「不忍ブックストリート」を流す

午前中、青弓社のサイトに載る短い原稿を書く。ちょっと検索していたら、「週刊読書人」サイトの「上原草の地方出版本は蜜の味。」(http://www.dokushojin.co.jp/uehara_sou.html)というコラムを見つけた。書肆アクセスの売上ベスト10を紹介して、コメントを加えている。7位に『ナンダロウアヤシゲな日々』。「本の世界の「野次馬」のひかるセンスと感性を堪能してください」とは、ちょっと恥ずかしい。ちなみに、読書人紙上では売上ベストのリストで、『ナンダロウアヤシゲナ日々』と誤植されていた。発売後5ヶ月経つのに、アクセスではまだ売上の上位に入っているということが密かな自慢だ(逆に云えば、他の店でいかに売れてないかというハナシになるけど……)。


昼飯の材料を買いに、歩いて1分の〈エヌ・マート〉へ。ここのレジのおばさんは、微妙に言葉遣いがヘンで、並んでいて順番が来ると「お待たせしました」ではなく「お待ちどおさまでした」、「ありがとうございます」ではなく「またよろしくお願いします」、ハンパな金額なのに「ちょうど397円ですね」などと云う。間違ってはいないのだけど、どうも違和感が。おかげでこの人のことはすぐ覚えてしまった。今日もこの人がレジだった。金を払ってから、買ったものを袋に詰めていると、「エヌ・マート西日暮里店統合のお知らせ」という貼り紙が。11月末に新三河島の店に「統合」されるというが、要するに閉店である。ココは小ぢんまりとした店ですぐ回れるし、ナニよりもウチから近くて重宝していた。ここが閉店すると、谷中銀座のスーパーか田端の生協に行くしかない。これはかなり大きな生活上の変化だなあ。


昼飯食って、しばらくテレビ(《噂の東京チャンネル》はよく観るのだが、今日はそのあとのナインティナインのバラエティの再放送まで観てしまった。ガッツ石松具志堅用高の天然ぶりが存分に楽しめた)を観て、自転車で出かける。まず、〈古書ほうろう〉に寄り、宮地さんたちと立ち話。小林まこと『マンガの描き方』(講談社)200円、「明治の天然色写真」を特集した『芸術生活』1974年5月号(赤瀬川原平の小説「遠くと近く」も掲載。これ、単行本に入っているのだろうか? 挿画は片山健)500円を買う。次は〈ブックオフ〉入口に止められた自転車の数がスゴイ。店内の立ち読みもすごくて、とても本を探せる雰囲気じゃない。しばらく続くだろうな。


次に団子坂の鴎外図書館へ。「BOOKMANの会」の発表用に、「食べ歩き」本の歴史を調べている。最初は手持ちの材料でやろうと思っていたのだが、次々に面白い事実や、新しい疑問が出てくる。こういうときはやはり図書館がイイ。鴎外図書館はレファレンス資料は少ないが、人名録や国語大辞典(小学館の『日本国語大辞典』は、文学作品などで使われた例を挙げてくれているので役に立つ。噂には聞いていたが、なかなかスグレモノの国語辞典だ)を調べて、話したいことが少し固まった。さらに〈往来堂書店〉に行き、食関係の本を探す。文庫を数冊と『映画秘宝』を買う。古本喫茶〈結構人 ミルクホール〉でコーヒー。持って来たパソコンで、少し原稿を書く。


最後に根津の〈オヨヨ書林〉へ。今日はオヨちゃんがいた。目録で注文していた、松川二郎『一泊旅行 土曜から日曜』(東文堂、大正8)1500円、田中小実昌真鍋博も寄稿している秋山庄太郎『女が美しく見えるとき』(ゴマブックス)1000円、新宿の飲食街の回想エッセイ(春木健吉「牛込華街読本が生きている」という一文はオモシロそう)などを収める『新宿雑談』(新宿雑談社)1500円を受け取る。オヨちゃんの話によると、お客さんで松川二郎を研究している人がいるそうな。人のことは云えないけど、モノズキだなあ。でも、ぜひ頑張ってほしい。オヨちゃんに、たまたまいらしていた〈稲垣書店〉の中山信如さんを紹介される。三河島の映画本専門店で、『古本屋おやじ』(ちくま文庫)などの著書がある。お体を壊して、しばらく店を休んでいた。「お体はいかがですか」と聞くと、「この辺りまで歩けるぐらいには直りました」とのこと。だいぶ元気そうでなにより。12月の「日本古書通信」には目録も載るそうだ。一度、お店に寄らせてもらうことに。


千駄木から根津まで、「不忍ブックストリート」の主要スポットを流した(時間があれば、本駒込図書館も寄りたかったが)ので、余は満足じゃ。この辺に住んで10年近く経つが、本に関してはいまがいちばん便利だなあ。新刊書店が減ったのだけが残念だが。夕飯は、旬公がつくった鳥手羽先の炒めと、うどん。「BOOKMANの会」発表で使うメインの本が見つからず、部屋中を探す。近いうちにかならず使うと思い、手に取りやすい場所に置いてあったハズなのに、信じられない。捜索中に本の山が、ひとつ、ふたつ、みっつと崩れる。ああ、無情……。


【アンケート回答ご紹介】
◎マツさんより

「一番おもしろかった又はつまらない日」とありますが,南陀楼さんの日々が自分の興味のある分野と重なっていますので(つまり本と映画と音楽)、正直毎日が面白いですし、本を買うときや映画を観る時など参考にしています。どれが一番というのも難しいですね。ですから逆に言うと記述が少ない日というのが、「つまらない」という事になるかもしれません。
南陀楼綾繁ファンなので『ナンダロウアヤシゲな日々』も買いましたし,まほろしチャンネルや本のメルマガや書評のメルマガはもちろん進学レーダーも見るようにしています。

進学レーダー」の連載(隔月)を見てくださっているとは。ぼくのファンを名乗ってくださる方は、だいたい、「自分の興味と重なる」ことが嬉しいようです。この傾向は、『日曜研究家』時代から変わらず。


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