新札に出会う

眠れなくなって、昨日買ってきた、土屋ガロン(作)・嶺岸信明(画)『オールド・ボーイ』全8巻(双葉社)を最後まで読む。市民社会の枠から外れた二人の男の対決を描く、土屋ガロンこと狩撫麻礼の原作は、名作『ボーダー』(たなか亜希夫・画)に匹敵するものだし、嶺岸信明の画力もスゴイ。最後まで一気に読んでしまうが、後半部が駆け足すぎるという気がした。しかし、再読に耐える作品ではある。


2時間ほど眠り、神保町へ。古書展での資料探し。高見順編『銀座』(英宝社、1966)が1000円で出ていた。同じ高見順編の『浅草』は持っているが、『銀座』があるのは知らなかった。あと、戦前のスーツのパンフレットが300円であった。イラストに味わいがあっていいので買う。どこかに貼っておこう。そのあと、一件打ち合せをして、新宿三丁目へ。このあたりで昼飯となると、いつも行くのは〈雪園〉だ。1000円以内で、メインの他に、ライス・スープ・ザーサイ・デザート(アズキと寒天を牛乳にひたしたやつ)が付いてくる。今日は豚肉と野菜炒めを頼んだが、鳥の唐揚げの小皿まで付いてきた。


紀伊國屋書店〉を覗き、中村屋地下の〈マシェーズ〉で写真家のKさんとお会いする。「本コ」デザイナーの木下くんも同席。さまざまな場所での読書風景の写真を見せていただく。そのあと、木下くんが〈ジュンク堂〉新宿店を見てないというので、(半ば強制的に)案内する。ぼくはコレですでに三回目だ。堀切直人池内紀との座談会が収録されている、種村季弘『東京迷宮考』(青土社)がちゃんと面出しになっていたので、ありがたく買う。そのあと、雑誌コーナーで『論座』12月号をパラパラ見ると、坪内祐三「雑読系」で、「三たびホリキリの季節」という文章が。こういうシンクロが起きると、その書店のコトが信頼できる。ちなみに、本の本コーナーの『ナンダロウ〜』は斜め上に移動しつつも、いまだ面出し&残り3冊。売れないのに面出しされてると、こっちがハラハラしてくる。誰か買ってくれないかなー。


仕事場で、今日も原稿のゲラ出しと著者校正。チェック事項多し。この週末から、対談などのまとめに入らねば。8時過ぎに出て、西日暮里の〈大栄〉へ。旬公が先に来ていた。表の看板、新しくしたね、とオバサンに云うと、「7万円もかかったよー」と2回も云う。今日神保町で釣りに混じっていた、新しい5000円札を旬公に見せていたら、隣で飲んでいたおじさんがハナシに参加。「裏のデザインがずいぶん寂しくなっちゃったねー」と。たしかに。サンギョプサルとテンジャン(味噌)チゲ食べて、元気が出る。ウチに帰り、メールを書いたり、「書評のメルマガ」の編集をしたりする。


【アンケート回答ご紹介】
以下は、どの日も一人が挙げてくれた日記です。
◎「西のモクローくん」こと、にとべさんより。
「8月19日(http://d.hatena.ne.jp/kawasusu/20040819)の「谷中在住のチェコ人(日本近世文学専攻)のペトル・ホリーさんと彼女が、ほうろうを覗いてくれる。彼らと旬公がチェコ関係者の噂話をしているヨコで、黙々と本の並べ替えをする。明日も売れてくれるといいなあ。だんだん稲や野菜に話しかける農家の気持がわかってきたぞ。」
自分のことが書かれている日も捨てがたいのですが、やはり、このクダリがツボにハマって面白かったです。南陀楼さんの心に、《古本を売る快感》が芽生えてきているのが、よく伝わってきます。一瞬、ボクも古本販売をしようかと…」

にとべさんのサイトはこちら。ココでも現在アンケート募集中。
http://nitobesan.fc2web.com/


【今日の郵便物】
★『週刊読書人』11月12日号 3面に、南陀楼綾繁「近代日本の雑誌の多様性に踏み込むために」と題して、『創刊号のパノラマ』(岩波書店)の書評を掲載。どこまで突っ込むべきかの判断がつかず、自分としてはイマイチの出来であったが。1面には晶文社の『植草甚一スクラップ・ブック』復刊に際して、常盤新平氏の寄稿がある。ゆっくり読もう。
★古書目録 古書あきば