薄氷を踏むように

朝8時起き。《つばさ》を観てから、根津のふれあい館と谷中コミュニティーセンターへ。あるイベントの会場探し。仕事場で、『進学レーダー』の図書館原稿を書く。そのあと、書評の本を読み、2時前に出かける。


西荻窪へ。〈花鳥風月〉の先の洋服屋兼ギャラリーで、中里和人さんの写真展をやっていると聞いていったのだが、新作は3、4点で、あとは有名な小屋の写真だった。ちょっと手持ち無沙汰で、数分で出てしまう。〈花鳥風月〉で「小説検定」のネタ本数冊買い、〈音羽館〉にもと思ったら定休日。南口に出て、目についたラーメン屋でつけ麺を食べる。駅のほうに歩くと、南口すぐ近くの中華料理屋が消えて、たこ焼き屋になっていた。ショック! 屋号も覚えてない店だが、ラーメンもチャーハンもそこそこウマかった。いつ行っても開いていて、そこそこウマイということが重要なのだ。〈登亭〉なきあと重宝していたのに、残念だ。


阿佐ヶ谷へ。〈千章堂書店〉で某社の資料を買う。〈ラピュタ阿佐ヶ谷〉で、中平康特集の3回券を買うも、ちょっと考えて、年会員を申請。プログラムの郵送なしのメール会員だと、2500円で招待券が2枚付くのだ。一回800円で観られるし、かなりお得な制度だ。もうコレ以上カードやスタンプカードを増やしたくはないのだが……。今日観たのは《オレの背中に陽が当る》(1963)。出だしがなかなか快調で、コレは眠らずにすむかなと思ったが、1時間後には熟睡していた。最近、まともに最後まで見たのは《グラン・トリノ》ぐらいしかない。ナニしに映画館に来てるのか。とはいえ、次の特集「昭和警察物語」は、珍しい作品が多く、居眠り覚悟で通わないと。


南口の〈書楽〉で、武藤良子さん、u-senくんと待ち合わせ、〈阿佐ヶ谷ロフトA〉へ。「『マンガ論争勃発2』発売記念!! 昼間たかし東大入学お祝いイベント 永山薫vs昼間たかし これが現実だ!と、言われても・・・」という長いタイトルのイベントに塩山芳明さんがゲストで出るので、聴きに来たのだ。すでにかなりの席が埋まっている。95パーセントが男子。トークは、永山・昼間の二人がホストで、10人ぐらいいるゲストが、回転寿司よろしく出たり引っ込んだりする構成。塩山さんはトップだったが、はじめに『葬』の奥山さんの例の葬儀アナウンスを本人を出さずにやったので、会場の温度が2度ぐらい下がる。塩山さんの話はいつも通りだったが、司会の二人が本に書いてあるコトをランダムに再確認していくだけなので呆れる。途中、ぼくの名前が呼ばれるが、こんな場所に出て行っても盛り上げる自信はナイのでu-senくんの背中に隠れる(あとでムトーにチキンよばわりされる)。次の中田雅喜(漫画家)と金田淳子社会学者)までは聴いていた(中田さんのマンガは中学生のときに読んでいた)が、唐突に昼間が脚本を書いたという映画の内容がまったく伝わらない予告編を見せられた時点で耐え切れず、同じく限界に達していたムトーと退場。行く前に『マンガ論争勃発2』(マイクロマガジン)を少し読んできたが、さまざまな立場の人がマンガ表現や流通について発言していた。その中には対立も矛盾もある。だったら、トークではその立場の違いを明確にするようなテーマ設定や進行を心がけるべきじゃなかったか。ノープランでぐだぐた話してウケると思うほど、自分の話術に自信があるなら別だけど。ま、最後まで聴かなかったのだから、エラソウなことは云えない。


南口の小路(〈ホープ軒〉の辺り)で、前から気になっていた〈鳥正〉へ。えらく空いていた。もつ煮込みがウマイ。しばらく飲むうち、u-senくんがリタイアして合流。若きマンガ史研究者がそんなコトでいいのか! と云うが、「背もたれがないので、つらかった」のが退場理由だと。どんな20代だよ。ムトーから制作中の『わめぞフリーペーパー』を見せられ、意見を云えと云われるが、「あ、それは直そうと思ってた」とか「それは今回は間に合わない」などの言い訳ばかり。じゃあ、見せなきゃイイのにさあ。仕事が終わったPippoさんも加わり、なんだか盛り上がる。こんど、ある作家のことを書くのでPippoさんに訊いていたら、u-senくんが「その作家の本、さっき〈書楽〉で買ってましたね」と。背中にゾクゾクしたものが走る。さすが、「視姦系ブロガー」(ムトー命名)だ。今後、金輪際、こいつの後ろには立つまいと誓う。集まった四人ともブログをやっていて、「ファンタジック系」「貧乏系」「視姦系」とそれぞれ特徴があるので、ナニを書かれるかわからず、怖いような楽しみなようだ。薄氷を踏む気分でアレコレ話す。


ほかの客が帰ったあとにようやく腰を上げ、12時に電車に乗る。阿佐ヶ谷に8時間もいたのか。新宿から歩いて帰るというムトー&u-senと別れ、埼京線に向かうPippoさんとはぐれて、山手線で帰る。池袋で座れ、前の席に座った男女を見たら、永山薫金田淳子(たぶん)だった。にわかに「盗聴系ブロガー」と化し、二人の会話に聞き耳を立てる。マンガ評論についていろいろ話していたようだが、よく聞こえなかった。西日暮里に帰ると、アマゾンから大きな箱が2つも届いていた。コレ全部に目を通すのかと思うと、イヤになる、。ウチに帰って、2時過ぎに眠る。