阿佐ヶ谷で〈富士ランチ〉を想う

朝8時起き。田端駅前の〈コメダ珈琲〉でモーニング。高田馬場経由で神楽坂。新潮社。例の部屋で作業。3時ごろまで集中して進めて、2013年まで終わる。2011年3月以降の誌面には、いろいろ感じるところがあった。あと1回で作業は終わりだが、それ以降も調べることはありそうだ。

東西線で中野で乗り換え、阿佐ヶ谷へ。久しぶりに降りた。〈丸長〉でつけ麺。以前から商売っ気のない店だったが、酒飲んでいる常連のおじさんたちと店主夫妻が世間話している。初めての客にはなかなかハードル高いだろう。ここのつけ麺は麺が柔らかすぎるけど、タレがうまいので、阿佐ヶ谷に来ると寄りたくなる。

〈書楽〉で本を物色すると、阿久真子『裸の巨人 宇宙企画デラべっぴんを創った男 山崎紀雄』(双葉社)が目に入る。この種のアダルト業界ものはずいぶん読んだので、一度は棚に戻すが、やっぱり買ってしまう。

ラピュタ阿佐ヶ谷〉へ。特集「日活文芸映画は弾む」で、前田満州夫監督『人間に賭けるな』(1964)観る。競輪場を舞台にした人間模様。やくざの女房役の渡辺美佐子は鬼気迫るが、冒頭でちょっと寝てしまったこともあり、なんでそこまで執着するかがいまいち呑み込めず。クライマックスの場面のしらけた間が微妙に面白かった。

北口の〈千章堂書店〉から〈コンコ堂〉へ。コンコ堂で、高柳美香『ショーウィンドー物語』(勁草書房)を1000円で。研究論文をまとめたようだが、『ウヰンド画報』について一章割いてあるので買っておく。レジで、早稲田〈CAT’S CRADLE〉の「BOOK FES」のチラシをもらう。「今回で最後みたいですよ」と云われてよく見ると、9月末で閉店することになったという。BOOK FES は9月17日、18日の二日間。見に行こう。

せっかく阿佐ヶ谷まで来たんだから、最後に〈富士ランチ〉に寄っていくかと近づくが、看板が見当たらない。通り過ぎて、店がなくなっていることを確認する。ビールの店になっていた。前回阿佐ヶ谷に来たときには、ここで食べたのに。ハンバーグやチキンカツをメインとしたシンプルな洋食屋で、瓶ビールを飲みながら食べるのが好きだった。検索すると、昨年の7月にはもう閉店していたのだった(http://nipponnostalgie.hatenablog.com/entry/2016/07/07/225750)。もう一年以上阿佐ヶ谷に来ていなかったんだな。通っていなかった自分が、閉店することにゴチャゴチャ云う権利はないのだが、やはり寂しい。こういう普通の店が普通のまま営業を続けることが難しい時代なのかもしれない。それに、若い人たちからすると、こういう小さくて古い店はすでに「普通の店」ではないのかもしれない。

ちょっと茫然としたまま、新宿経由で田端に戻る。定食屋に寄らないと収まらなくなって、〈ときわ食堂〉へ。相変わらずでいいなあ。ビール小瓶とチューハイ、冷奴、いわしたたき、あこう鯛の定食。

ちょっと眠って、『裸の巨人 宇宙企画デラべっぴんを創った男 山崎紀雄』を読みはじめると、途中でやめられず最後まで。宇宙企画英知出版の創業者・山崎紀雄と、その周囲にいた人への取材をもとに書いているが、肌の質感への要求が厳しすぎて凸版印刷の技術が向上したとか、会社倒産を目前に億単位の絵画を買いまくったとか、とんでもない人だ。同時代に『写真時代』の編集長だった末井昭とは、全然ベクトルが違うが、どちらも傑物。末井さんの証言で、ビニ本の撮影で牧場に行ったとき、女の子が裸になると山崎も真っ裸になったというのに笑った。「何か開放されるんだろうね。別に山崎さんがモデルになるわけじゃないです。ただ自分が裸になりたいから、なってるだけ」。巻末の山崎、末井、中沢慎一(コアマガジン)の座談会で、山崎ひとりだけ、69歳のいまでもエロの世界に「もう一回、なんかある」と確信してるのが凄すぎる。