買ってくるぞと勇ましく……

kawasusu2004-11-19

昨夜も3時まで眠れず、こうしていてもしょうがないと、「早稲田古本村通信」の原稿を書く。今回は新宿区中央図書館のこと。書き終わって、布団に入るが、そのあとしばらく眠れなかった。でも朝はちゃんと9時に起きた。なぜなら今日は、〈ブックオフ千駄木店がオープンする日なのだ!

10時10分前にウチを出て、不忍通りの〈ブックオフ〉へ。店の前で、店員が黄色い旗を振り回してる。コレはちょっと恥ずかしい。すでに客が3、4人並んでいた。先頭の方に声をかけられる。UBCでご挨拶したヒトらしい。お名前わからず、ごめんなさい。このヒトの話では、「いつもだと新規開店のブックオフには、業者がたくさん並ぶのに、今回はサイトに情報が載らなかったせいかヒトが少ない」とのこと。とはいえ、10時直前には10人以上が並んでいた。


10時ジャスト、ドアが開き、ヒトがなだれ込む。ぼくはまず文庫の105円コーナーへ。思ったよりも狭いし、ところどころにデカい柱があって人とすれ違うのが大変。あと、急いで準備したせいか、小説の「ら」行までが表で、裏側の棚の一段目だけが「わ」行、その下に海外小説が続くという具合に、配列がド下手。もっときちんとできなかったのか。〈古書ほうろう〉の宮地さんが来ていて、「マンガは多いですね」と云ってたけど、それ以外は大したことない、というのがぼくの印象だった。ま、コレから変わっていくのだろうが。20分ほどでひと回りし、105円の文庫だけを買う。『淀川長治自伝』上・下(中公文庫)、佐多稲子『年譜の行間』(中公文庫)、藤村正太『コンピューター殺人事件』(講談社文庫)、J・ケッチャム『隣の家の少女』(扶桑社ミステリー文庫)、『中島敦全集』第3巻(ちくま文庫)。単行本やマンガは買いたいのがなかった。買ってくるぞと勇ましく、誓って家を出たけれど、あんがい収穫は少なかった。やっぱり文化祭の古本市の方が、意外性があって好きだ。


そのあと、神保町に出て、古書会館で「愛書会」を見る。目録注文していた2点が両方当たっていた。『尾崎一雄文学書目』正・続揃い、帙入り美本が2万5千円で手に入る。正篇は山王書房関口良雄の編集発行で、関口氏のことを調べようと思っているので、コレはどうしても欲しかったのだ。もう一点は、野一色幹夫『浅草紳士録』(朋文社、昭和31)2000円。これは堀切直人『浅草』(栞文庫)の影響で。淀橋太郎に野一色が聞く、「ポン中紳士? を語る −その心理とユカイな狂態−」が面白そう。ポン中はもちろんヒロポン中毒のこと也。会場の本で見つけたのは、「山王書房店主」という文章(追悼文集に収録された文とは別だろう)のある野呂邦暢『小さな町にて』(文藝春秋)1000円、ウラコミ・シリーズ『キュー・サインの呪術師たち TV・ディレクター』(産報)がカバーなし300円。本を見ていると、旬公から携帯に電話。ぼくが先延ばしにしてたあることで、のっぴきならない事態に。申し訳ない。早急に解決することを約束。


仕事場に行って、今日入稿する分のまとめや、色校正のチェックなど。細かいことを確認したりしてるウチに時間が過ぎる。8時過ぎに家に帰り、テレビで《もののけ姫》(2回目だけど、はじめてちゃんと観た。意外とオモシロかった)を観ながら、夕飯をつくって食べる。小林信彦『袋小路の休日』(講談社文芸文庫)を読み終わる。中公文庫版は高校生のときに読んだが、そのときは、小林信彦ライフヒストリーをほとんど知らず、「そういうお話」として読んだだけだった。しかし、今回は、小林信彦についても、モデルとなった人物(たとえば、「根岸映画村」の映画監督)についても多少の知識があるので、より深く、その世界に入れたようだ。その意味で、中公文庫に収録された色川武大の解説を、今回の版で読み直し、次の指摘に感じ入った。

しかし私は実像を眼にしているから興味があったのではない。あ、いかにも小林さんが執着しそうな人物だな、と思った。そうして作者の執着を自分のものとして読んだ。こういう個人的な筋道から入る読み方も、私は邪道と思わない。たとえば、路面電車が現われる。変貌する最中の東京が現われる。私はそれぞれその実像を知っている。小林さんの作品には、まだまだこれからも私の知っている実像が現われてきそうな気がする。その可能性をはらみながら、私にとっても未知な人物が数多く登場する。そうしていつのまにか未知の彼等も身内のように思えてくる。

「知っている実像」だけでなく「未知な人物」までが身内に思えてくる、という色川武大の指摘はさすがに鋭いと思った。


彷書月刊」(http://www3.tky.3web.ne.jp/~honnoumi/)の岡崎武志日記、久々に更新。編集部が多忙な合い間に更新しているので、文句は云えないが、でも今日は更新されているかと、毎日のぞいてしまう。今回のヒットは、「いとう」で大伴昌司『少年マガジン大図解3 SF怪奇』(講談社)を800円で買ったハナシ。安いなんてもんじゃない、バカ安ですよ、これは。「本コ」の大伴昌司特集のときに入手に苦労したので、太鼓判を押せます。


【アンケート回答ご紹介】
◎K美術館館長のこまさんより

この日記を読んでいる理由は、どんな古本を買っているのかな? が主な関心事です。ですから、何日の日記が面白かったか、記憶がありません。記憶力悪いから。私自身、ウェブサイトで日録を公表しています。何人が読んでいるのか知りませんが、少しは読まれておるようです。面白くない回答ですね。

いえいえ、そんなコトないですよ。K美術館の日記はときどき拝見しています。個人による美術館ということで、一度行ってみたいと思ってます。そのサイトはこちら。
http://web.thn.jp/kbi/

◎匿名希望さんより

「ナンダロウアヤシゲな日々」では、古本!?関連のアドレスが貼り付けられますので、「彷書月刊」の『ぼくの書サイ徘徊録』から検索するより、楽なので利用させてもらってます。

だそうです。ありがとうございます。
トコロで、今月アタマから紹介してきましたアンケートのご回答紹介も、残り3人になりました。と思ったら、今日になってまた一通、ご感想メールをいただきました。「オモシロかった日」にこだわりませんので、ご感想いただければ、(掲載可のものは)ココでご紹介します。ああ、また今日も長くなってしまった……。