とうふちくわな夜

朝9時半に起き、寝不足の目をこすりながら、浜松町へ。チェックインしてから、〈ブックス談〉を覗き、羽田空港へ。西日本で大雨だというニュースを出掛けに見てきたが、こっちはこんなに暑いのにと半信半疑だった。ところが、飛行機は途中から大揺れ。エアポケットに入ってガクッとなることはよくあるが、二回も続けざまだったのには、肝を冷やした。やっと降下しはじめたらと思ったら、気流が悪いからとかでまた上がったりした。それやこれやで、ほぼ1時間遅れで鳥取空港に到着。大雨。


定有堂書店〉の奈良敏行さんが車で迎えに来てくれた。一緒に、たまたま山陰を営業していたという青弓社の岡部さんもいたが、すぐ帰らなければいけないとかで、市内で別れる。カフェ好き奈良さんの最近のお気に入りだというカフェに行き、鳥取県立図書館の斎藤館長とお会いする。1時間ほどお話し、斎藤さんがやろうとされているコトに興味を持つ。斎藤さんオススメという、〈吾妻そば〉へ。ココは出雲そばの店で、割子を久しぶりに食べる。もっとも、上にとろろや天かす、ウズラの卵がかかった、ちょっと珍しい割子。ここのはそばが細くて美味しいなあ。子どものとき、あんなにそばがキライだったのに、すっかり好きになり、出雲そばもうまいと思えるようになった。時間というのはフシギだ。


一度、定有堂に荷物を置き、県立図書館、そして〈今井書店〉吉成店へ。以前行ったときは、まだ〈富士書店〉だった。ここで今日の司会をしてくれる梶川先生にお会いする。熱血漢っぽい。そのあと、市内に唯一あるという新古書店ではない古本屋へ。もっともココも〈トスク〉というスーパーのナカにあるというから、あまり期待はしなかった。梶川さんや村上博美さん(県立図書館勤務で幻想文学の書誌をつくられている)がよく行かれるというので、まあナニかあるかな、と思ってはいたが。行ってみると、ホントにせまいスペースだし、文庫とマンガが中心に見えるけど、棚をよく見るとオッと思える本が安く見つかる。「商業界」の倉本長治の回想録『みち楽し』が400円、創元社版『映画鑑賞手帖』が500円、古山高麗雄『兵隊蟻が歩いた』が300円という具合。文庫も、広瀬正『マイナス・ゼロ』、結城昌治森の石松が殺された夜』が100円均一。文庫はいずれも持っているが、月末のイベントで売ろうと思う。この近くに〈風庵〉という骨董屋があり、ここもあまり期待しなかったが、紙モノの入った箱をかき回すと、1931年の「婦人公論」の文庫版「愛読者日記」が見つかる。ナンと100円。


定有堂まで戻り、店内を見てから、三階へ上がる。この部屋で、南陀楼綾繁の「本の海で溺れてます」という茶話会が開かれるのだ。もっとも前日の「日本海新聞」などには「講演会」と書かれてしまったが。奈良さんは相当前から、チラシ配布や看板など宣伝努力をしてくださっていたようで、頭が下がる。最初は5、6人だったが、7時過ぎから少しずつヒトが増え、最終的には15人ぐらいになったか。梶川さんの紹介のあと、どうして本の世界でいろいろ活動するようになったかを50分ほど話す。皆さん、聞き入ってくれて、ところどころで笑ってくれたので、とても話しやすかった。


終るとテーブルをセッティングしての、立食会になる。奈良さんのお友達がつくってくださるのだが、イカ、カツオの刺身、名前忘れてしまった貝を混ぜ込んだゴハン、などなど出てくる料理がいずれも素晴らしく美味しい。食べながら、いろんなヒトと話をしたり本にサインするので、なかなか忙しい。市立図書館の女性は、『ナンダロウアヤシゲな日々』を館で購入してくれたそうだが、カバーにはパウチをしてしまうので、「折り返しの下も表紙のマンガも受け入れをした私以外見ていません」と笑っておられた。「鳥取の学生がつくる鳥取の情報誌」という「Charider」というミニコミを編集している女の子(道祖尾さんと書いて「さいのお」と読むんだそうな)とも話す。ちょっとデザインにケチをつけてしまったが、何はともあれ10号続いているというのはエライと思う。同誌の男の子とは、鳥取の「トリ・レーベル」の話など。


11時ぐらいに、場所を移し、カフェに行く。話しすぎたせいか異様にノドが乾き、林檎ジュースがうまい。ここで1時ぐらいまで。前もたしか、ここで話したなあ。みんな本好きなので、いろんな本の話で盛り上がる。解散してから、歩いてスグのホテルへ。ニュースでジャカルタでの曽我さん夫妻の再会を伝えている。くたくたになって眠る。


【今日のしおりページ】「とうふちくわの穴」パンフレット
市立図書館の女性にいただいたもの。夕食会にも出ていたが、「豆腐と魚肉のすり身を練り合わせ、塩を加えた」ちくわのことで、鳥取県内でも鳥取市だけで生産されているものらしい。どうりで初めて食べる味だった。このパンフは、鳥取女子高校社会部がとうふちくわを普及させるために、製造法、生産・消費量、売っている店などを調べてまとめたもの。
アンケートで「一カ月に食べるちくわの本数」を市民に尋ねたり、「とうふちくわ君」なるキャラクターをつくったりするのが、妙にオカシイ。デザインも含めて非常にいいセンスで、翌日の特急の中で読んでいて、思わず噴き出した。香川における「さぬきうどん」みたいに、盛り上がると面白いことになるだろう。
http://www.tottori.to/chikuwa2/