一箱本送り隊・石巻ブックエイド 2日目

朝7時に起きる。やや寝不足。今朝も気温は低い。旅館の朝飯を食い、荷物を持って出かける。IRORI前でミーティングしていると、雨がパラパラ降ってくるが、すぐに止む。かめ七前で設営開始。いろいろ連絡取ってるうちに、早くも10時になり、販売開始。ここは今日は8箱。両日参加の「鉄塔文庫」「cafe de poche」「復興ブックス」「スギヤマ」、仙台から参加の「ダンスの力研究室」など。「ことり文庫」は、石巻から女性三人で参加。家は幸い無事だったそうで、これまで集めてきた美術館の図録、マイナー系のマンガ家の本、映画のパンフレットなどを並べているが、そのセレクトの良さときれいな状態、それに値段の安さに驚く。「この数倍でも安いですよー」と云いつつ、『吉原治良展』図録と山田章博の画集『すうべにいる』(東京三世社)を購入。「くものす洞」の店主さんは、石巻出身で現在東京で暮らしている女性。不忍の一箱もよく見に来ているそうで、出店は初めてだが、出版系、災害系、読み物系など一箱の中でいくつかのジャンルを押さえている。水上滝太郎『銀座復興』(岩波文庫)、川島秀一津波のまちに生きて』(冨山房インターナショナル)を買う。


今日は近くの復興マルシェでイベントをやっているせいか、開始直後からお客さんが多い。IRORI前には4箱。「出張『筋トレ』」の店主さんはライターの石井ゆかりさん。新潟の一箱古本市でも感じたが、読者でもあるお客さんへのサービス精神がすごい。今日も早々と残りが少なくなっている。「ぷちがくげい」は町づくりやコミュニティについての本を出版している大阪の版元。新しめの本が多いなか、いかにも古書という、平林たい子『うつむく女』(新潮社)を買う。


次に商工会議所横へ。古本バザーの本、昨日とあまり変わってないのだが、それでも多くのお客さんが買ってくれるとのこと。羽鳥書店ブースで、朝日新聞の小野智美さんと初対面。小野さんがブックエイドについて書いてくれた記事が、今朝の朝日新聞に載っている。また、石巻かほくでもブックエイドの記事が掲載。どちらもいい記事だった。羽鳥ブースには、『女川一中生の句』に登場する中学生の家族が訪れてくれるそうで、羽鳥さんたちはとても喜んでいた。立町の相澤酒店前へ。昨日のパナックけいてい前から古本バザーの本を移し、スタンプラリーもココでやることにしたので、ご主人はご満悦だった。リーガルシューズ前も盛況。スタンプを押しに来る人がたくさんいた。


ふれあい商店街へ。2箱不参加が出たので、14箱。塩竃南陀楼賞を差し上げた「ひいらぎ」さんは、小学生の店長を筆頭に親子で参加。仙台でおなじみの「ななみやたかちん」「Filmo」、盛岡から参加の「groovin bookstand」など知った顔が多い。石巻の「鈴木屋」さんは同じく石巻の「たけたろう書房」さんから話を聞いて、昨日エントリー。楽しそうにお客さんと話していた。和服の男性が店主の「書肆落花生」は、インディーズな本が多い、大友良英の音楽イベントの記録をまとめた小冊子はほしかったが、そのイベント参加してるヒトが手にするべきだと思って買わず。昨日も参加の「古本こかげ茶屋」のテーマはじつは自転車だということを知り、佐野裕二『自転車の文化史』(中公文庫)を買う。また、塩竃にも参加の東北大の「幻想文学研究会」では、辻村深月『ゼロ、ハチ、ゼロ、ナナ。』(講談社文庫)を直木賞受賞記念に。


一通り回ってから、IRORIまで戻り、仕出しの弁当を食べる。20世紀アーカイブの坂本さんたちと、コミかめで「昔の石巻 フィルムと雑誌を見る」の準備。14時スタート。人が来るか心配したけど、お年寄り数人を含む15人以上が集まってくれる。『いしのまきらいふ』の亀井さんは、『石巻百点 ひたかみ』『ZERO』にも関わった30年近くの編集体験をもつベテランだ。お話を聴きつつ、雑誌の現物と石巻の街を撮った映像を見せる。昭和50年代(?)の川開き祭りを撮った映像には、見ているおばあさんから「あれ、うちのお父さんだ」と。その本人も「たしかにワシだ」と盛り上がる。映像が1時間近くあったので、亀井さんのお話をあまり聞けなかったのは残念。今後もコミかめでこういうイベントをやってほしいと思う。


16時前にIRORIに戻り、その後の段取りを打ち合わせ。一箱や古本バザーの撤収、テントなどの片付けと、表彰式とシンポジウムの準備を同時に進めなければならないので焦る。それでも、送り隊のスタッフと石巻2.0のみなさんの力で、なんとか30分後に表彰式を始めることができた。今日の賞は、ふれあい商店街賞が「ひいらぎ」、石巻2.0賞が「cafe de poche」、石井ゆかり賞が「Filmo」、一箱本送り隊賞が「鉄塔文庫」、そして南陀楼綾繁賞は地元石巻から素晴らしい一箱を出してくれた「ことり文庫」さんへ。賞品は新潟一箱謹製のナンダロウTシャツ。3人で参加なので太っ腹にも3枚提供。これでまた懐がさびしくなった。


いったん終わってすぐに、2日間のクロージングイベントとなる、「本のコミュニティスペースをつくる」シンポジウムの準備。一箱の店主さんや地元商店街の方も来てくれ、30人ぐらいが聴衆に。パネラーは、石巻2.0の阿部睦美さんと天野美紀さん、地元の居酒屋「ニュー魯曼停」(パンフに魯曼亭とあるのは私のミス)の阿部明さん、東松島市図書館の加藤孔敬さんの4人で、ぼくが司会。まず、震災後のそれぞれの活動について話してもらい、そこから、街と本と人の関係について話し合う。詳しいことはここでは省くが、各自の取り組みと街に対する思いが伝わるとともに、石巻で「本のコミュニティスペース」をつくることが、街と人との関係を新しくする第一歩につながるということは共有されたように思う。少し時間オーバーしたが、みなさん熱心に聴いてくれた。この場に立ち会った人たちから、具体的な動きが出て欲しいと願う。


これで石巻ブックエイドのイベントはすべて終了。どっと疲れが押し寄せる。片づけをして場所をつくり、そのまま打ち上げに突入。ビールがうまい。パナックけいていの佐藤さんも嬉しそうに、親父ギャグを飛ばしつつ若い連中と話している。企画当初から連携させてもらい、バックアップしてもらった石巻2.0の松村さんたちは、これからがSTAND UP WEEKの本番だ。あれこれ話すうちに、22時となりバスが出発する時間となる。荷物を積み込み、石巻の皆さんに手を振ってバスが出発。途中、スーパー銭湯で風呂に入る。酔いと疲れに加えて、風呂上りということもあり、そのあとぐっすり眠り、気が付くと上野だった。作業所に荷物を戻し、解散。丹治さん隊長たちとタクシーで帰る。


いろいろ準備不足もあり、関係者に迷惑をかけたが、結果は大成功だった。当日は多くの人たちが集まってくれ、石巻の街のなかが本好きの人たちで埋め尽くされたことは本当にうれしい。何よりも、石巻の人たちが、本のある場所を喜んでくれたことがよかった。一箱本送り隊としても、ぼく個人としても、今後も「石巻の街と本と人」について、できることをやっていきたいと思う。