど、こっちはゼンゼンいいじゃん、塩山さん! 『嫌われ者の記』『現代エロ漫画』に続く塩山芳明雑文集をそろそろ出してほしいなあ。なお、南陀楼の連載「埒外の本たち」第2回は、『真尾倍弘・悦子展』の図録を取り上げている。塩山文ほど鋭くはないが、それなりに思い切って書いたツモリではある。


本号はこれまででいちばん地味だけど、いちばん読み応えがある。それはたしかだ。だけど、レイアウト・デザインの無原則・無配慮ぶりは相変わらずだ。級数、版面、行間、段間、図版の置き方など、もっとやりようがあるハズだ。自分の連載開始より前から、同じことを「書評のメルマガ」などで書いたがまるで改善されていない。何も華麗なレイアウトを期待しているのではない。たんに読みにくいのだ。編集者もデザイナーも、自分が読者の立場になったとしてこのレイアウトで読みたいかどうか、ちゃんと考えてみたほうがいい。次号では、ちょっといじるだけでなく、根本的にフォーマットをつくり直すべきなのでは。ああ、こんなこと書くと、また「世間を狭くするから、やめな」と旬公に諄々とさとされるなあ……。アンケート回答紹介、今日はお休みです。


【今日の郵便物】
★大阪のチンこと前田和彦くんより 『サブ』のバックナンバーを1冊いただく。某古書店で大量発見されたもののおすそ分け。