脱稿のち古本市

今日は長いぞ。


切羽詰っているにもかかわらず、昨日は寝ながら書き出しを考えてるうちに眠ってしまい、朝8時半スタート。この数日間ゼンゼン進まなかったのに、書き出しをクリアすると、あとはワリと順調に進む。途中、風呂に入ったりしながら、2時ジャストに書き終わる。じつは昨日、この記事の編集部から、「台割間違えてて、6ページから4ページになりました〜」というナンとも脱力する連絡が入ったので、字数が足りないなあと思いながら書いたのだが、終ってみればコレぐらいでヨカッタかも。原稿をメールして、担当者のOKが出たので、安心して仕事場へ向う。


池袋リブロを退職して金沢に引っ越したアラキからメールで、新しく金沢にできるリブロの契約社員に決まったと知らせてくる。知り合いみんなが「アラキが本屋を辞めるなんて」とショックを受けており、ぼくも書店は無理でも金沢で何か本にかかわる仕事がないかなあなどと気にしてただけに嬉しい。本を触っているのが似合う女だぜ、アラキは。


残り一本を校了して、まだ細かい記事はあるが、いちおう一段落。早めに上がらせてもらい、池袋へ向う。すっかり忘れていたが、今日は池袋西武の古本市の初日だった。考えてみれば、二週間前の浅草松屋以来、古本市に行ってない。西武イルムス館に着くと、そわそわしながら、二階に上がる。今回と同じメンバーで、去年、西武百貨店での古書市をやっていたが、あのときは広さを持て余していた。しかし、今回は適度なスペースで、ごちゃごちゃといろんな店が入っているので活気がある。閉場間際なのにまだ客が多くて驚く。


久々の古書市なので、あっちこっちに目移りしてしまう。時間もないコトだし、閉場の8時までに全部の棚を一巡りすることを目指す。日月堂さんはパリで買った紙モノなどを大量放出。以前目録で特集した戦後本特集の残りだろうか、花森安治装幀の本が3、4冊見つかる(いずれも持っている本なので買わず)。かわほり堂の出品で、明治期の広告の貼込帖が1万2千円で出ているが、出版・売薬・料理屋などテーマを定めず貼りこんであるものなので(それはそれでオモシロイのだけど)、悩んだ末見送る。買った本。「内外社月報」300円、郷土玩具雑誌『鳩笛』大正14年6月号、2500円、草野心平『火の車随筆 貧乏も愉し』(鱒書房)500円、殿山泰司『三文役者の無責任放言録』(三一新書)800円、瀧崎安之助『現実からの文学』(八雲書店)525円。『現実からの文学』は一見花森安治の書き文字っぽいが、高橋錦吉の装丁。この辺りの「書き文字装丁家」を集めてみたいという気がする。


会計終って、日月堂の佐藤さんに挨拶。9月11日(土)〜29日(水)、渋谷のロゴスギャラリーhttp://www.parco-art.com/)で、「印刷解体 二十世紀の印刷を支えてきたモノたち」という展覧会を開催する。活版活字、写植文字盤、木版活字、印刷年鑑など、印刷にかかわるモノや本を一堂に並べるもの。まだ稼動中の活版印刷所から機械まで持ち込むらしい。なんだかスゴイことになりそう。アラキがリブロに決まってヨカッタね、という話をしていたら、日月堂の常連らしいおじさんが、本を突き出して「この表紙はフジタの木版だからこんな値段じゃ安すぎるよ」とおっしゃる。「オレは◎◎で5000円で買ったんだよ」「でも、この値段でいいですよ」と佐藤さんがいうと、「そうか、じゃあ買っておこう」って、二冊目をお買い上げ。次に「この雑誌は銅版画が云々」と続くので、佐藤さんに挨拶してその場を抜ける。買うときになんかウンチクたれないとすまない客って、ホント、多い。黙って買えばあ?


地下のリブロを覗くと、もうすっかりつまんなくなったと思ってた、出版関係のコーナーで、「sumus」のヨコに『ナンダロウアヤシゲな日々』が10冊近く面出しに。入れてくださったんだ、やっぱりリブロはえらいな(とコロッと評価が変わる)。念のため、POPを送っておいた三階に行くと、ココでも平積みの上、POPを立ててくれている。仕事の本を買うときに、ちょうど担当のTさんがいらっしゃったのでご挨拶。ココでも「アラキはよかったねえ〜」というハナシを。オレはアラキの身内か。


西武の地下で夕飯のおかずを買い、西日暮里に帰る。旬公は某誌の仕事がピーク。夕飯のあと、古書ほうろうへ。まず棚の動きを見て、次にレジに行って売り上げスリップを見せてもらうのは最近の行動パターン。「古書モクロー」のスリップがしまわれている箱が開けられる瞬間のあのドキドキ感といったら、オリンピックなんか目じゃないね。しかし、昨日に続き、今日もささやかな売上。こまめに棚を入れ替えてるんだけどなあ。最後の3、4日間、まだ値付けしてない本を品出しするか、悩んでいる。フェアが終って売れ残った本がドッと戻ってくると思うと、いまからユウウツ(九月になったら、小さなスペースで「古書モクロー」を継続させてもらえそうだが)。


【今日のしおりページ】
「内外社月報」第1号(昭和5年11月)
『綜合ジャーナリズム講座』の版元のPR紙。タブロイド版・4ページ。「ソヴェート・ロシア探偵小説集1」として、アレキセイ・トルストイ『技師ガーリン』の予告が載っている。そのコピーがいい。「資本とエロと科学の妥協 世界征服同盟の樹立」ですと。資本と科学の妥協ならナンとなく判るが、これにエロがどのように関係するのか?