時間について考える

今日も雨が降っている。自宅で資料を読む。雑誌の仕事をしていると、著者に依頼する前にその人の本をざっと読むのだが、それは全部を丹念に読むというよりは、仕事につなげるにはどうしたらいいかと考えながらの目的読みだ。時間が限られているからしかたがないとはいえ、ナニかすっきりとしない感じが残る。なので、依頼を終えたあとに、もう一度アタマから読み直している。昨日から堀切直人『浅草』(栞文庫)を読み始め、夜になって読み終わった。一行一行から目が離せない本だった。


最近もっと時間がほしいと思う。この時代に、定期収入のある仕事と、好きにできる私事の両方を持っていることは幸せだが、それらひとつひとつに必要な蓄積がぼくにはあまりにも少なく、泥縄式にこなしているのが現状だ。もっとじっくり事にあたりたい。堀切さんのように、図書館にこもってひとつのテーマに取り組んでみたい。


ただ、その一方で、その場に立ち会うことでナニかが得られる機会(たとえば昨夜のライブのような)を逃すこともしたくない。本について書くことは続けたいが、映画や音楽や美術についても、あるいは、酒や街や風景についても、自分なりのコトバを獲得していきたい。そのためには、やっぱり外に出ることもやめたくない。

本を読みながら、こういうコトを考えてるところに、エンテツさんから電話が。「いま西日暮里にいるんだけどさ〜、友達が途中で帰っちゃって、でも今日は飲むつもりでいたから、それで電話してみたワケです」。ぐちゃぐちゃ考えるのはヤメて、ほいほい飛び出したいところだったが、少し二日酔いの気味もあり、今日は遠慮しておく。エンテツさんはこっちがいつも当日誘っても付き合ってくれるのに、オレって勝手だなあ。ごめん。


【今日のしおりページ】
『ぐるり』10-11月号
恒例の田川律さんによるインタビューは、和太鼓奏者・林英哲ドキュメンタリー映画を撮った伊勢真一。


伊勢:(略)僕の場合、ただそばにいて、「どお?」なんて言ってるだけだから、あんまりその、なんて言うのかな、インタビューを、このことを聞かなきゃみたいなふうに思うことが少ない。全くない訳じゃないけど。しゃべりたいことがある人は傍にいれば自分から語り始めるよ。(略)
田川:僕はそんなことないね。僕は逆にね、何でもすぐインタビューしてしまうのが癖なのね、仕事っていうか。
伊勢:それはやっぱりね、空間恐怖みたいなもんだよね。黙っていると居心地が悪いから、誰かに聞いてあげないといけない、みたいに思いこんでるんだよ。
田川:それでやってるうちに、どっかでね、自分との接点を見つけて喜ぶという悪い癖があるよね。そうかその時それしてたんか、とかね。


「自分との接点を見つけて喜ぶという悪い癖」を持つ点で、完全に田川派であるぼくには、伊勢氏の「空間恐怖みたいなもんだよね」という一言が痛い。

【今日の郵便物】
★古書目録 中野書店、水曜荘文庫、鳩書房